◇「関西広域連合への部分参加」について
(関西広域連合への部分加入について)
平成27年12月4日に、総務大臣から関西広域連合長に許可があり、奈良県が関西広域連合へ部
分加入することになりました。
このことについて、知事コメントは以下のとおりです。
知事コメント(平成27年12月4日報道資料)
(平成27年7月1日 奈良県議会平成27年6月定例会 総務警察委員会 説明資料)
資料「関西広域連合への部分参加について」
(平成27年6月25日 奈良県議会平成27年6月定例会 代表質問 答弁概要)
関西広域連合にこれまで参加しなかったのは、広域連合が近畿地方整備局などの国の出先機関の受け皿となるということに対する懸念が最大の理由でした。
明治18年の大和川の大水害の際、大阪府の一部であった奈良県の復旧事業に、復旧予算がほとんど配分されなかったという苦い経緯があり、予算の配分を国ではなく地方公共団体である関西広域連合が行うことになれば明治の大水害と同じようなことになるのではないかという懸念がありました。
その後、全国市長会や全国町村会も奈良県と同じ懸念で、法制化に猛反対されました。その結果、広域連合に国出先機関を移管する法律案は、閣議決定はされたものの国会には上程されず、事実上、国出先機関の移管は困難となって現在に至っています。現状では、本県が広域連合へ参加を見合わせた最大の懸念がほぼなくなったと思っています。広域連合の現在の活動は、結果的に、連携・協働が中心となっている状況です。このように、広域連合の活動の中心が変質したことから、今回、広域連合への部分参加を判断しました。
一方、本県は従来から、様々な分野で、種々な機関と連携・協働を進めてきたところです。「ふるさと知事ネットワーク」による他県との連携や「奈良モデル」による県と市町村との連携などを進めており、連携・協働は重要と考えています。関西広域連合との連携・協働もこのような本県の連携・協働による行政効率化の取組の一つと考えています。
また、連携・協働は本県にとって効果があるため行うのであり、本県にとって効果がない分野につきましては、連携・協働する必要がないということが基本になります。
関西広域連合とは、これまでから、広域防災と広域観光及び文化振興の分野について、その効果が高いと判断し、連携・協働を既に進めてきております。広域連合に対する懸念がほぼ無くなった今、この2分野について正式に広域連合へ部分参加し、災害時の広域応援体制の強化や本県への誘客促進などの効果をさらに高めていくことができるものと判断しました。
なお、広域観光及び文化振興の分野では、関西ワールドマスターズゲームズ2021の開催支援などを行う「スポーツ振興」という項目が追加される予定ですが、本県も既に同大会の組織委員会に参画しているところであり、この項目が加えられることに異論はありません。
一方、その他の分野については、本県にとって具体的な効果が、現状ではあまり大きくないと考えています。
例えば、「広域医療」の分野では、ドクターヘリの連携を行っているものの、本県では南和地域の需要が高く、もっぱら広域連合に移管されていない和歌山県ドクターヘリを利用しているのが実情です。今後、三重県ドクターヘリとの連携を進め、また、さらに県独自のドクターヘリ導入も検討しているところであり、紀伊半島3県の連携体制を構築することがこの分野でより有効と考えています。
「産業振興」の分野は、本県の最大の課題である働く場の創出について、広域連合の中では、この奈良県の課題が埋没してしまう恐れがあります。本県独自に取り組む方が、効果が大きいと考えます。
「広域環境」の分野は、例えば節電の取組では「奈良の節電スタイル」として独自の取組を進めているところです。また、再生可能エネルギー等の導入でも、他府県と情報交換しながら、本県の地域の実情に応じた取組を行っています。
「資格試験・免許」の分野は、主な事務として准看護師などの資格試験事務と免許交付事務があり、関西広域連合では、准看護師試験を、看護師国家試験と同一日に実施されています。看護職員が不足している現状況下において、少しでも多くの看護職員の確保を図るため、奈良県におきましては、准看護師試験を看護師国家試験と別の日に実施し、受験の機会を増やすことが望ましいと考え、東海・北陸ブロックと連携し共同実施をしています。
「広域職員研修」の分野も、広域連合で行われているような研修メニューは、本県独自の研修などで十分対応できています。
また、経費については、2分野に参加する本県の負担額は、年間約2千5百万円程度と予想しています。広域連合で行われている実際の事務内容について、その費用対効果も含めて個別に参加の判断を考える必要があります。
広域連合の予算総額は、およそ19億円であり、そのうち12億円がドクターヘリの経費です。
また、残りの予算額のうち、約4億円は、事務局本部の人件費や企画調整などの総務的な経費です。これらを除く各分野別の事業費は、広域防災では約2千万円、広域観光・文化振興では約3千万円、広域産業振興では約4千万円など、限られた事業費での広域連合の取組となっているのが実情です。
広域防災や観光振興などは、事業費が少なくても連携・協働して取り組むことで、災害時の体制強化や、本県への誘客に一定の効果はあると考えますが、その他の分野では、先に述べたように、本県にとって負担に見合う十分な効果がないと現在では判断しています。
また、広域連合へ部分参加すると、構成団体の首長による合議機関である「広域連合委員会」へも参画することになります。この委員会は、連合の施策に係る重要事項に関する協議が行われる場です。全委員の合意があった場合にのみ、連合としての意思決定が行われることになっています。
これまではリニア中央新幹線の国の方針と違う新しい駅の設置や国出先機関の移管の協議などが、この委員会で行われてきた経緯がありますが、本県が参加することにより、本県の考えと異なる意思決定が、この連合委員会の場で行われることはなくなるものと考えています。
なお、今後の予定につきましては、まず、今定例県議会後に、広域連合へ「広域防災」「広域観光及び文化振興」の2分野に奈良県が部分参加する旨の広域連合規約の改正依頼を行うことが最初の行動です。次に、広域連合委員会においてその規約改正案の策定と確認をされます。その後、奈良県議会及び連合構成府県・政令市の各議会においてこの改正案を議決頂くことになります。その上で、広域連合長から総務大臣に規約改正の許可申請を行い、その許可後、奈良県が部分参加するという流れになります。
こうした手続は年内いっぱいかかるものと思われますので、順調にいけば年内には広域連合へ部分参加することになると思います。
(平成27年3月13日 奈良県議会平成27年2月定例会 予算審査特別委員会 総括審査の答弁概要)
関西広域連合への設立当初からの参加は見合わせましたが、平成25年7月の県議会・広域行政調査特別委員会の「将来にわたる関西広域連合への加入を否定することなく、改めて判断すべき」とのご意見も踏まえ、参加については、継続して検討してきました。
この間、関西広域連合との連携・協働は必要と考え、防災、観光、文化、スポーツなどの分野での協力関係は、適宜進めてきました。
連合は、議会のある組織ですが、このような連携・協働の分野では、政治意思の決定はないと考えています。そのような連携・協働が中心の分野では、部分参加の方法もあるのではないかと思っていました。
去る2月28日、井戸連合長が来県され、「連携・協働の延長として、連合事業の一部でもよいから参加の形をとれないか」と強く勧められました。井戸連合長は「これからは連携・協働で行く」とはっきり明言されました。選挙が終わってから言うのもどうかと思い、3月6日の政策発表の記者会見の機会に、防災、観光及び文化分野についての部分参加を表明しました。
設立当初に参加を見合わせた最大の理由は、「関西広域連合設立案」の「設立のねらい」にある「国の地方支分部局の受け皿づくり」、「丸ごと移管」でした。
国出先機関の丸ごと移管に伴い、国の予算を関西広域連合が判断して配分することになる、そのための議会の議席数の割り振りでした。明治18年の大和川の大水害の際、大阪府の一部であった奈良県内の復旧事業がほとんど予算化されなかったので、奈良の分離独立運動に火がついた経緯があります。国の予算の大きなものはインフラと災害復旧です。その予算配分の権限移譲に対して、全国市長会・町村会が反対しました。
広域連合に国出先機関を移管しようという「国の特定地方行政機関の事務等の移譲に関する法律案」は、平成24年11月に閣議決定はされたものの、国会には上程されず、国出先機関の丸ごと移管が事実上困難になりました。井戸連合長もそれは認めて、「国の方針が変わった」とおっしゃっていました。従って、現時点では関西広域連合による国の予算配分機能について、私の懸念は大変薄まりました。
そのように設立当初の際の懸念が薄まったことから、既に奈良県が関西広域連合との連携・協働を進めてきた防災、観光及び文化分野での部分参加の判断に至りました。
観光の分野は議決で1つの意思が決まるということはない分野です。関西広域連合の構成団体としての奈良県に期待されているのは、他の県にない観光資源を遺憾なく発揮することだと思います。
防災は助け合いが基本であり、関西広域連合とは既に相互応援基本協定を締結していますが、関西広域連合として集まって、防災の議論を進めることができるというメリットがあります。防災の分野では、議論が進むとまだ発展する可能性があります。
関西広域連合では、それぞれの構成団体の立場での政治的な意見表明が目立つ分野もありますが、それについては部分参加により一線を画したいと思っています。防災、観光及び文化の分野で独自性を発揮して、奈良県が賛意を表する分野だけを関西広域連合の意見として扱っていただくというスタンスをとるのも、規律ある参加の方法かと思います。
(平成27年3月6日 知事政策発表時の発言概要)
1.・関西広域連合発足当初の主たる目的は、国の地方機関(例えば近畿地方整備局)の受け皿になるというも
のでした。
・災害復旧事業なども国の予算を連合が判断して配分することになります。
・これに対して全国市長会が強く反発して、国へ運動されました。
・この関西広域連合の目論見はうまくいきませんでした。
2.・奈良県は、明治初期、堺県、大阪府の一部となっていた時期があり、議席があまりなかったため、小学校
1つつくるにも大変でした。明治18年の大和川大水害の復旧事業についても、奈良県内の復旧事業がほ
とんど予算化されなかったので、奈良県民の怒りが爆発し、独立分離運動に火がつきました。
・明治20年に奈良県が発足しました。
・井戸連合長(兵庫県知事)は、連合発足当時、奈良県の不参加についても、この歴史を持ち出して理解を
示してくれていました。
3.・関西広域連合は、その後、連携・協働の事業を中心に活動されています。
・奈良県は、連携・協働は必要と考えていたので、防災、観光、文化、スポーツなどの分野での協力関係は
進んでいます。
4.・2月28日に、井戸連合長が来県されました。
・井戸連合長からは、「連合への参加については、奈良県が決める。
・奈良の自主性を尊重するので、奈良が奈良らしく強くなって、連合と連携・協働の活動を強化できたら
よい。
・連携・協働の延長として、連合事業の一部でもよいから参加の形をとれないか」と強く勧められました。
5.・連合への参加は、リニアの中間駅設置場所問題について、連合で決めようという動きがまだあるので、
それについては強く警戒してきました。特に連合内で滋賀、京都が強く主張しておられます。
・現に、北陸新幹線の敦賀以西の路線については、福井駅、小浜駅を通るとされているのに、連合では敦
賀・米原ルートが望ましいと決定されました。
・同じことが奈良駅についてもできるとおっしゃる向きもあります。
6.・連合との連携・協働については、これまでも進めて良いと思ってきました。
・そのような連携・協働が中心の分野では、部分参加の方法もあると思っていましたが、きっかけがありま
せんでした。
・このたび、はからずも井戸連合長が来県され、一部参加でもと強く勧められたので、数日間考えておりま
したが、この機会に表明することを決断しました。
7.・昨日、井戸連合長にこのような考え方を電話でお伝えしましたが、「大歓迎です」と言われました。
・これまで実際上行ってきていた連携・協働について、形を整えるという面もあります。
・関西広域連合と奈良県が連携・協働を中心に活動を進めることに、井戸連合長は強く賛同されました。
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