『古事記』は、古代日本の神話や歴史が書かれたとても古い書物です。西暦712年に、現在の奈良県でまとめられました。 今回から、そのストーリーをわかりやすく要約してご紹介します。 『古事記』は世界のはじまりを「天地初発」と表して、その時、天之御中主神が誕生したと書いています。天の真ん中にあって支配する神様という意味です。宇宙のはじまりはまだ誰も見たことがありませんが、一つの点から始まったと想像されていたようです。 続いて、高御産巣日神と神産巣日神という、いずれも神秘的なエネルギーを表す名前の神様が誕生しました。これらの神様は、人間の目には見えないように身を隠したということです。 この頃、地面はまだ形がなかったそうです。まるで水に浮かぶ脂のようで、それがクラゲのように漂っていたところに誕生したのが、宇摩志阿斯訶備比古遅神と天之常立神でした。春先にすくすくと伸びる葦の芽のような生命力と、天上世界が常に在るようにという祈りとが名前になった神様です。これらの神様も、人間には見えないように身を隠したそうです。 その後、国之常立神や土や杭などの神様たちが生まれて、最後にイザナキ神とイザナミ神が誕生しました。イザとは誘うという意味で、誘い合う男女の神様です。 同じ頃に書かれた『日本書紀』とも違う世界のはじまりですが、人間の営みをはるかにこえた大昔に地球が誕生し、さまざまな物が現れては消え、季節が巡り、花が咲いては実を結ぶ。私たちは何か目に見えない力によって生かされているという感覚は、古代も現代も変わらないように思います。 (本文 県立万葉文化館 井上さやか) 編集部の古事記コラム 【古事記と漢字】 古事記に出てくる神様の名前って漢字がとっても多いですね。 実は古事記は、全部漢字で書かれた書物なんです。当時は、ひらがなやカタカナがまだ無かったからで、古事記を編纂した、太安万侶も、その苦労を古事記序文で語っているんです。 古代の日本語は文字が無く、漢字という、当時の「外国語」を取り入れて、当て字のように表現したそうですよ。 ひらがなやカタカナは便利な発明だったんですね。
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