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箸墓古墳 はしはかこふん

記入年月日 2021/09/22

箸墓古墳全景(南より)
箸墓の朝焼け
まほろばの秋
所在地
桜井市大字箸中
区分
遺跡 | 古墳
指定内容
陵墓、国指定史跡

※各歴史文化資源へのご訪問の際は公開日・公開時間・料金等を別途ご確認ください。

歴史文化資源の概要
桜井市北部のJR巻向駅周辺にひろがる纒向遺跡の一画に位置する全長約280mの巨大な前方後円墳です。古墳時代前期初頭の3世紀中頃~後半の築造と考えられ、径約160mを測る後円部は4段築成でその頂部に円形壇を持ち、前方部は3段ないし4段築成であると推定されています。墳丘には葺石が施され、後円部頂と前方部頂周辺には特殊器台や特殊壺、二重口縁壺形埴輪などの埴輪類が配置されていました。また墳丘の周囲には幅10m余りの周濠が巡り、そのさらに外側には最大幅100mに及ぶと推定される「外濠状遺構」が広がっていたことがわかってきました。築造時期や壮大な規模から日本列島で最初の大王墓と考えられ、「魏志倭人伝」に登場する卑弥呼の墓と考える研究者も少なくありません。なお墳丘の大部分は宮内庁により倭迹迹日百襲姫命の大市墓に治定され、周濠推定部分の一部は2017年2月に「箸墓古墳周濠」として史跡指定を受けています。
地域にとって大切な歴史文化資源である、その理由
箸墓古墳は、古墳時代前期初頭に築造された日本列島で最初の巨大前方後円墳です。その後約350年間にわたって列島の広範囲で築造される前方後円墳は、この古墳が位置する纒向の地を発信源として各地へ広まったと考えられます。したがって箸墓古墳の築造は、日本という国家の枠組みが形成される過程の大きな第一歩として、歴史上重要な意義を持っています。また邪馬台国論争とも関連する箸墓古墳の被葬者についての論争は、研究者のみならず全国の歴史ファンの注目の的となっています。このように箸墓古墳は、この地域の歴史的な重要性を広く知っていただく上で、欠くことのできない歴史文化資源であると言うことができます。
「記紀・万葉集」との関連とその概要
『日本書紀』には「箸墓」の被葬者と築造に関する記述があるほか(崇神紀)、「箸陵」近くが壬申の乱の戦場の一つとなったことが記されています(天武紀上)。前者では被葬者として記述される倭迹迹日百襲姫命の人物像や神婚譚、「昼は人が造り、夜は神が造った」「大坂山の石を運んで築造した」という「箸墓」の築造の様子などが記されています。後者では上ツ道の守りにあたった大海人皇子の軍勢が、「箸陵」近くで近江の軍と戦い勝利したことが記述されています。なお「箸墓」「箸陵」という二つの記述がありますが、上ツ道が箸墓古墳の墳丘に近接して存在することが確認されていますので、後者についても箸墓古墳を指すものと考えられます。
当資源と関連する歴史上の人物とその概要
『日本書紀』には「箸墓」の被葬者として孝霊天皇の皇女である倭迹迹日百襲姫命の名があります。数々の予言を的中させる巫女的性格を持つ人物として描かれ、大物主神との神婚譚がよく知られています。また多くの研究者により、箸墓古墳の被葬者候補として卑弥呼の名が挙げられます。卑弥呼は『三国志』の「魏志倭人伝」に「鬼道」によって人々を惑わせたと記される倭国の女王で、巫女的な性格や中国との積極的な外交姿勢がよく知られています。なお「魏志倭人伝」には卑弥呼の墓に関する記述もあり、「径百余歩」(径約150m)とされる墳丘の大きさが箸墓古墳の後円部の規模に近いことから、箸墓古墳の被葬者を卑弥呼とする説の根拠の一つとなっています。
当資源と関連する文献史料
『日本書紀』、『大和名所図会』、『文久山陵図草稿』、『御陵図』、『三国志』(「魏志倭人伝」)など
当資源と関連する伝承
『日本書紀』には「箸墓」の築造時の情景として「昼は人が造り、夜は神が造った」「大坂山の石を手渡しで運んで築造した」と伝えられており、箸墓古墳の築造が当時の人々に大きなインパクトを与えたことが窺い知れます。また「箸墓」の名の由来として、倭迹迹日百襲姫命が夫である大物主神の本体が蛇であることに驚いた際に、箸が陰部に刺さって死に至った、ということが記されています。 このほか地元には箸中長者の伝説があり、お金が貯まりすぎて困った長者が何とか貧しくなりたいと思い、食事の度に箸を捨てることを続けた結果、箸が山のように積み上がって「箸塚」ができた、と伝わっています。
他地域の関連する歴史文化資源
纒向遺跡、纒向古墳群、柳本古墳群、大和古墳群、上ツ道など
問い合わせ先
桜井市観光まちづくり課
電話番号
0744-42-9111(代表)

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