混交林誘導整備について

 森林には、土砂災害の防止、水源涵養、地球温暖化の防止、生物多様性の保全など、様々な役割(森林の公益的機能)があります。しかし、長引く木材価格の低迷などにより、適切な管理が行われず、公益的機能が充分に発揮されているとは言い難い人工林(施業放置林)が増加しています。

 奈良県では、平成18年度から森林環境税を財源として、施業放置林の間伐を実施し、施業放置状態の解消に努めてきました。これにより一定の効果は得られましたが、施業放置林は未だ相当面積あり、集中豪雨等による土砂災害の危険性が高まっていることから、引き続き災害に強い森林づくりに積極的に取り組む必要があります。

 令和元年度に、国において森林環境譲与税が導入され、森林整備を推進するための財源として、市町村に譲与されることになりました。これまで実施してきた施業放置林の間伐は、この森林環境譲与税を財源として引き続き取り組み、県の森林環境税を財源とした新たな取り組みとしては、森林の防災力強化を図るための新しい知見に基づいた「混交林誘導整備」を行います。スギ・ヒノキ人工林の施業放置状態の解消に努め、さらには、針広混交林に誘導することにより、施業放置林の公益的機能の維持増進を図るとともに、将来的に手間のかからない森林を育成することを目指します。


混交林誘導整備事業(令和3年度~)

 人家・公共施設周辺や公道・林道に近接する区域、集落水源の集水区域など、県民が生活していくうえで、安全・安心の確保に努めるべき森林において、群状択伐を実施し、択伐跡地に地域の特性に応じた広葉樹等の植栽、植栽木の獣害対策及び周辺の環境整備(植栽地周辺の間伐)を一体的に行うことで、地上部は複数の樹種や高さの異なる樹木と草本類に覆われ、地下部においても様々な根が張りめぐらされた、崩れにくい防災機能の高い森林へと誘導します。

  

 事業の案内チラシはこちら→混交林誘導整備事業の御案内(pdf 973KB) 

 事業を実施した事例を紹介します。

 この事業地は、史跡のすぐ近くに位置するため、景観を損なわないように伐採を行う必要がありました。そのため、伐採箇所が目立たないよう、遊歩道から目に入りにくい尾根付近に群状択伐地を設定し、遊歩道沿いに樹木を列状に残すなどの工夫をしています。
 植栽樹種は、事業地付近に自生する樹種のほか、委託先の市町村からの提案により、万葉集に掲載されている樹種(ケヤキ、キハダ)や紅葉などの彩りが期待できる樹種(イロハモミジ、ヤマザクラ)を選定しました。
 苗木を植栽した場所の日当たりがよく、シカの影響が少ないことも幸いし、植栽から数年で3mを超える高さに生長した木も見られ、他の事業地と比較しても苗木の生長がよい事例となっています。今後も継続して苗木の生長量や植生の変化を調査していく予定です。