奈良県立奈良病院

高済峯先生

奈良県立奈良病院
指導医
高 済峯(こう さいほう)先生

奈良県立奈良病院 外科部長、中央内視鏡部長、輸血部長
(※所属・役職は2011年3月インタビュー当時)

〒631-0846 奈良県奈良市平松1丁目30番1号
TEL:0742-46-6001
FAX:0742-46-6011
病院URL:http://www.nara-hp.jp/

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  • プロフィール
    1961年に埼玉県比企郡小川町で生まれ、大阪市で育つ。
    1987年に奈良県立医科大学を卒業後、奈良県立医科大学附属病院第一外科で研修を行う。
    1988年に済生会中和病院、1989年に奈良県立三室病院を経て、1992年に奈良県立医科大学附属病院に勤務する。
    1993年に米国ピッツバーグ医科大学で肝移植の研修を行う。
    1996年にフンボルト財団研究員としてドイツのハノーファー医科大学腹部・移植外科に勤務する。
    1998年に奈良県立医科大学消化器・総合外科助手に就任し、2006年に学内講師、助教授を経て、2007年に奈良県立医科大学消化器・総合外科准教授に就任する。
    2010年1月に奈良県立奈良病院に外科医長、中央内視鏡部長として着任する。
    2010年4月に輸血部長を兼任する。
    2010年7月に外科部長に就任し、中央内視鏡部長、輸血部長を兼任する。
    専門は肝臓・膵臓・胆道外科、内視鏡外科、脾臓・門脈外科、肝臓移植などの消化器外科。
    日本肝胆膵外科学会高度技能指導医・評議員、日本外科学会指導医・専門医、日本消化器外科学会指導医・専門医、日本消化器病学会専門医、消化器がん外科治療認定医、日本がん治療認定医機構暫定教育医・認定医、奈良県立医科大学非常勤講師など。
  • 先生の研修医時代のお話を聞かせてください。
    :国家試験合格後の5月から約1年の研修医生活でしたが、半年弱ずつ外科と麻酔科を研修しました。以前は外科医が麻酔科医を兼ねることが多かったですし、患者さんによっては手術中に簡単な薬でもアレルギーによるショックを受ける方もいますので、麻酔科の研修を受けたんです。気管内挿管や血管の確保などの知識の習得もしました。研修医生活を振り返ってみると、働き始めの物珍しさから「何でも見たい」という思いが強かったですね。指導医の影響も強く受けました。当時は手術後は指導医が病院に宿泊していたんですよ。それで私も指導医と一緒に泊まっていました。虫垂炎の手術の後にも泊まろうとしたら、さすがに「今日は泊まらなくてもいいよ」と言われました(笑)。
  • 外科を選ばれたのはどうしてですか。
    :内科も考えなかったわけではありませんでしたが、ポリクリでの経験から外科の雰囲気に惹かれました。頭で考えるよりも、身体を動かす方がいいという感じでしょうか(笑)。内科は知識が重要で、自分からコツコツ勉強する姿勢が求められます。でも私は教科書で勉強することが苦手で、勉強も一夜漬けが多かったんですよ(笑)。外科は「明日は手術だ」というような必要に迫られての勉強ですから、私に向いていると思いました。
  • 奈良県立奈良病院の初期研修プログラムの特徴について、お聞かせください。
    :当院は近所の患者さんが一般的な症状で来院されるようなプライマリケアから高度医療まで幅広い疾患を診ているウィングの広い病院です。各科に高度医療ができる医師が揃っており、大学病院に引けを取らない症例も扱っています。また、産科救急を含めた周産期医療センターは奈良県の北和地域の最後の砦ですし、北和地域で唯一の高次救命救急センターとして三次救急を扱っています。一方で一般の救急外来では、一次、二次も豊富で、「手を切った」というような患者さんも多く来院されますから、研修医が直接、手出しできる機会に恵まれています。三次救急の現場では交通事故や転落などの高エネルギー外傷や二次病院からの緊急搬送など、ドラマの「コード・ブルー」のような世界を見ることができるでしょう。退屈することのない研修ができると確信しています。
  • 救急での研修が多めですね。
    :1年次に2カ月、2年次に2カ月ですから、長い期間となっていますね。当院は三次救急を扱っており、奈良県にはなくてはならない役割を果たしていますので、研修医にしっかり学んでいただきたいと考えています。医師としての基本的な能力を身につけるには非常に役立つと思います。救急では2年目の研修医が1年目の研修医を指導する屋根瓦式の研修を行っています。2年目になりますと、医師としての素養も身に付き、かなりのことができるようになっていますね。見違えるように成長していますよ。このシステムは研修医からはとても好評をいただいています。
  • 奈良県立奈良病院での研修の方針や教育理念について、お聞かせください。
    :まず第1に、医師としての人格を高めてもらうことです。研修を通じて医師として、また人として、望ましい態度と習慣を身につけてもらいます。その上で、日常臨床で遭遇する疾患に対し、適切な診断、治療を行える幅広い基本的な臨床能力を身につけてもらうことを理念としております。
  • 指導するお立場として心がけていらっしゃることはどんなことですか。
    :たとえば外科を例にとりますと、まずは指導医がやっていることを見ないことには分かりませんので、まずはやって見せます。研修医が「これだったら自分にもできるかも」と思い始めたころに、実際にやらせてみます。でも、大概の場合は、実際にやってみるとできないんですね。そこで、もう一回やって見せますが、そのときには研修医は、前回より真剣に見ていますよ。その繰り返しで育っていくのだと思います。外科は週3日が手術日で、1日に3、4例の手術があります。初期研修医は虫垂炎やヘルニアの手術では最初は助手ですが、慣れてきたら執刀医になれるように指導しています。また、食道がん、肝切除、膵臓の手術、骨盤内臓全摘などの高度な手術は3人で行いますが、3人目として研修医が入ります。助手がきちんと仕事をしないと手術が進みませんので、非常に重要ですし、貴重なメンバーですね。大学病院ですと、術者が4人で、ポリクリの学生もいて、研修医が6人目のこともありますので、間近に見える3人目の立場とは全く違いますし、身をもって手術を体験することができるでしょう。
    また、当院では内視鏡の手術も積極的に手掛けており、胆石はもちろんですが、胃、大腸、脾臓、肝臓の切除なども腹腔鏡で行う技術を有しています。研修医は指導医から丁寧な指導を受けたうえで、腹腔鏡を操作する係もしています。
  • 研修医に対して、「これだけは言いたい」と思っていらっしゃることをお聞かせください。
    :私が2年目のときに言われたことでもあるのですが、健康に気を付けるということですね。昼食は食べられるときに必ず食べてほしいです。隙を見て食べておかないと、その後の手術が長引いたときに食べられるチャンスを失ってしまうかもしれません。そういう積み重ねで体調を崩しやすくなってしまうので、気を付けてほしいです。休憩を取って体調を整えるのも仕事のうちです。
  • これまでに印象に残っている研修医はいますか。
    :外科は技術の世界で、頭で分かっていても、手が動かなくてはいけません。患者さんが相手なんですから、学問的な裏付けをもって、実際に技術としてできることが大事です。その意味で忘れられない研修医がいます。糸結びや縫合などをトレーニングできる機械があるのですが、彼はその機械で練習を積み、初期研修医とは思えないようなテクニックを身に付けたんですね。そういう研修医ですと、こちらとしても術者にさせやすいので、すぐに虫垂炎やヘルニアの術者になりました。
  • 奈良県立奈良病院の勤務環境などについて、お聞かせください。
    :研修医ルームがあり、1人ずつデスクやノートパソコンがあります。研修医ルームでオンラインで文献の検索ができるようになっていますから、調べ物には便利ですね。院内には図書室もあり、医学雑誌が揃っていますので、勉強しやすい環境ですよ。また、宿舎として官舎も用意していますが、近隣のアパートを病院が借り上げていますので、安い自己負担で住むことが可能です。
  • 現在の臨床研修制度について、ご意見をお願いします。
    :当初は内科や救急を回る研修医が増え、外科を回る研修医が減ってしまい、外科全体が人手不足になった時期がありましたが、現在はその状況からは脱しています。私は消化器が専門なので、直腸の手術も行います。直腸の場合は泌尿器科や婦人科の知識が必要なこともあるのですが、泌尿器科や婦人科を回って得た知識は非常に役立つと思います。循環器科を回ってきた研修医は心エコーもできますから、私が循環器のことを研修医に教えてもらうこともあります。良い制度なのではないでしょうか。ただ、外科医としてのスタートは遅れてしまいますね。以前の外科医でしたら、3年目になったときには虫垂炎やヘルニアの手術が術者としてできるようになっていましたが、今は難しい人もいます。3年目以降に臨床経験を積んで、取り戻してほしいですね。ただ、私たちの時代は3年目で既に良くも悪くも外科的な考え方に染まっていました(笑)。今はバランスの取れた考え方の外科医が育ちつつある時代ではないかと思っています。
  • 奈良県での初期研修を考えている医学生にメッセージをお願いします。
    :当院は一時期、看護師の数が減って、病床数を削減したこともあるのですが、お蔭様で現在は看護師も増え、病床数も回復していますし、手術数も飛躍的に増加し、外科の手術だけでも年間約500例を数えています。患者さんが集まるようになって、病院の収益も上がっているようです。様々な患者さんを診ることができますので、存分に研修できるはずです。臨床経験を積みたい人にはお勧めですね。座って勉強することに飽き足らない人、机の上での勉強嫌いの人を特に歓迎します(笑)。「明日、ヘルニアの手術をやれ」と言われたら、どんな勉強嫌いでも勉強しますからね。とにかく、手術を間近に見て、実際に手を動かして研修したいと思っている人には最適な環境でしょう。指導医も粒揃いで、ERCPなどの治療内視鏡も豊富ですし、内視鏡検査は毎日行っています。各学会の専門医研修施設にもなっていますので、専門医取得をめざして研修ができます。
    学閥のないところも当院の良さですね。伝統的に奈良県立医大と自治医大の卒業生が多いのですが、他にも様々な大学の出身者がいて、垣根のない雰囲気です。
    また、奈良は観光地ですので、気晴らしするにもいい場所が多くあります。奈良公園で鹿を見たり、明日香や東大寺に出かけたり、奈良県以外の出身の方は特に楽しめるのではないでしょうか。若草山の山焼きは院内から見ることができます。今年も研修医が集まってみんなで楽しんでいましたよ(笑)。

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