歴史文化遺産や豊かな自然環境に恵まれた奈良県を、未来に引き継いでいくためには、県、市町村、企業、そして県民一人一人が連携・協働し、景観や環境に配慮する行動を心がけることが大切です。
今回は、県内で「麗しい奈良県づくり」に取り組む企業や地域のボランティア団体を紹介します。
人々が集まりたくなる「故郷」を創出地域の水辺空間を、花咲く交流の場に
春は桜やチューリップ、夏はヒマワリ、秋は金木犀と一年を通して花を楽しむことができる橿原市中町の中池。中町花の会は、池周辺の花壇や休耕田に四季折々の花を植栽し、花の管理や草刈り、清掃、防犯パトロールなどを行うことで、地域の景観や環境を守り人々の交流の場を創出しています。
毎日の活動は地域住民との交流や治安の維持につながります。

柿本 芳是
さん
花と緑を楽しめる憩いの場を目指して
「僕が子どもだった約60年前、中池周辺は見通しが悪く近づけませんでした」と語るのはメンバーの柿本芳是さん。中町花の会は、約20年前に行政の環境整備事業によって池の水質や景観が改善されたことを機に、平成22年に地元自治会の有志により結成されました。「整備された水辺をさらに美しく、憩いの場に」と、桜や金木犀、ハナミズキなどを植樹。小道を彩る花壇には季節の草花を植え、休耕田にヒマワリの種をまくなど、年間を通じて花を楽しめるよう計画しました。
ジニア、アサガオ、マリーゴールド、ポーチュラカなど多品種の花が彩る夏の花壇
真夏や真冬も花が咲くよう管理しています 花や肥料の種類は日々アップデート
日々の水やりと清掃が築いた美しく安全な花の道
活動は毎日実施。メンバーが花の水やりや、花壇横のトイレの清掃、周辺のゴミ拾いを行っています。年2回の花壇の植え替えには約40〜50人の自治会住民も参加。日々の活動は地域の治安維持につながり、町外からも住民が集い交流する散歩道となりました。
当日は自治会員を含む8名が参加しました
活動はいつも試行錯誤 花ある故郷をこれからも
長年開花しなかった藤棚の再生に取り組んだのは、自治会の枠を超えて隣町から参加する柿坂左京さん。「剪定の研究・改善を重ね、紫色の花を咲かせたときは喜びもひとしおでした。花に集う地域の皆さんの笑顔が何よりの励みです」と話します。
最後に会を代表し、「都会に出た若者に、帰りたくなる故郷の風景を、そんな思いで新たに枝垂れ桜を植えました」と笑顔で話す柿本さん。これからも、季節ごとに彩りを増す景色が、人々を温かく迎えます。
吉野山の桜を衰退の危機から救いたい!地元団体との協働で桜の保全に尽力
日本有数の桜の名所、吉野山。約3万本もの桜が開花する春は、一目千本の絶景を楽しみに多くの観光客が訪れます。大和ハウス工業(株)は、地元団体の(公財)吉野山保勝会と協働で社員参加型によるボランティア活動を実施。吉野山の桜を次世代に継承するために、現地での保全活動に取り組んでいます。
地元住民と企業が共に行う持続可能な環境保全活動にやりがいを感じています!
(公財)吉野山保勝会理事長
大和ハウス工業(株)
車田 修平
さん 安田 健一さん
創業者ゆかりの吉野を守るため社員によるボランティア活動を開始
「このままでは吉野山の桜が衰退してしまう」との吉野山保勝会からの相談をきっかけに、大和ハウス工業は桜の保全活動を始めました。気候変動や寿命により樹勢が衰えていた吉野山の桜を未来に残すため、2010年から社員やOBによる活動をスタート。山中のシロヤマザクラから種を拾い、苗木を育て、山に還す取り組みを年6回行っています。
桜を生かすだけでなく土壌改良で山の生態系を支える
「山の健康を育む土壌改良にも力を入れています」と大和ハウス工業の安田健一さん。育苗や植樹のみを実施していた当初は病気を撲滅できず、思うような成果が出ませんでしたが、専門家の助言を受けて土壌の通気性や浸透性を改善。吉野山保勝会の車田修平さんも「実際に中千本の花見塚では、協働で行ってきた土壌改良により樹勢が回復しました」と効果を実感しています。
土壌の通気孔確保や微生物活性化のため、スコップで開けた縦穴に炭や枯葉を埋める
活動を機に部署を超えた社内交流も
桜守や造園専門家の指導のもと作業
1000年守り継がれてきた景色地域と協働で未来へ繋ぐ
現在は、新たに吉野山の玄関口である七曲坂の土壌改良に着手。「これからも活動を通じて、吉野の歴史・文化・伝統を継承する一助となれたら光栄です」と話す安田さんの言葉から、1000年以上守り継がれてきた吉野山の桜を次世代へつなぐ地域との絆が感じられました。
当日は社員とその家族・OB、保勝会メンバー、
造園専門家など約50人が活動に参加
地域の実践活動をもっと知る
きれいに暮らす 奈良県スタイルジャーナル
今回紹介した2つの団体以外にも、県内には「麗(うるわ)しい奈良県づくり」に取り組む団体がたくさんあります。
多様な主体が連携・協働する“オール奈良”による実践活動へつなげていくため、県では平成29年より「きれいに暮らす奈良県スタイルジャーナル」を発行し、その取り組み事例を紹介してきました。令和6年3月発行の第27号が最終号となりましたが、下記HPでバックナンバーをご覧いただけます。
創刊号から第27号までご覧いただけます
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