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史跡 宮滝遺跡 みやたきいせき

記入年月日 2021/06/14

宮滝遺跡の全景
吉野宮(飛鳥時代)復元模型
吉野宮(奈良時代)復元イラスト
所在地
奈良県吉野郡吉野町宮滝地内
区分
遺跡 | 城跡
指定内容
国指定史跡

※各歴史文化資源へのご訪問の際は公開日・公開時間・料金等を別途ご確認ください。

歴史文化資源の概要
 吉野町宮滝地内に所在する国指定史跡です。宮滝は飛鳥時代の離宮・吉野宮の推定地とされ、古くから調査・研究がなされてきました。昭和の初頭には、吉野宮があったのは吉野町宮滝か小川村(現・東吉野村)かで吉野宮跡所在地論争が起こり、このことを受けて昭和5年から奈良県による発掘調査が開始されました(第1次調査担当者:末永雅雄)。以来、史跡指定地内外をあわせて、これまでに70次におよぶ調査がなされ、縄文時代から中近世までの複合遺跡であることが確認されています。
 宮滝遺跡の発掘調査は様々な成果をあげています。第1次調査の成果を受けて設定された縄文時代後期の標識土器・宮滝式、近畿地方では初めて確認された弥生時代の土器棺、天武・持統天皇が行幸した吉野宮の一部とされている飛鳥時代の苑池遺構の検出、聖武天皇が行幸した吉野離宮跡とされる奈良時代の石敷き遺構や瓦類などです。これらの成果を受けて、宮滝遺跡の一部は昭和32年7月1日に史跡指定を受けています。この時、各時代の遺物を包含する山地の遺跡として学術上の価値が高いことが特に評価されました。
 現在、宮滝には古代史を愛する多くの方々が、壬申の乱や『万葉歌』の故地を求めて宮滝を訪れています。
地域にとって大切な歴史文化資源である、その理由
 古代史の有名な争いである吉野宮の故地を求めて多くの方が宮滝を訪れており、地元の方々にとっても地域の誇れる宝となっています。また、宮滝遺跡の第1次発掘調査では、調査担当の末永氏が地域住民とともに発掘調査を行っており、そのことを覚えているなどして、遺跡の事を身近に感じる住民の方もおられます。かつては、地域の人々によって宮滝遺跡顕彰会が立ち上げられ、冊子『宮瀧』を刊行したり、石碑を建立したりするなど、精力的に活動がなされたこともありました。
 また、宮滝遺跡は地域の歴史を知るうえでも重要な遺跡です。吉野の中では最古級の遺物である縄文時代早期の土器をはじめ、縄文時代~近世にいたる各時代の遺物が出土しており、さらには飛鳥時代や奈良時代には離宮がおかれたとみられることなどから、吉野観の変遷や記紀万葉との繋がりを探ることができる遺跡といえます。
 さらには、隣接する国栖地域などで、吉野宮にゆかりの深い大海人皇子にまつわる伝承が多く残されています。今も国栖地域で漉かれる和紙は、大海人皇子から教わったと伝わっており、遺跡や遺跡と関わる史実が、地域の生業とも深く結びついています。
 このように、地域の人々にとって誇れる身近な遺跡であり、また、地域の歴史を考える上での重要性などから、宮滝遺跡は地域の大切な歴史文化資源といえます。
「記紀・万葉集」との関連とその概要
『古事記』『日本書紀』『万葉集』にでてくる、斉明天皇造営の吉野宮、聖武天皇が訪れた吉野離宮の比定地です。壬申の乱の故地、また、『万葉集』が多く詠まれた場所として知られています。
当資源と関連する歴史上の人物とその概要
【天武天皇・持統天皇】天武天皇即位に大きく影響した壬申の乱始まりの地、吉野宮跡地と考えられています。吉野宮は後に吉野の盟約の舞台や、度々行幸がなされる場所となります。【聖武天皇】吉野離宮に行幸されています。【柿本人麻呂】吉野宮や吉野宮周辺の景色をよみあげた万葉歌を残しました。【大伴旅人】吉野宮行幸に随行した人物で、太宰府異動後も吉野を思う詩を詠んでいます。
当資源と関連する文献史料
『古事記』『日本書紀』『万葉集』『懐風藻』『続日本紀』『日本紀略』『扶桑略記』『後撰和歌集』『続拾遺和歌集』『左経記』『和州巡覧記』『大和名所図会』『西国三十三所名所図会』『菅笠日記』『藤氏家伝』『江談抄』『公卿補任』『簾中抄』『宇治拾遺物語』『平家物語』『愚管抄』『水鏡』『保元物語』『袋草子』『十訓抄』『年中行事秘抄』『仁寿鏡』『一代要記』『源平盛衰記』『神皇正統記』『太平記』『古今私秘文』ほか
当資源と関連する伝承
大海人皇子(後の天武天皇)が大友皇子の追っ手から隠れたという伝承地が、金福寺、大名持神社、桜木神社、林泉寺など吉野町内各地にあります。他にも、壬申の乱の行く末を占ったとされる場所が吉野町国栖地区に、大海人皇子が過ごした日乃雄離宮があったという伝承などが吉野町吉野山地区にあります。
他地域の関連する歴史文化資源
【町外県内】飛鳥京跡、天武・持統陵、藤原宮跡、平城宮跡、聖武天皇陵など 【町外県外】大阪府柏原市智識寺跡、大阪府大阪市難波宮跡、三重県四日市市来留部官衙遺跡、三重県亀山市鈴鹿関跡、滋賀県大津市大津宮跡(錦織遺跡)、岐阜県関ケ原町不破関跡など
問い合わせ先
吉野町産業観光課
電話番号
0746-32-3081

掲載されております歴史文化資源の情報は、その歴史文化資源が地域にとって大切であると考えておられる市町村、所有者、地域の方々により作成いただいたものです。
見解・学説等の相違については、ご了承ください。