はじめての万葉集


県民だより奈良
平成26年12月号 



 ツバキは『万葉集』に九首みられますが、「椿」だけではなく「海石榴」「都婆伎」「都婆吉」とも記されています。「椿」と表記する植物は中国にもありますが、実はまったくの別物です。
 「海石榴」をツバキとよむのは不思議に思われるかもしれませんが、『万葉集』に「八峯乃海石榴(やつをのつばき)」(巻十九の四一五二)と「夜都乎乃都婆吉(やつをのつばき)」(巻二十の四四八一)とあり、どちらも八峯(やつを)のツバキを指すことから両者の比較によって「海石榴」がツバキであることがわかります。
 ツバキは日本原産の植物です。油がとれることは良く知られています。黒くツルツルとした果実が熟すと三つ四つに裂け、中から褐色の種子がでてきます。この種子から油を搾り出すことができるのです。
 かつて遣唐使はこの油をもって渡海しました。中国において海という字がつく植物は海外からもたらされたものを指すことが多いため、もしかすると「海石榴」という表記は中国でつくられたのかもしれませんね。
 歌にある「つらつら椿」は、『万葉集』本文では「列〻椿」となっています。葉と葉の間からツバキの花が連なったように咲いているのが見えるようすをいっているのでしょう。まるでツバキの連なりを楽しむような、とてもリズムの良い一首です。
(本文 万葉文化館 小倉 久美子)


 今回の歌に詠まれている巨勢は、現在の御所市古瀬の辺りだそうです。古瀬にある阿吽(あうん)寺は椿の名所で「巨勢山のつらつら椿つらつらに見つつ偲はな巨勢の春野を(巻一の五四)」という万葉歌碑があります。この歌は、秋に詠まれた、春に咲く椿に思いをはせた歌です。阿吽寺の椿の見頃は3月下旬。この歌碑を見て、春の阿吽寺を想像してみるのも、楽しいかもしれませんね。
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