深める 狛犬って千差万別!

神社を参拝すると、鳥居の前や拝殿の前にいかめしい顔をした「狛犬」がいます。
すべての神社に置かれているわけではありませんが、多くの神社で参拝者を出迎えてくれています。
狛犬って、「犬」という字は使われていますが、ちょっと犬のようには見えない不思議な姿をしています。

「狛犬」っていったい何なのでしょう?

彼らはどこからやってきて、なぜ神社で参拝に訪れた人をにらみつけているのでしょう?
神社の附属物である彫刻品の一種として調査研究が行なわれていますが、「これが答えだ!」という系統だったまとめはまだ存在しておらず、まだまだ研究途上ですが、この「狛犬」について狛犬研究家の増田隆先生に伺いました。

狛犬は、古代オリエント文明における権力の象徴である「ライオン」にその起源があると言われています。
オリエントからエジプトに伝わって生まれたスフィンクスもそのひとつです。
多くの古代文明において王の座を象徴するものとして「ライオン」という存在がありました。「ライオン」は、
王や王の権力そのものであり、またそうした権力を守護するものとして重要な位置を占めてきたのです。 

ギリシア・ローマ文明においても、「ライオン」は神々そのものとして、
また神々の使いとして位置付けられていきました。

東へ向かった「ライオン」はペルシアを経てインドに渡ってくると、ヒンドゥー教や仏教に取り入れられることにより、宗教的な神々の守護、仏国土の守護という位置を与えられるようになってきます。

故上杉千郷氏は、こうした「ライオン」に対する考え方に「獅子座の思想」という言葉を使われました。
仏教においても、釈迦が説法する場を「獅子座」と呼んだり、釈迦が教えを説く姿が獅子が吠えるようであるとする
「獅子吼」という言葉が生まれてきます。

中国に入ると「ライオン」は「獅子」という新しい姿を与えられていきます。これまでの「ライオン」は、
神獣でありながらも現に存在する生物としての姿を強く留めていましたが、
中国における「ライオン」は、「権力の象徴」または「権力や宗教的世界を守護」する役目はそのままに、
中国で古くから生まれていた「龍」や「麒麟」といった現実には存在しない架空の生物たちと同様、
架空の聖獣「獅子」として変容させていったのです。