野菜の育種、栽培流通技術に関する研究

野菜の新品種育成や品種選定を行っています。また、高品質・省力・安定生産技術を開発し、栽培施設の改良に関する研究も行っています。

長距離輸送性を高めるイチゴ品質保持技術の開発

近年、アジアを中心に国産イチゴの輸出が増加する中、‘古都華’をはじめ県産イチゴも首都圏や海外へ出荷されています。イチゴの果実は傷みやすいため、長期間・長距離輸送に耐える品質保持技術が求められています。現在は、果実損傷程度の定量方法の確立に取り組むとともに、振動試験機などを用いて、収穫時の適切な果実熟度や収穫後の保存温度について検討しています。今後は、長距離輸送に適した包装容器などについても検討を行う予定です。

振動試験機による果実損傷評価実験

イチゴ栽培における高温対策技術

9月の気温が高く推移すると、イチゴの花芽分化の遅れから、収穫開始が遅れてしまいます。イチゴの育苗には、通常ポリポットが使われますが、培地そのものを固めて作ったキューブ状の培地(固化培地)が開発され、イチゴ育苗への利用が検討されています。固化培地は、培地表面からの気化熱により、ポリポットに比べて培地温度の低下が期待できます。固化培地を使うことにより、高温条件下でもイチゴを遅れることなく収穫できないか検討しています。

 ポリポット(左)と固化培地(右)による育苗

トマト栽培における高温対策技術

トマトは、豊富な日射量が必要ですが、生育適温は20~25℃と比較的高温が苦手で、着果に伴う草勢管理が難しい作物です。また、トマト栽培では、土壌病害等の発生も大きな課題です。当センターでは、これらの課題解決のため、面積あたりの収量性の向上と土壌病害の回避を実現するため、密植養液栽培の実証を行っています。本栽培方法では、慣行の土耕白色マルチ栽培に比べて、2℃ほど培地の温度が低く推移することが分かっています。

  トマトの密植養液栽培

‘大和丸なす’栽培における高温対策技術

‘大和丸なす’は、肉質が緻密で、しっかりとした食感が特徴で、首都圏を中心に出荷されています。光沢のある紫黒色の果皮は、市場でも高く評価される‘大和丸なす’の特徴の一つですが、高温により果皮のつやが失われる「つやなし果」の発生が問題になっています。当センターでは、ハウスに遮光資材を張ることによる「つやなし果」の発生状況を調査しましたが、遮光が強すぎると光合成量が低下するため「つやなし果」の発生は減少しませんでした。このことから、遮光資材の適切な開閉のタイミングについて検討しています。

‘大和丸なす’の正常果(左)とつやなし果(右)

県育成イチゴ‘奈乃華’の生産性向上

2024年に品種登録された県育成イチゴ‘奈乃華’は、果実硬度が高く輸送性・日持ち性が高いことから、作付面積が増加しつつあります。しかし、厳冬期の草勢低下や、心止まり(成長点が止まってしまい花房が出てこない状態)の発生による減収が問題となっています。そこで、慣行栽培よりも株間を狭くした密植栽培による増収効果および心止まり発生の原因解明とその対策について検討しています。

 ‘奈乃華’の密植栽培試験

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