ライム病

治療方法

確定診断による、適切な抗菌薬の投与が重要です。

マダニは、複数種類の病原体を同時に保有していることがあります。ライム病ボレリアを媒介するシュルツェ・マダニは、新興回帰熱ボレリア(B.miyamotoi)も保有することが確認されており、重複感染を引き起こすことがあります。肝機能異常(ASTALTの上昇など)や血小板減少等が確認される場合には重複感染を疑い、病原体診断検査を実施しましょう。

予防方法

予防に有効なワクチンはなく、マダニに咬まれないようにすることが最も重要です。野外で活動する時は、マダニに咬まれないよう注意しましょう。

 *マダニの活動期(春から初夏、秋)をなるべく避け、草むら・藪には入らない

*山や草むらへ入る時は、長袖、長ズボンを着用し、裾は靴下内に入れ、肌を露出しない

*マダニの衣服への付着が確認し易い白っぽい服装を心掛ける

*マダニを寄せ付けないよう虫除け剤(DEET成分を含む)を使用する

*帰宅後の入浴時等に、身体(脇の下、膝の裏等)にマダニが付着していないかよく確認する

 *マダニの刺咬を確認したら、ムリに取り除かず、医療機関を受診

 *体調の変化に注意し、皮膚の紅斑、発熱等の症状が認められた場合は、医療機関を受診

感染経路

病原体を保有しているマダニに刺されることで感染します。本来、マダニの吸血対象は野生鳥獣ですが、野生鳥獣の生息する地域にヒトが立ち入りことで、感染の機会を得る結果となります。なお、ヒトからヒトへの感染はありません。

原因と症状

【原因】

ライム病ボレリア(Borrelia bavariensis 他)を保有するマダニに咬まれたときに感染します。

【症状】

マダニ刺咬後、数日から1ヶ月ほどで、「刺し口」を中心に放射状に拡大する特徴的な紅斑(遊走性紅斑)を呈します。また、倦怠感、頭痛、発熱、筋肉痛、関節痛等のインフルエンザ様症状を伴うこともあります。

 上記症状が治癒した後、数ヶ月から数年後に患者の約60%で、全身がだるい、集中力低下、全身の関節痛・筋肉痛、末梢神経障害(顔面神経麻痺など)、慢性萎縮性肢端皮膚炎等の症状が半年ほど続くことがあります。これら一連の症状は「ライム病後症候群」とも言われ、本人も原因に気づかず、また、周囲から怠けている様に誤解されるなど、欧米では社会的な問題になっています。

ライム病とは

ライム病は、マダニによって媒介される細菌の一種であるスピロヘータによる感染症です。世界中で発生がみられ、特に欧米では、年間数万人のライム病患者が発生し、社会的に重大な感染症の1つです。日本では 1986年に患者発生が報告されて以来、北海道、本州中部以北の山間部等で年間 10例前後の患者が報告されています。ライム病の原因病原体ボレリアは、主に寒地に棲息するマダニによって媒介され、日本においてはシュルツェ・マダニ( Ixodes persulcatus)が媒介していると考えられています。

奈良県では 2013年に 1例の患者報告がありましたが、感染地域は北海道と推定され、県内を感染地域とする患者の報告はありませんでした。しかし 2020 8月に奈良県を感染地域と推定する患者報告が 1例あり、ライム病ボレリアを保有するマダニが県内にも棲息している可能性が示唆されました。紀伊山地の標高 1500m以上の地域は、シュルツェ・マダニの棲息域である可能性が高いとされ、注意が必要です。202098日作成)

参考

お問い合わせ

奈良県感染症情報センター  (奈良県保健研究センター内)

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