病害虫防除に関する過去の研究成果

新たな天敵製剤を利用したイチゴの害虫防除体系の安定化

促成イチゴでは、既に天敵製剤を利用したハダニ類の防除技術が普及しています。さらに、アブラムシ類に寄生する寄生バチの天敵製剤を加えることにより、安定した害虫防除体系の構築を目指しました。

     
 寄生バチに寄生されたアブラムシ    アブラムシの寄生バチの成虫

新たな土着天敵を利用したナスの害虫防除体系の安定化

露地ナスでは、高度抵抗性害虫ミナミキイロアザミウマ対策として、土着天敵ヒメハナカメムシ類の保護利用が普及しています。しかし、8月以降はヒメハナカメムシ類が減少するのが問題となっていました。そこで、8月以降に増加する新たな土着天敵タバコカスミカメをほ場内で増やすために天敵温存植物ゴマを導入し、天敵をリレー利用することで害虫防除体系の安定化を目指しました。

     
 ナス畝上に植栽したゴマ    アザミウマの土着天敵・タバコカスミカメ

有機野菜の害虫対策

県内で最も取り組みの多い有機野菜であるアブラナ科軟弱葉菜類で、特に被害が大きいキスジノミハムシに対する物理的防除を主軸にした防除体系を開発しました。

     
 キスジノミハムシに食害されたコマツナ    防虫ネットによる通過阻害試験

遺伝子診断によるキク、トマトなどの重要病害診断技術の開発

遺伝子診断技術を活用して、栽培施設内において病原菌を検出したり、農薬に対する耐性遺伝子の有無を診断し、これに基づく防除技術の開発に取り組みました。

       
 PCR検査による病原菌の検出   殺菌剤の防除効果試験 

微生物製剤を利用した病害虫同時防除技術の開発

害虫と病原菌の両方に防除効果がある微生物製剤を活用して、効率的で人と環境に優しいイチゴの病害虫防除体系を開発しました。

        
害虫に寄生する微生物製剤   うどんこ病に対する微生物製剤の評価試験

農薬に頼らない防除体系の確立

農薬に対する抵抗性が高度に発達した害虫の対策として、天敵生物を利用した防除体系を組み立てました。

  • 促成イチゴで深刻な問題になっていたナミハダニを、チリカブリダニなどの天敵製剤で抑制する防除体系を確立しました。県内の多くの農家に普及しています。
ハダニの卵を捕食するチリカブリダニ 
ハダニの卵を捕食するチリカブリダニ 

  • 露地ナスで深刻な問題になっていたミナミキイロアザミウマを防除するため、天敵温存植物フレンチマリーゴールドを植えて土着天敵ヒメハナカメムシを増やす防除体系を確立しました。県内だけでなく、他県でも普及しています。
天敵温存植物を植えたナスほ場 
天敵温存植物を植えたナスほ場 

遺伝子診断技術を活用した病害対策

遺伝子診断技術を用いて農作物に被害を及ぼす病原菌を検出することによって、より的確な病害対策が可能になりました。

  • イチゴ炭疽病菌に感染したイチゴ苗を早期に発見できるPCR検査技術を開発しました。本技術は主にイチゴ親苗増殖圃場で活用され、健全なイチゴ苗の流通に寄与しています。
PCR検査用のイチゴ苗のサンプリング
PCR検査用のイチゴ苗のサンプリング 
  • ダリアに感染する3種類のウイルス・ウイロイドを一度に検出するPCR検査技術を開発しました。同時検出により、検査の省力・低コスト化が実現し、生産現場の要請に対して迅速に対応できるようになりました。
ダリア病害のPCR検査  PCR画像 
ダリア病害のPCR検査