1.イヌサフランとグロリオサ中におけるコルヒチン等のHPLC分析法について
保健研究センター 食品担当 安藤 尚子
全国的にコルヒチンを含むイヌサフラン等の誤食による食中毒で毎年死者が発生していることから、当センターでのコルヒチン等の分析法の確立を目的とした。中毒発生時を想定し、イヌサフランの葉と球根、グロリオサの根から簡易な抽出のみで定量可能なHPLCによるコルヒチン、デメコルシン、コルチコシドの分析法を確立したので、報告する。
2.奈良県で分離された非定型な腸管出血性大腸菌O157株について
保健研究センター 細菌担当 井上 ゆみ子
令和3年度に奈良県内で届出のあった腸管出血性大腸菌O157感染事例において,患者および濃厚接触者から分離された菌株が,まれな生化学性状を示す非定型株であることが判明した.非定型株は公衆衛生上の問題となる可能性があるため,その特徴を明らかとすることを目的として各種検査および疫学的検討を行ったので概要を報告する.
3.当センターにおける細菌検査体制の維持・強化を目的とした人材育成の取り組みについて
保健研究センター 細菌担当 森村 実加
地方衛生研究所は、衛生行政の科学的かつ技術的中核機関として業務を行っている。当センター細菌担当では、感染症法、食品衛生法、公衆浴場法等に基づく地域保健に関する業務を担い、職員には高度な専門知識と技術が要求される。しかし、頻繁な人事異動や研修予算の削減等により職員の教育および検査技術の維持が困難な状況にある。そこで2021年度および2022年度に、検査技術の維持・強化を目的に実地教育訓練を実施した。その概要と効果について報告する。
4.奈良県における光化学オキシダント(Ox)生成に寄与する揮発性有機化合物(VOCs)調査について
景観・環境総合センター 大気係 髙林 愛
オキシダント(Ox)は、全国的に環境基準の達成が困難な状況にあり、奈良県内9カ所の大気常時監視測定局においても全局非達成である。Oxの上昇は健康被害の他、Oxに占めるO3による気候変動及び植生への影響も懸念されている。揮発性有機化合物(VOCs)はOxの前駆物質の1つであり、Ox削減には反応性の異なる個々のVOCsを把握することが重要である。そこで昼夜別のVOCs濃度実態とOx生成への寄与について調査したので報告する。
5.大和川水系における河川マイクロプラスチック汚染の実態調査
景観・環境総合センター 水質係 平山 可奈子
近年、海洋プラスチックごみが大きな環境問題を起こしている。海洋プラスチックごみは、多くが陸域由来であり、主に河川を通じて流入していると考えられている。しかしながら、河川プラスチックごみの調査は海域での調査と比較すると不足しており、実態は解明されていない部分が多い。今回、奈良県の人口密集地を流れる大和川水系において実態調査を行ったため、その結果を報告する。