2月10日質疑応答

2月10日質疑応答

◆質疑応答

  申込み時にご意見・ご質問を聞かせていただき、23件の意見・質問がありました。

  各先生方のご講演に出来るだけ盛り込んでいただき、お話の都合上盛り込んでいただけなかった内容に

 ついて、質疑応答の時間を活用して、先生方にご回答いただきました。

  内容は以下のとおりです。                                                    ※ 伊:伊藤先生  佐:佐藤先生

 

Q.福島原発事故による放射能の影響についてはその周辺県や東北地方の農産物に関して非常に話題が多い
ですが、魚介類についてはあまり話題になりません。放射能を放流した海の方が広範囲に影響があるのでは
ないでしょうか。                                                                                                         → スライド

伊: 海洋中の放射性物質の件では、皆さん「お魚なんかどうなのかなぁ。」とご心配だと思います。福島原発の

  方では海洋にかなりの放射性物質が放出されたことはご存じだと思います。                         

    放射性物質が今現在どうなっているのかと言いますと、海底の方に、土や海藻ゴミなどに蓄積されて沈ん

   でいると私は思っています。皆さんご存じのとおり、コウナゴから放射性物質が大量に発見されたわけです
    が、魚がプランクトンを食べ、大きな魚がその魚を食べ、そして死んでいくと下に溜まるという連鎖反応が起き
    るわけです。今のところ、福島近海の漁業は禁止されているので、放射性物質に汚染された魚は出回ってい
    ないと伺っていますが、これはちゃんと検査されています。

   魚は海水のエサを食べて大きくなりますが、だいたい5倍~100倍に濃縮されます。海水自体は薄いもの

   ですから、5~100倍されてもさほどの量にはならないのですが、セシウムは非常に新陳代謝が激しいもの
   ですので、魚がどんどん運動してきれいな水のところに行けば、セシウムも早く無くなっていくということで、
   セシウムの生物学的半減期はだいたい50日くらいだろうと言われていて、今のところ心配しなくても大丈夫
   で はないかと思っています。でも、これは引き続き国や県がきちっと放射能濃度を測定する必要があると思い
   ます。

佐: 福島原発周辺地域は立ち入れないので、禁漁となっています。福島県周辺の県が漁を行う場合、魚は

    シーズンがあるので、その漁を再開する前に必ず検査を行っています。都道府県で検査が出来ない場合
    には、農水省で水産関係の研究所がありますので、そこで分析を行っています。

   淡水の魚については、福島県でも川や湖の魚を分析して暫定規制値を超えるものについては捕らないよう

    にやっております。一部、群馬県の赤城山の上に沼がありますが、そこの魚の放射性セシウム濃度が高い
    ので、「ワカサギなど捕らないで下さい。」となっています。同じ群馬県でも、榛名湖の魚の分析を行いたいの
    ですが、今年不漁でサンプルがない状態です。ということで、関東の方でも魚の検査はきちっと行われており
    ます。

 

Q.放射性物質を含んだ食品を食べると、具体的にはどんな症状や病気になるのでしょうか。広島や長崎で、
今現在どんな病人が出ているのですか。                                                                     → スライド

伊: 広島とチェルノブイリにはどんな患者さんがいらっしゃるのかということですが、スライドは広島・長崎の原爆
で認定されている病名です。放射線を大量に浴びた場合は、癌、白血病、甲状腺機能亢進など、さらには、
放射線とは直接関係あるかは別にして、熱風で全身を火傷なさった方のケロイド、また精神的な病気になら
れた方がいらっしゃるということで、広島・長崎の方々は今なお病気で苦しんでらっしゃいます。

   チェルノブイリの場合は、子どもの甲状腺癌は増えており、白血病のリスクが非常に高くなっているのは

   事実です。他の固形癌については、今のところ確認されていません。

    今回の日本における事故において、いち早くいろんな基準を設けて被曝量を抑える方向でやっております

   ので、こういったことはたぶん起きないのではないかと願っているところです。引き続き、きちっとした食品の
   検査をして、国として県として、いろんなところで国民の安全を確保して頂きたいというのが私の願いです。

 

Q.原発事故による放射性物質を含んだ食品による内部被曝について、新聞、テレビさらにネット経由で流されるさまざまな情報が氾濫しており、保育所に保護者からの問い合わせに苦慮しています。また、風評に惑わされることなく、乳幼児の健康維持のために安全、安心な食材を提供するにはどのように注意すればよいでしょうか。                                                                                                                         → スライド

伊: 皆さん、食品の中でもお米や野菜についてご心配だと思うのですが、イネの移行について、土壌のセシウム濃度に対して、イネにどれだけ移行するかということで、非常に幅広いのですが、土壌の100分の1から5000分の1が移行すると言われています。実際我々も白米、玄米、イネの藁など測りましたが、白米と玄米の比ですと、1対2という比率になっております。ですから、玄米を食べるのではなくて、しっかり白米になったものを食べれば、玄米よりも半分であるということです。ほとんどが、他の部位に移行していて、白米には移行が少ないので、大丈夫ということです。では、どうしたら移行を低減できるかということですが、セシウムはカリウムと非常によく似た性格の化学動向を示します。逆にセシウムを植物に移行しないようにするためにカリウムをたくさん播くとセシウムの移行が減るという実験結果が判りました。セシウムは表土に非常に多いので、表土を取ったり、ひっくり返せばよいということです。当初ひまわりに期待してたんですが、あまり期待できないと思います。ということで、カリウムを播いて、表土を取るというようなことが、今から稲作や植物に対して放射能を低減する策になろうかと思います。

 

Q.洗えばいいと聞いたのですが・・・

伊: 当初はほうれん草などは根っこを取って、洗えばいいよとテレビなどで言われていましたが、今は、土は

     もちろん洗わなければいけませんが、セシウムは原子や分子レベルで肥料、栄養分として中に入っている
     ので、入ったものは洗っても取れません。 砂や土はきれいに洗ったら取れますので、まず洗うことは大切
     です。

Q.洗った水は大丈夫なんですか。

伊: それは微々たるものですので大丈夫です。

 

Q.東北で除染している水がどうかなと思って・・・

伊: 実は水自体にはセシウムはほとんど移行しないんです。土にくっついたままなんです。セシウムというの
    は、どれだけ水洗いしても土から離れないんです。ですが、植物は不思議なもので、セシウムだけを欲しい
    時にうまく吸収するんです。

 

Q.暫定規制値、新基準値レベルを毎日1年間食べても0.06ミリシーベルトの被曝量しかないとおっしゃってい
    て、じゃあ安心なんだと思っていましたが、事故後汚染されたものを食べているかもしれない中で、今までどれ
    くらい被曝をしているか分からない。それにICRPで気になる研究結果があったんですが、「1度に1000ベクレ
    ル食べてその後は特に汚染されたものを食べなければ、生理的半減期等を含めて、3ヶ月くらいで数値が下
    がっていく。ところが、毎日10ベクレル汚染されたものを食べ続けていくと、3ヶ月経ったところで、内部被曝の
    量が劇的に逆転してしまう。」というのです。それを続けていって、本当に大丈夫なのかどうか。
   チェルノブイリでまだ事故が起きて25年ですが、それの被害も認められている症状が、癌だけというのは違う
    のではないのかなと思いますし、知能の低下であったり、心筋梗塞が増えたりと認められていない疾患、疾病
    が子どもから大人まで広がっているというのも、どこを調べても大丈夫だという安心資料にはならない。かえっ
    て、国が大丈夫だと示している数値を調べていくと、裏付けがやはり低線量の被曝をした人の資料が無いと
    いうので、「たぶん大丈夫だろう=大丈夫」となっているように感じるんですが、このあたりどうなんでしょうか。

佐: 3月から7月までのデータを基に推定した被曝量があります。これは年齢別、さらに妊婦さんも推定している
    んですが、平均で0.1ミリシーベルト/年という値でした。それはモニタリング検査結果だけですので、すべて
    の食品にあてはまるかというと難しいですが、かなり安全性を見込んだ仮説を立てています。たとえば、ND
    (検出しない)と書いてあるのを、「検出下限値ですべて汚染されている」と、すべて高めに計算していますの
    で、過大に安全確認評価した結果だと説明されています。また、1度に1000ベクレルのものを食べるより、
    10ベクレルのものを3ヶ月食べ続けるという話がありましたが、ICPRの論文を拝見していないので内容が
    分からないのですが、元々人間の体の中にもカリウムや炭素といったものが基になって放射性物質を持って
    います。それに加え、普通の食品からカリウム40を摂取しています。そういうことを考えると、10ベクレルを
    3ヶ月間というのは、生物学的半減期もあることですし、・・・私の方では分からないです。

 

Q.自然にあるものと人工的なものがどう違うのか。

伊: 放射線は、自然放射線も人工放射線もみんな同じです。自然放射線や病院の放射線は良いもので、

    原子炉の放射線は悪いものということは無いです。つまり、放射線はエネルギーを出す流れですから、
    放射線はみんな一緒のものです。

 

Q.セシウムやストロンチウムというのは、自然界に無いもので、元々人間の体が知らないものです。ストロンチウムは骨に取り込まれたら一生被曝し続けると思うのに、大丈夫だという裏付けがあるのか。

伊: 今回の事故で、ストロンチウムとプルトニウムについては、広い範囲で検出されていません。広い範囲で
    汚染されているのは、セシウム137と134だけです。放射性セシウムも普通のセシウムも化学的動向は
    一緒です。

 

 

※ここで予定時刻をかなり超過していましたので、質疑応答は終了させていただきました。