意見書第6号

意見書第6号

                                     子育て支援の拡充と児童相談所機能の強化を求める意見書

 子育ての不安要素として、経済的な負担、仕事との両立が指摘されています。誰もが安心して出産・子育てができるよう子どもの成長にあわせて必要となる各費用について、支援を拡大する必要があります。併せて、労働時間規制の強化により、女性も男性も「ワーク・ライフ・バランス」(仕事と生活の調和)の実現が可能となる就労環境の整備も喫緊の課題です。

 一方、全国の児童相談所における児童虐待に関する相談対応件数は2016年度で12万件を超え、過去最多となっています。また、子どもの貧困率が先進国の中でも高い水準に留まる中、十分な栄養を得ることができない子どもも増加しています。虐待や貧困で厳しい家庭環境下におかれ、個別の保護を必要とする子どもたちに対しても手厚い公的保護を行うべきです。

 すべての子どもたちが健全に安心して育つことができ、すべての保護者がゆとりと責任をもって子育てができる社会の実現のため、本議会は政府に対し、次の項目を含む施策の早急な実施を要望します。

1 保健所の市町村支援機能を強化し、育児の不安や地域での孤立を解消するため、子育て世代包括支援センターを中核とする、子どもの育ちや子育てを支える地域ネットワークを全国で推進すること。

2 妊婦健診費用、出産費用、幼児教育・保育費用、就学関係費用、高等教育費用や育児休業給付など子どもの成長にあわせて必要となる各費用について、一層の助成や給付拡大を行うこと。

3 妊娠・出産・子育てに関する悩みや、生活に関する悩み等について、いつでも相談ができるよう、24時間対応の全国統一番号のホットラインを開設するとともに、SNSを活用した相談体制の構築を進めること。

4 中高生の子どもたちが気軽に立ち寄れる安全な居場所と思春期の子どもを持つ親が悩みを相談できる体制づくりを促進すること。

5 長時間労働の規制を強化するとともに、育児休業や子どもの看護のための休暇等の取得、在宅勤務や育児中の短時間勤務等の推進など、仕事と子育ての両立ができる働き方を促進すること。

6 男女が共に子どもを育てる社会を実現するために、女性の社会参加に不可欠な男性の働き方改革を実現し、育児参加の抜本的拡充に取り組むこと。

7 「貧困の世代間連鎖」を断ち切るために、ひとり親家庭への支援を拡充するなど、子どもの貧困対策法に基づいた施策を行うこと。

8 保護を必要としている子どもたちへの支援体制や保護者の相談体制を充実させるため、児童相談所など関係機関の機能強化をはかり、関係する民間団体との連携と支援を強化すること。

9 実親が育てることが困難な子どもも家庭的な環境で育つことができるよう、「民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係る児童の保護等に関する法律」に基づき特別養子縁組制度を拡充し、実親の支援、特別養子縁組制度の周知などを進めていくこと。

10 児童虐待事案や特別養子縁組等の相談件数に比して十分な人員体制が整っていないことや専門性の高い職員が不足していることから、量と質の両面から児童相談所職員の抜本的拡充を行い、その上で、開所時間を弾力的に運営できるよう整備すること。



 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

 平成30年7月3日
                                                                               奈良県議会


(提出先) 衆議院議長

      参議院議長
      内閣総理大臣
      内閣官房長官
      財務大臣
      総務大臣
      文部科学大臣
      
厚生労働大臣
      
内閣府特命担当大臣(少子化対策)
      
内閣府特命担当大臣(男女共同参画)