出会う 奈良県歴史文化資源データベース

『上杉謙信 武田信玄』絵馬 1扁 『平敦盛 熊谷直実』絵馬 1扁 「うえすぎけんしん たけだしんげん」「たいらのあつもり くまがいなおざね」

記入年月日 2023/04/25

所在地
奈良県葛城市疋田402番地
区分
その他の美術 | 写真・書など
指定内容

※各歴史文化資源へのご訪問の際は公開日・公開時間・料金等を別途ご確認ください。

歴史文化資源の概要
 拝殿内の左右に2扁1対として掛けられている絵馬で、文久元年(1861年)に制作された銘が見られます。著名な「川中島合戦」、「一の谷合戦」の場面です。近世の絵馬では定番の画題ですが、川中島で武田信玄を騎馬武者に描くのはあまり見られない図様です。また、あらかじめ2扁1対とする枠組みが前提とされ、画面構成がなされている可能性が指摘されます。一対形式での物語図・武者図絵馬は、近世後期からしばしば認められるあり方であるという観点からも、看過できない作例です。
地域にとって大切な歴史文化資源である、その理由
 江戸時代末期に製作された当該絵馬1対は、騎馬武者の対称性や左右の対称性を意識しており、日本美術史を専門に研究する北海道大学鈴木教授によると、通例は陣中で座している武田信玄が騎馬像で軍配を持つのは珍しく、他にない作例とされ一つの特徴となっています。また、縦1.5m超、横2.3m超と大型の絵馬であることも特徴の一つと言えます。
 なお、絵師は不詳ながら、画風様式には特徴的なものが認められます。人物の人体プロポーションを多少崩しつつも、たくましい動勢のある身体で、とくに顔貌を大きく描き出、見開いた大きな眼はユーモアも感じさせますが、視線が呼応して緊張感を生み、多少の粗野ないし野生味を醸しつつ、動的で劇的な戦闘場面を形成しています。太い輪郭線、濃厚で鮮明な彩色、細かな衣装文様、鎧兜の描出には、おそらく胡糊での盛り上げに金泥を重ねる等、濃密で豪華な画面の雰囲気をもっています。
 当該絵馬は、荒廃した延喜式内社調田坐一事尼古神社の再興事業の一環として、文久元年七月に神社に馬場が開設された際、当時の氏子たちにより奉納されたと考えられます。その後、鳥居や石灯籠など境内が整備されていく中で、往時を偲ぶ作品として現在は拝殿に掲げられています。
 拝殿の再建が安政四年(1857年)であることから、幕末から明治維新にかけての混乱の中、当該絵馬は当時の氏子たちによって製作され、葛城市疋田地区が村落共同体としての”シビックプライド”を醸成する一つの鍵として、当時の状況を解き明かすための歴史文化資源であると考えられます。
 なお、希望に応じて一般に公開されており、現在まで大切に保管されています。
問い合わせ先
葛城市歴史博物館
電話番号
0745-64-1414

掲載されております歴史文化資源の情報は、その歴史文化資源が地域にとって大切であると考えておられる市町村、所有者、地域の方々により作成いただいたものです。
見解・学説等の相違については、ご了承ください。