動物や植物がもともと保有している有毒成分や、
食物連鎖を通して動物の体内に取り込まれた有毒成分を「自然毒」といいます。
自然毒は、「植物性自然毒」と「動物性自然毒」に大別されます。
厚生労働省の食中毒統計によると、年間約1万人~2万人の食中毒患者のうち、
死亡例の原因物質は、「自然毒」によるものが高い割合を占めています。
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年
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食中毒患者総数 |
食中毒死者総数 |
死亡原因物質(細菌) |
死亡原因物質(自然毒) |
その他 |
令和6年 |
14,229人 |
3人 |
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イヌサフラン(2)
ドクツルタケ、コテングダケモドキ(1)
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令和5年 |
11,803人 |
4人 |
サルモネラ属菌(1)
病原大腸菌(1)
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ドクツルタケ(1) |
ウイルス(1) |
令和4年 |
6,856人 |
5人 |
腸管出血性大腸菌(1) |
イヌサフラン(2)
フグ(1)
グロリオサ(1)
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令和3年 |
11,080人 |
2人 |
サルモネラ属菌(1) |
イヌサフラン(1) |
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令和2年 |
14,613人 |
3人 |
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きのこ(1)
フグ(1)
グロリオサ(1)
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「自然」には未解明な部分がたくさんあります。
素人判断による摂食は非常に危険です。
「植物性自然毒」について
1.毒きのこによるもの、2.有害植物によるもの に大別されます。
1.毒きのこ
(1)植物性自然毒の食中毒事例の中で最も多い原因物質。
(2)きのこの発生量・種類には降雨量、気温等の気象条件が関与、食中毒の発生件数に密接に影響。
(3)きのこによる食中毒は、秋を中心に家庭で起こることが多い。
(4)きのこに関する知識不足を原因とすることが多い。
(5)主な毒きのこ・・・ツキヨタケ、クサウラベニタケ(イッポンシメジ)、カキシメジ、ドクササコ、ニセクロハツ等
(6)中毒症状・・・摂食後、短時間に消化器症状(嘔吐等)。1日~2日後に状態悪化することもある(麻痺等)。最悪の場合、死に至る。
※次のような、きのこに関する迷信、俗説、言い伝えは、いずれも科学的根拠がなく、死亡例もあります。
茎が縦に裂けるきのこは食べられる
地味な色をしたきのこは食べられる
虫に喰われているきのこは食べられる
ナスと一緒に食べれば毒が消える
塩漬けにすると毒が消える
乾燥すれば毒が消える
煮汁に銀のスプーンを入れて黒変しなければ食べられる



毒キノコによる食中毒に注意しましょう(厚生労働省HP)
2.有毒植物
(1)身近にある有毒植物は約200種類、これらの誤食(食用植物と間違う)により食中毒が発生。
(2)近年のアウトドアブームにより、ハイキングや山菜摘みシーズンである春を中心に起こることが多い。
(3)食用植物と有毒植物はよく似ていることが多い(特に、芽の出始め等は見分けることが困難)。
(4)主な有毒植物・・・トリカブト、チョウセンアサガオ、ハシリドコロ、ヤマゴボウ、スイセン、ドクゼリ、バイケイソウ等
(5)中毒症状・・・嘔吐、下痢、腹痛、しびれ、めまい、幻覚等。最悪の場合、死に至る。





有毒植物です・・
《注意!!有毒植物を誤食したことによる食中毒事例が発生しています!》
食用と確実に判断できない植物については,絶対に「採らない」,「食べない」,
「売らない」,「人にあげない」ようにしましょう!
「動物性自然毒」について
1.フグによるもの、2.貝によるもの、3.その他の魚介類によるもの に大別されます。
1.フグ
(1)有毒成分
テトロドトキシン(青酸カリの1000倍の毒性と言われている)という非常に強力な神経毒。わずか数g食べただけで
死に至ることがある。
(2)毒性
フグの種類、個体、臓器、季節、地域により異なる。厚生労働省にて食べることのできるフグの種類、その部位、漁獲
海域を定めている。(フグの衛生確保について(昭和58 年12 月2 日厚生労働省環境衛生局長通知))
(3)フグによる食中毒は、素人調理による家庭での事例が最も多い。
(4)中毒症状・・・毒の量にもよるが、食べてから20分から3時間ほどの短時間で発症する。
口唇麻痺、舌端のしびれ、指先・手足のしびれ等。重症では、歩行困難、知覚麻痺、
言語障害、呼吸困難、血圧低下、意識混濁等。最悪の場合、死に至る。
【県内・全国食中毒発生状況】
平成27年度に1件発生して以来、県内での発生はありません。
全国の発生状況は上記表のとおりです。令和に入ってから毎年約10~20件の食中毒発生があります。
【消費者の方へ】
毎年、フグの素人調理や肝臓等の有毒部位の喫食により、毎年フグによる食中毒が発生しています。釣ったフグは、有毒部
位を完全に除去する必要があることから、ふぐを取り扱う専門的な知識及び技術を有する者(ふぐ処理師)へ依頼するか、
自ら調理せず食べないでください。
ふぐの毒は、塩もみ、水にさらし、加熱(煮たり、焼いたり)などの調理では無(弱)毒化されません。
【営業者の方へ】
○ふぐを処理する場合は、ふぐ処理師の免許が必要です。県内で処理する場合は奈良県ふぐ処理師の免許申請が必要です。
(免許証申請などの手続きについて(ふぐ処理師))
「処理」:ふぐの販売及びふぐ処理師に関する条例(奈良県条例第二十八号、以下条例)において、食用に供する目的
で、ふぐの卵巣、肝臓、胃腸その他の部分であつて、それらに含有される有毒物質により人の健康を損なう
おそれがあるものとして知事が規則で定めるものを完全に除去することをいう。
○県内でふぐを処理する場合、条例に規定されるふぐ処理施設の要件を満たす必要があります。
(奈良県条例第二十八号 別表第三の二抜粋)
ア 除去した卵巣、肝臓等の有毒な部位の保管をするため、施錠できる容器等を備えること。
イ ふぐの処理をするための専用の器具を備えること。
ウ ふぐを凍結する場合は、ふぐを摂氏マイナス十八度以下で急速に凍結できる機能を備える冷凍設備を有すること。
○ふぐを処理する施設(食品衛生法施行令に規定する飲食店営業、魚介類販売業、水産製品製造業、複合型そうざい製造
業、複合型冷凍食品製造業の許可を取得し、上記施設要件を満たす施設)となる場合は、あらかじめ施設を管轄保健所
に届出を行ってください。
○未処理のふぐを一般消費者に販売することは条例で禁じられています。
【注意喚起】
・県内で有毒部位を含むふぐが販売された事案が発生しました。購入者全てに連絡がつき、健康被害が発生していないこと
を確認しておりますが、県としては重大な事案に発生する恐れがあったことを鑑み、当該ホームページで注意喚起を行っ
ています。
・県民の皆様におかれましては、万が一有毒部位があると思われるフグを発見した場合は速やかに営業者及び保健所に伝え
てください。フグの安全に関する情報について厚生労働省や当県ホームページを確認し、正しい知識を持ちましょう。
※フグの取扱い、調理は、各都道府県の条例によって規制があります。
※奈良県では「ふぐの販売及びふぐ処理師に関する条例」及び「ふぐの販売及びふぐ処理師に関する条例施行規則」があります。
(参考:Reiki-Base検索システム)
※フグの取扱い、調理は、各都道府県の条例によって規制があります。 
安全なフグを提供しましょう(厚生労働省)
2.貝毒
(1)有毒プランクトン(渦鞭毛藻類)の摂取による二枚貝の毒化が原因。
(2)貝類の主産地では、毒化時期に毒性の定期的モニタリングが実施され、規制値以下の貝だけが出荷される。
(3)主な種類(貝毒発生歴あり)・・・イガイ、ホタテ、アサリ、ムラサキガイ等
(4)中毒症状・・・「麻痺性(口唇・舌のしびれ、呼吸麻痺等。最悪の場合、死に至る。)」と「下痢性(下痢、嘔吐、腹痛)」の2種類の症状。
3.その他の魚介類
(1)エゾバイ科巻貝(ツブ貝):ヒメエゾボラ、赤ツブ等と称され販売されている巻貝の唾液腺に含有するテトラミンにより起こる。中毒症状は、手足のしびれ、酩酊感等。
(2)バイ貝:巻貝のバイ貝は、ネオスルガトキシン、テトロドトキシン等の毒を有する。中毒症状は、視力減退、口乾等。
(3)シガテラ:オニカマス、イシガキダイ、ハタ類等、熱帯・亜熱帯海域のサンゴ礁周辺に棲む魚が保有するシガトキシンによって起こる食中毒。中毒症状は、吐き気、唇・舌・喉のしびれ、腹痛、温度感覚異常等。
(4)海草類:もずく、コンブ、オゴノリ、海ブドウ等に付着したクラゲの棘胞やフグの卵等が原因ではないかと言われている。市販されているものは処理されているので安全。
ご注意ください!!
奈良県内において、ツブ貝による健康被害が発生しています。
ツブ貝を食べる際には、唾液腺を除去しましょう!(詳しくはコチラです。)
巻貝(キンシバイ)による食中毒について(注意喚起)(厚生労働省)
【豆知識】
※「テトロドトキシン」や「シガトキシン」は、フグ等の動物固有の毒ではなく、食物連鎖により肉食魚類等の体内に蓄積したものだと言われています。
その他
じゃがいもによる食中毒
近年、じゃがいもによる食中毒の発生が報告されています。じゃがいもの食中毒は、発芽部や緑色の皮の部分に多く含まれるソラニンやチャコニン等のアルカロイドと呼ばれる有害成分を多く摂取することによっておきます。
症状は、おう吐、下痢、腹痛から呼吸困難、意識低下などで最悪死に至る場合があります。
未熟なじゃがいもは食べない、じゃがいもを長期間保存しない、芽やまわりの部分も含む緑色の皮部分は食べずに取り除くなどじゅうぶんな注意が必要です。
詳しくは以下のURLをご参照ください。
ソラニンやチャコニンによる食中毒を防ぐには:農林水産省 (maff.go.jp)