薬草の栽培に関する過去の研究成果

抽苔しにくい優良品種の育成

薬用植物ヤマトトウキは、乾燥した根が多くの漢方薬に使われています。しかし、栽培中に花が咲くと根が固くなって出荷できなくなってしまいます。そこで、花が咲きにくく栽培しやすい優良品種の育成に取り組みました。



花が咲きやすい 花が咲きにくい

単味製剤原料向けトウキの省力栽培技術の開発

抽出物を利用するエキス製剤では、原料となる薬用作物の外観品質や1株あたりの重量はあまり重視されません。そこで、そのような用途に特化した省力栽培技術の開発に取り組みました。


実需者の求める高品質な薬用作物生産技術の開発

薬用植物は根の形状などの品質によって価格が変わります。そこで、水分や肥料分などの品質に影響を与える要因について検討するとともに、高品質栽培技術の開発を目指しました。

 

 

宇陀地域に適した薬草栽培技術の開発

有望な新規品目について地域に適応した栽培技術の開発を行いました。

  • ヒロハセネガ

ヒロハセネガは初期生育が遅く、雑草害が問題となることから、マルチやセル苗を用いた栽培を検討しました。

ヒロハセネガ 

マルチの種類がヒロハセネガの生育に及ぼす影響についての検討

  • カノコソウ

カノコソウは北海道や岩手県など冷涼な地域で多く栽培されています。宇陀地域において安定的に栽培するための技術開発に取り組みました。

カノコソウ 

遮光がカノコソウの生育に及ぼす影響の検討

キハダの苗木生産技術の開発

森林技術センターと協力して苗木の効率的な生産技術の開発に取り組みました。

現状では、キハダを新植する際、圃場で育成し掘り取った根引き苗やポリポットで育成した苗が利用されてます。根引き苗は、定植作業に労力を要し、活着不良が起きやすくなります。既存のポリポット苗はルーピング(過剰な根巻き)を起こしやすく、やはり活着不良が問題となっていますそこで数種類のコンテナやポットを用いて、キハダの苗木育成への適応性を検討しました

  キハダの育苗の検討 
   キハダの育苗の検討(左より、ロングポリポット、ポットレスコンテナ、Mスターコンテナ、ペーパーポット)

ヤマトトウキの雑草管理軽労化技術の開発

ヤマトトウキは初期生育が遅く、定植後、長期間の雑草管理が必要となります。生育中の畝をまたいで中耕培土による管理を行う乗用型の除草機を用いることで、栽培の省力化が可能であることを明らかにしました。

除草機 
 畝をまたいで中耕培土が可能な除草機

ヤマトトウキ短期育苗法の開発

ヤマトトウキは、春に種をまき、次の春まで1年間かけて育苗します。しかし、長期にわたる栽培管理が必要で、その労力負担が大きいことが課題となっていました。そこで、秋に種をまき、冬でも苗の生育がすすむように、苗床を透明フィルムで二重に覆って保温する「短期育苗法」を開発しました。この方法により、秋から春までの約半年に、育苗期間を短縮できました。また、冬期は害虫が少なく、夏ほど苗床が乾燥しないので、害虫防除や水やりなどの管理作業も軽減することができるようになりました。

透明フィルムで二重に覆った苗床  ヤマトトウキ 
 透明フィルムで二重に覆った苗床  ヤマトトウキ