平成29年10月11日(水)知事定例記者会見

司会:
 おはようございます。
 それでは、ただいまから知事定例記者会見を始めます。
 本日の発表案件はありませんので、その他の質問からよろしくお願いします。


質疑応答

衆議院議員選挙について

時事通信:
 知事、昨日いよいよ公示を迎えまして、奈良県内の各政党の候補者の対立の構図も明らかになってきました。感想をお願いします。

知事:
 選挙を見る目というような観点ですが、今度の争点は安全保障の面。北朝鮮がいるからとか世の中の構図が随分と変わってきているかもしれない。これは安全保障の世界構図をどう見るかというのはとても大きな話なのですが、皆さん方も含めて日本人が見る目があるかどうかというのが大きなポイントかと私は一つ思います。あとは経済政策。経済は順調だが、消費税の導入で消費が冷え込むとかという大きなことがある。消費増税かどうかや、使途の変更ということが大きなことだと思います。その中で安全保障は国難だという言い方をされているのですが、そういう言葉を聞くと、実はちょっと個人的な見方ですが、戦前の選挙のことをちょっと思い出しました。

 戦前の選挙は、国内では大政翼賛、それこそ国難に向かう選挙というようで大政翼賛的な、求心力を持たせるのは国難仕立てがすごく大事なので、国難仕立てということをするが、そのときにアメリカの選挙があって、これが極めて重要な選挙。1933年、フーバー共和党大統領が民主党のルーズベルトに負けた。ルーズベルトの手練手管に負けてしまった選挙だが、そのときの要素は、経済政策では1929年の大恐慌があったときの、大恐慌からの脱出というのがアメリカだけでなく世界の大テーマであった。フーバー談話だが、フーバーは、そのときはケインズがまだ出てきてなかったので、ケインジアン経済政策はなかったので、財政出動がなかった。財政均衡主義が政治的に絶対視されていた。そのときにフーバーは共和党なので財政均衡で、ルーズベルトも表向き財政均衡というような構図だった。もう一つは戦争に向かうかどうか、国内経済と外交というポイントで見ると、ルーズベルトが大統領になった1933年にソ連を承認した。共和党3代、ハーディング、クーリッジ、フーバーと共和党3代大統領が反対していたソ連をルーズベルトが承認した。

 ソ連をどうして承認したのかというのが、日本の戦争にも大きな影響があり、あと1997年。ヴェノナ文書というのが発出されて、当時の公文書のやりとりが公表された。それを見ると、当時のアメリカ政権にソ連のスパイがたくさんいたということがわかって、例えば、ヤルタ会談でスターリンとルーズベルトの後ろに立っているアルジャー・ヒスというのがいるが、それがその後、ソ連のスパイとして有罪になっている。だからルーズベルトはスターリンに支配されていたという説が、歴史修正主義だが、その後、最近すごく出てきて、私は個人的に注目している。そのような1933年のアメリカの大統領選挙だったという、そのような背景は、日本人、学者を含めて政治家もあまり見立てがなかったというのが残念です。

ルーズベルトの心境をアメリカも知らなかったが、戦争に向かう世論はアメリカは80%反対だった。それに向かって戦争に行くということはストレートに言えなかった。当然のルールで言えなかった。それを転覆させる手法が隔離演説というか、差別視する、悪者扱いする演説と、当時マスコミでも例えられたが、日本のガラガラヘビがいつアメリカを噛むかということに焦点を当てて、ガラガラヘビがかむ時期を待っていた。噛んだのは真珠湾攻撃だと、こういう歴史の一つの説が最近は出てきている。山本五十六が「頑張って一撃をやったらアメリカが引っ込むぞ」と、こういう嘘みたいな話で一撃したときの最後通牒のハル・ノートというのは、当時公開されなかった。アメリカの世論はハル・ノートが出ているのを知らなかった。なぜ日本が真珠湾攻撃したのかというのも、感情的にはすごく憤激したが、そのようなガラガラヘビがかむように仕掛けたハル・ノートというような見方は当時なかったが、今は少し出てきている。

 そのハル・ノートを書いた副官が、またソ連のスパイだったというのがわかってきているというのは、すごく世界の安全保障の構図というのは奥深いというのが、最近のいろんな文書公開の読み解く人が出てきてわかってきている。最近興味を持って読んでいるので、そういうふうに思うと、安倍さんが国難と言ったときに、国難の構図というのはどういうことかという、社説でもマスコミでも、あまり国難の構図という論戦、論壇を張る人がいないので寂しいなと思っているのが、私の選挙を見る今の見方です。

時事通信:
 今の構図というのは、それは例えば日本と北朝鮮の関係であったりとか、また国内の政党とか、そういったことですか。

知事:
 この構図でいえば、戦前の構図でいえば、アメリカとロシアがどんなふうに密約というか、どのように話をしているのか。アメリカと中国は、どのように話をしているのか。よく時々ちらっと出ている。頭ごなしが出るかもしれないとか、こういうふうに警告する記者の方がいる。それが後になって、昔のことを考えるとそういうこともあり得るというか、今のトランプさんが北朝鮮をめぐってロシアと中国とどのように手を結ぼうかと考えているのかということが、我々の日本人の頭の中にもう少し認識、意識がね、高まったほうがいいのかなと。

 わからない世界だが、FDR(ルーズベルト大統領)の真珠湾攻撃にまんまとガラガラヘビにさせられたということを思ったら、今度は、北朝鮮ガラガラヘビ仕立てかどうかというふうに想像する。外交は想像ではいけないかもしれない。昔は日本、今は北朝鮮がガラガラヘビ。しかし、当時の大恐慌の後のように、アメリカ経済が逼塞していたという状況ではないというのが一つ、状況が違うとも思います。日本の経済も、そういういい経済を壊してまでガラガラヘビに飛びかからすのかということが大きな選択である。国内経済、世界経済と安全保障の構図は裏腹だというセンスが、我々でももっと強く持ってもいいのかなというふうに思います。

 日本の選挙でいえば、国難アピールと北朝鮮アピールと国内経済、これはグローバル経済の中の一つというふうにどのように考えればいいのか。今の時代ですから、ガラガラヘビになっちゃいけないし、仕立てられるのもばかみたいな話なので、仕立てられて飛びかかってこいよと言わんばかりに、飛びかかるのもばかばかしい。まあ、ばかばかしかったなと今思うが、真珠湾を一かぶりなんて思って、真珠湾の毒がアメリカに回らない。

 だから今となってそういう歴史修正主義的な研究が出ているということなので、今度の選挙の構図で多少、昔と何か似たような、デジャブではないが、見た景色が多少重なってくるというのが印象であります。

NHK:
 関連して、当時その後、戦争に向かっていった。その求心力を高めるために国難という言葉を使って大政翼賛的になる。このこと自体が何か危ういとか、そういうお気持ちがあるのですか。

知事:
 国難はよく使うから。本当の国難だったら大変です。しかし、そうかというような目を持たないといけないということです。国難という言葉を使って危ういということは私は思わないが、国難を感じる国民の目がどう見るか。本当に国難というのを使って駆り立てられるのは、どちらかというとナショナリズムの意識の強い人であった。その人たちを引き寄せるために国難、いつも国難、いつも国難なのです。民主主義、言論の自由があるので、禁句というのはないが、それを見る目というのは、今はものすごく自由である。情報もあるから、そういう幅広く見る目を日本国民が持っていれば、日本の外交も、国内政治も安心だというふうな、年寄りのひとり言みたいな感じです。

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自衛隊の誘致問題について

奈良新聞:
 安全保障に関連して、例えば、次の大地震が起きた場合の自衛隊の誘致を五條へということをやっていて、来年度予算が、どうも防衛の装備のほうにたくさん使われそうで、そういう安全面の分が脅かされるんじゃないかというような、似たようなご発言をされていたと思いますが、懸念というか、そういうものともつながっていきますか。

知事:
 北朝鮮あるいは中国の尖閣列島へのプレッシャーをどのように対処するか、外交対処と防衛対処と2つあるように思いますが、私の感じでは、外交対処のほうが事程左様に重要なわけなんだと思うんです。防衛対処だと、武力で侵攻させられたり、武力で攻められたときの防御をどうするか、物理的な、これは安全保障の一番である、国民の人命と財産を守るという観点から大きなことであり、それをどのようにするか。北朝鮮のミサイル防衛をどのようにするか。その主な直接脅威は北朝鮮のミサイルと中国の尖閣侵攻というようなことだと思いますが、それにどのように対処するかという中で、アメリカとの軍事同盟の中に位置している日本として、抑止力をどのように考えるか、来ればやり返すぞということで防御するといったことが抑止力の思想の基本になっていると思うんです。

 昔の戦争のように、陸上・地上戦力がずっとやって来るのと違い、今は空からこそっとやって来る。そのときに、抑止というのは具体的にどうするのかというのが大きな課題ですよね。そのためにPAC3とか地上イージスというのが、ああいう火星14号みたいに上からずどんと落ちてくる際に抑止になるかどうかが分からない。まだ試されていないわけなんですが、アメリカも同じようなことだと思う。

 アメリカまで届いたときに抑止できるのか。アメリカはあれだけの軍事大国だけども、テロと外からのミサイルというのは、大きな抑止対象になってくる。向こうの北朝鮮のリーダーが頭の中で仕返しされるからと思ってくれると抑止力になるんだけども、昔の山本五十六みたいに一撃するのが値打ちだと思って、一撃されちゃかなわない。それが今、アメリカでいう真珠湾が、日本でいう横須賀だということになると困ったもんだと私は思うんですが、そのような図にならないように、これは外交のことですが、横須賀を攻撃させて攻めようという、フランクリン・ルーズベルトみたいなことは考えてないだろうと私は思いますが、日本の米軍基地なり、日本の自衛隊なりが、日本の人民をミサイルからどのように守るのかということであり、抑止力のあり方とはとても大きなことで、まだこうだというほどの結論はありませんが、それに予算を使っているということは確かなんですよね。

 だから、そのために予算を使っているので奈良への自衛隊誘致が進まないということも、自衛隊に陳情に行ったらよく言われることであることも事実です。私の感じからすれば、自衛隊、特に陸上自衛隊は海外に行くことはなく、国連の差配の下でないと南スーダンとかカンボジアとかにしか行くことはない、とりわけ韓半島とか中国大陸にはもう二度と行かないんだから、自衛隊をどこにどういうふうに配置すれば国内を守ってくれるのかということが我々の関心事で、各県駐屯というのも一つのスタイルと思う。外国から攻めてこられたりした場合の対処や、防災として、津波が来たり、原発の事故があったときの隔離というのは日本では自衛隊しかできない、特に大規模避難というのは自衛隊しかできないので、広域防災拠点というのは要るんじゃないかなと私は思うんです。自衛隊の駐屯に結びつけられたらいいと思うんですが、駐屯がないと広域防災拠点ができないわけではないので、とりわけ奈良県には広域防災拠点がなく、形だけのものしかないので、広域防災拠点を五條につくりたいという気持ちはまだ強く持っています。

 自衛隊では抑止力展開に予算を使っているため、それに使うなともちろん言えないんだけれども。抑止力ということ自身の考え方について、我々国民として考えなければいけないことではあると思いますが、自衛隊としては五條への自衛隊駐屯地誘致に関して、すぐに駐屯地をそんなところへ持っていけないということはおっしゃっている。しかし、例えば北朝鮮による福井の原発アタックとか、そんな大それたことはしないと思うが、むしろ自然災害の津波からの避難というようなことを考えると、五條のような山の上に広域防災、大規模広域展開ができる防災拠点があるのも、防災体制の中で必要じゃないかなと思っております。広域防災を展開できるのは、日本では今のところ自衛隊だけなので、自衛隊誘致と裏腹でありますが、自衛隊が駐屯しなくても広域防災展開、広域救難展開はできることから、そのための施設もあったらいいのかなと少し考えを進化というか、変更しつつあるのが今の頭の中での進行状況です。

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衆議院議員選挙について

毎日新聞:
 希望の党の代表で、東京都知事の小池氏が結局出馬は見送られて、出てくるんじゃないかというような期待あるいは警戒論も含めてありまして、もし出られたなら大分構図も変わったのかもしれませんが、結局東京都知事との両立は見送られたということですが、同じ都道府県のトップとして小池氏の今回の動きというのをどう見られているのかということと、直近に、小池氏が大阪と愛知の知事とも会談されて、与党に対する牽制だったのかもしれませんけれども、大都市間で協調していきましょうということを持ち上げられたわけですけれども、これも奈良のトップとしてどのようにごらんになられているでしょうか。

知事:
 大阪、愛知との握手は牽制だったの?

毎日新聞:
 分からないです。かもしれないです。

知事:
 選挙のときの牽制か、フェイクかリアルか。リアルと小池さんは言っておられるので。全てリアルかどうかわかんないという見立てですよね。一つは今おっしゃった中で、小池さんが地方の首長なのに国政と二股、国政の党と一応二足のわらじだけども、結局二足のわらじって、二足あるからね。国政進出の、国政会派の長というわらじと、知事というわらじと、二足あるという、4つわらじがあるということですね。

 (フランスの)シラクの例で、シラクはパリ市長と首相と2つできた。前のオランドのときはナント市長が総理になったり、韓国では全羅南道の知事が総理になったりして、韓国の場合は知事をやめて総理になっているんですが、地方首長と首相というのは結びつきがあるのではないかという観点、余り注目されていませんが、シラクの例を小池さんが上げられているのを記事で読んで、国政への意欲はおありになるんだなという感じがあった。二足のわらじを二足履きかえるのではなく、一足のわらじで片足国政、片足地方首長と、ぎっこんばったんみたいになるけども、そういうわらじがないのかと言っておられるような感じですよね。二股わらじということなんだけど、片足総理、片足都知事というようなわらじは今、日本ではないんですが、そういうのがあってもいいんじゃないかと、こう言っておられるような、これは制度、そういうわらじを履けるよという制度だけの話ですが。 現実に、小池さんは国政のいろんな展開をしたいご意向だということはよくわかってきました。ご自身は、逆に知事として仕事ができないのではないかという懸念があること。しかし、前の石原慎太郎さんはほとんど都庁に出てこなかったから、それよりはよく出ておられるんじゃないかなと思います。物理的に仕事ができないのかというと、私みたいに毎日一生懸命仕事しないと仕事ができないタイプと、一週間に一度出てきて都庁を支配できる石原慎太郎さんでは、その能力が違っていただけの話だと思いますが、小池さんもそんな出てこなくても仕事のできるタイプだとは思いますので、毎日出てないと仕事できないというのは見かけ仕事だから、ちゃんと仕事を指示さえされれば、こういうリーダーの仕事はいい。私はじかに仕事したがるタイプだから、少し効率が悪いだけの話だと。奈良の知事としてとおっしゃったので、比較して申し上げると、そういうことです。総理候補になるかならないかは、選挙にとってはとても大きなことだと思いますが、これは希望の党の選挙戦略の中の一環だから、田舎の知事としていいとか悪いとかも何もないですね。

 あとは、小池さんの論点としては、小池さんの選挙構図の中の立ち位置には大きな意味があるように思います。二大政党という声が今度の選挙はあまり聞かれないですよね。二大政党というのは日本でできたのかどうか。まだできたことはないんですが、できたのかどうかというようなのは大きな論点であります。

 日本の政治のその土台、サポートする人たちをよく見ますと、やはり今度の構図で割ときれいに分かれたのを見ると、やはり全体的に三極になっているのかなという感じもします。それが1、2、3と順番つけて、自民党と、希望の党を中心とする保守、自民党も幅広いんですが一応保守、中道というとおかしいけど、党として連立もし、党内連立をしてみたいな党ですが、それとその中間、リベラルと保守の中間に位置すると標榜している党と、リベラルを標榜している党と分かれて。なぜ分かれるかというと、憲法観、安全保障観、国の骨格を決めるところでそのように日本国民の意識は分かれているんだなということがよくわかってきて、今度の三極構図のほうが二大政党構図よりも日本人の政治意識がよくわかって、私はすばらしい分かれ方だなというふうに思いますね。

 三極構図が定着するのかどうかはこれから。三極構図になれば保守一党がやりたい放題じゃないかと、こういう心配をされるかもしれないですが、それは保守の、今の自民党の中でも公明党が連立でついているのと、これはどっちかというとリベラル的な考えが強いと思いますが、自民党の中でとても右翼と言われるような人たちと、逆にリベラルと言われるような人たちが混在しているわけなので、自民党の中の政権交代を促すということも当然あるわけですので、日本の中の政治は、日本の戦後の政治は、党内政権交代が中心で日本の政治の方針を決めてきた事実がありますので、政党の政権交代以前の、党内の政権交代で決めた、そのための選挙というような面があろうかと思います。

 自民党で通ると、党内のあなたはどこに位置しているのと。奈良県の先生方でも、とても右翼の人と、とても左翼とは言わないけど中立の人とおられ、右翼が多いのかな、日本、奈良県は。県でいろいろ偏りがある。「私は自民党のリベラルに属しています」、そういうふうに言われないわけですね、自民党の先生は。「私は自民党で実行できますよ、実現できますよ」と、こう。実現するのが保守政権政党だから、実現しているのを評価されるのが総選挙あるいは選挙ということだと思いますが、政権評価の選挙というのはいつもそうだと思います。

 その政権評価は、自民党の政権への評価なのか、安倍政権への評価なのかというのは、大分違いますよね。これから選挙戦に入ってまたクリアになってくるかもしれませんが、自民党はいいけど安倍さんはだめだという人も出るかもしれない、もっと大きくなるかもしれないし、それはどこに流れるのかということに、自民党層の安倍批判票は、受け皿論になりますが、どこに流れるのかということも一つ注目していますが、その構図で、会派としてどういう受け皿になりますかということを言うのがわかりやすい。

 ドイツみたいに少数、日本の言葉で言えば乱立という言葉がつくんだけど、少数の党がいろんな主張を明確にして、その盛衰といいますか、たくさん集めるか集めないかということを競って世論の動向を見るという選挙に、ヨーロッパなんかどんどん変わってきていますよね。その変わりように従って、それを判断して政権がハンドルさばきをするといった政治の動きになってきているように思いますが、政権交代の選挙だと言っているのは多少古いのかなという感じがするんです。政策交換の選挙だというのとね、政権交代の選挙、大分違うですよね。政権交代と言わないと票がとれないような言い方に私には聞こえますけどね。ちゃんとご質問にフィットしているかどうか、ちょっと怪しくなってきましたが。

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J-アラートの訓練について

日経新聞:
 北朝鮮の話に戻して恐縮ですが、10月下旬から11月にかけてJ-アラートの訓練を県下一斉で行うと聞きましたが、もしスケジュールが決まっていたら教えていただきたい。また、町村の一部では、訓練をすると、高齢者に迷惑がかかるということで、あまり前向きじゃない自治体もあると聞きましたが、そのあたりどうお考えになっているんでしょうか。

知事:
 そうですね、J-アラートの実効性とか現場の様子が伝えられていますが、先ほどの急襲、空から爆弾が落ちてくるといったような事態にどう備えるかということについては、備えようがないじゃないかということと、アラートは鳴らしましたという役所の言いわけみたいな作業であることが、まだ混在しているような気がします。実際に(爆弾が)頭へ向かってくればどうするのかという切実な面と、そこに行くとほかは行かないんだから、雨あられのように爆弾を降らせるというようなことはないだろうと高をくくる面がある。どこに落ちるか分からないということから、誰ひとりけがをさせないというようなアラート体制はなかなか難しいだろうと思う。願いとしてはそうあるべきだと思いますけど、なかなか難しいだろうと、こういうふうに思います。だから防御の体制は知恵が要るところだと思いますが、国が基本的にすることだと思います。どのように国はそういう眼前の危機に対処するのかというようなことが一つのポイントになっているんだなと思います。

 J-アラートというシステムができていますが、アラートというのは大事なシステムだと思います。何か身構えると命が助かる率が高くなることもありますので、個人的な観点から申し上げますと、そのJ-アラートに日頃からどのように慣れているかがポイントであり、最終的に命の助かり度が違ってくるだろうと思う。分水嶺(物事の方向性が決まる分かれ目)みたいなところをこちらに向けるのか、あちらに向けるのかで命が助かったり助からなかったりするのが、切羽詰まった局面ではあります。日頃J-アラートに毎回几帳面に反応をしていれば助かるというわけではないですが、J-アラートは何のために鳴っているんだろうか、こんなに鳴るときは、J-アラートが反応するような危機が世の中にあり得るんだと思って、何かとっさの動作をしないといけないといったことを生活の中で習慣づけるのも、一つの大きなことだというふうに個人的には思います。

 だから、鳴ったり鳴らなかったりすることもあるんだと。世間はJ-アラートが鳴らなかったらおかしいと思うんですが、おかしいと言っているうちにミサイルが飛んできてドカンとなっても、鳴らなかったから飛んできたわけではもちろんないわけで、鳴らない場合もあり得るんだというふうに思って危機対処するほうが対応の知恵になります。私ども行政の方から、手抜かりがあるときもあるよといって手段を講ずると怒られますが、世間では実際にはそういうこともあり得ると思っていますので、完璧な防衛手段というのは、世界中ないと思った上で、それぞれの防御、地方の防御、国の防御というのを重ねると、そのスクリーンがたくさん出るので、助かる率が上がっていくんじゃないかというふうに思います。これさえすれば助かるんだという、そんな法則は世の中にない。

 とり方によったら質問の答えとしてはまずいようには思いますが、世の中の防御体制をつらつら考えるというようなことになるわけですが、私も立場上、そういうふうに考えたらというふうにはお勧めする立場にはないということはわかっております。鳴らない場合もあるんだということも、また一つ大きな事実であります。鳴ったほうがいいですが、必ず鳴ると思っていると、そのときだけ鳴らない場合もあり、今まで99回鳴ったけど、実際に来たとき鳴らなかったら悲劇です。いつも鳴るからと思って安心していると、何かドカンと来たということもあり得るので、全幅の信頼を(おくのは)、ある点においても世の中難しいというのが現実かなと、個人的には思います。

日経新聞:
 県下の訓練のスケジュールについては、何か上がってきていますか。

知事:
 最近のは、まだちょっと聞いていません。

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リニア関空直結新幹線構想について

NHK:
 リニアに関してなんですが、以前の会見の中で、新幹線を関空から直結するような構想を夏頃に出せたらなという話がありましたが、その後何かお考えは深まっているでしょうか。

知事:
 深まってはいますが、いつ構想をどんな形で出すかということを今考えています。リニア関空直結新幹線構想というのは奈良新聞の講演の中でも項目だけ上げて、20年後にリニアが奈良市附近に来ます。そのため、それを前提にいろんなまちづくり、奈良県の地域づくりの方向性がだんだん見えてくるという観点です。大きくはリニアとインバウンド、特に空港をどう結びつけるかというのが大きな課題です。それに奈良県内を通る新幹線という構想のアイデアは持っております。

 メガリージョンの研究会が国交省の中にできました。メガリージョンというのは、リニアが通ると、その沿線の人口が日本の人口の7割程度がそこに集中するということで、それをどのように構築していくのか、どのように意味を考えるのかという研究会が始まっています。その研究会に沿線自治体の長として参加が要請されて、参加することになりました。12月に意見を言う機会があるのですが、今のメガリージョンの国交省の構想では、新幹線とリニア新幹線と高速道路ができているので、高速道路とのネットワークをどうするかというのが大きな課題です。また私の観点では、インバウンドの人の移動が大きな要素なので、国際空港と国内ネットワークが、国内高速交通ネットワークと国際的なゲートウエーがどう結びつくのかは個人的にも昔からの関心でありました。また奈良の関心でもありますので、まだ相変わらず構想のままで、12月の終わりぐらいになりますが、そのときに何か意見言えたらと思っています。

NHK:
 例えば、その新幹線を関空から奈良市附近という駅に直結させるという手もありますよということを、12月下旬に言われる予定ということですか。

知事:
 構想、フレームはそんな感じです。

 どうですか、あんまり良いアイデアじゃないですか。

NHK:
 実現するとすごいなと思います。お金の面ですごい、どうなのかなと思います。

知事:
 その反応が心配です。

奈良新聞:
 前におっしゃっていた四国の新幹線をつなげる話もあって、そのあたりも関連づけて打ち出すのか、それとも関空だけか教えてください。

知事:
 四国新幹線や、その他整備新幹線は関係ありません。新しい新新幹線のような位置づけになるのかなと思います。整備新幹線の追加ではございません。

奈良新聞:
 それをこの12月に、沿線の自治体の長が集まる国の会議で発言されるのですか。

知事:
 有識者や、学者さんが中心に集まる、メガリージョンの有識者会議が発足して最初の委員会がありました。その会議の12月開催時に沿線自治体の長として意見を言ってもいいと、お誘いを受けました。そのときに沿線は、メガリージョンの中に入ってきます。その中の長としての将来構想、日本の国土形成の考え方について、一沿線の知事はこんな発想をしているということを発言できたらと思います。それはハードの面だけではなく、コネクティビティーという、ネットワークがとても大事だという点と、昔の列島改造と違ってと言いたいのですが、ダイバーシティーを育む国土形成ができたらということです。

 みんな東京に行くから、同じ東京銀座を各地にできるというイメージではなく、ダイバーシティーがすごく日本には残っています。地域に残っているんですが、明治から150年たって、この間ずっと経済発展のためには東京で世界標準の仕事をしなきゃいけない思ってきました。世界標準がどんどん進んでいるから、僕の考えでは、世界標準という龍の尻尾に食らいついていました。頭が振れると、尻尾は逆に振れます。だからなるべく頭、胴体の上のほうに食らいついていました。頭が多少動いても見えるし、尻尾が動いても見えると、そういう世界標準への食らいつきのほうがよかった。尻尾に食らいついて、これが世界標準の仲間だと、日本はこう言っていました。いまだに世界を、その龍を動かすほどの力はもちろんありませんが、龍を動かすんだと、おごり高ぶった時代もあったと思います。世界標準という龍はどこ行くかわかりませんので、そこに食らいつき、その世界標準という経済でも安全保障でも動きは、龍の頭が右に行けば尻尾が左に行くというような感覚で。来年は明治維新150年だから、明治維新の反省をしたらどうかと思います。その国土版では、明治維新が潰した地方のダイバーシティーを大事にするという気風が、メガリージョンのときに改めて出たほういいのかなという感覚があります。それはメガリージョンが育む地方のダイバーシティーというような感覚です。それは地域地域の自意識、文化の意識を育むということになります。記者の皆さんもほうぼうから来られていますが、各地に行くと違いが感じられると思います。東北と関西は本当に全然違いますよね。

朝日新聞:
 リニア、新幹線、昔で言ったら道路もそうだと思いますが、東京につなげる上り下りでやる、そうすると基本的にはダイバーシティーを潰して一律標準化、一律規格化する。ただ、このリニアの話で、メガリージョンの話、それとダイバーシティーの多様性の話というのは矛盾する概念だと思いますが、それを一律化するのとダイバーシティーを保つというのは、どうやって保たれるのか、アイデアを教えてください。

知事:
 基本的に矛盾しないと思います。矛盾するように利用してきただけなのです。それは東京が発展して日本の国力を発展するという、中央発展形態をずっと明治維新からとってきたためです。世界に伍するというのは日本の窓口からやろうとしたからです。窓口の後背地、ヒンターランドは温存するという思想が、おっかなびっくりの開国だったためそういう思想がありました。ヒンターランドの様子もどんどん出口に吸い取られました。世界標準のガラスがあり、田舎のヒンターランドにいた虫がね、ガラスにはべりついて世界標準を見てるというような図が見えます。このゲートウエーがあり、ここから外国だ、ここから国内だ、この国内は神国だと、こういうふうに思ってきた観念がありました。ここを結びつけると田舎の虫が中央へ来るだけだと、こういう観念がありますが、それは日本の国の考え方、国のあり方の考え方がもう少し違えば、そのツールの利用の仕方も考えが違ってくると思います。

 今までは、鉄道を東京集中のため、発展したのではと思っておられるからと思います。しかし実は鉄道が、東海道線ができた一番の原因は、それは日清戦争に備えるために東北の兵力を広島の宇品まで運ぶことが一番大きな目的でした。日露戦争では山陽線が宇品まで通っていました。それは井上勝という人が山県有朋と話し合い、東海道をつなげてやるというのが、山県有朋は中央線のほうが清国の艦砲射撃に遭わないから安全じゃないかと、こう主張したんだけど、いや、兵力輸送が大事ですからと。だからロシアとの関係でも、やはり宇品から旅順に兵隊が行ったそうです。東北の兵隊が北回りで行くか、船の容量が少ないため、下関、宇品から、田舎の兵隊を外国に送るための鉄道だったというのが歴史です。今はそういうことはないですが、東海道線のおかげで東海道が発達したと言われています。

 それで、新幹線があると、東京一極集中が加速されるという観念がありますが、東京一極集中となったのは別の観点だと思います。私は、関西が二極にならなかったのは、域内交通が十分じゃなかったからだと思っています。関東は日光から小田原まで、相互乗り入れによる直通運転がすごく発達した。関西はそれぞれ競っているから、あの鉄道には乗り入れないという鉄道、とりわけ大阪市営がブロックしたので関西の域内交通の発達が阻害されたと私は思います。 外国を見ていても、それぞれの地域の交通体系とか地域の発展をそれぞれの地域が主導すれば発展しています。東京が発展したのは、中央政府がやはり東京を主導して発展させて外国に向かおうという、中央集権の思想で経済体制をつくったからだと思うだけです。それは考えだけの話で、インフラのせいでは全くありません。国の発展の仕方の観念だと思います。だからダイバーシティーを育むように使うべきだというのが言いたいことであります。

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近鉄線の移設について

朝日新聞:
 近鉄との話は進んでますか。

知事:
 進んでません。

朝日新聞:
 進めるお気持ちはありますか。

知事:
 あります。

朝日新聞:
 見通しはどうですか。

知事:
 ありません。

奈良新聞:
 一応ボールは近鉄に投げた状態で返ってこないということですか。

知事:
 私の見方からは、そうです。

奈良新聞:
 帰ってこない状態がずっと続いているということですか。

知事:
 近鉄の西大寺駅の周辺の渋滞と、新大宮の踏切の渋滞をどのように、踏切渋滞と周辺渋滞をどのように考えておられるのかについて、今のままでいいと思っておられるようですが、それは渋滞を放置するというふうに私の方からは見えるわけです。改善する気がないですかということを追及していますが、いや、考えはないんだ、というふうに言っておられるように見えるので。考える気もないのかなと思っております。

毎日新聞:
 この状態が続くようであれば、部会は解散しますか。

知事:
 協議会ができて、担当が近鉄の考え方を出してもらうように迫っていると聞いていますが、まだかけらも出てこないと思っています。

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衆議院議員選挙について

朝日新聞:
 パールハーバーの話について、アメリカの陰謀だというのを前提でお話しされていましたが、本当にそうお考えですか。

知事:
 あんなことを言って、少しとんちんかんだったかなと思っています。太平洋戦争陰謀説と言われるような類いの論なんですが、昨日までの1週間(10月5日~10日)、日本アスペン研究所主催のアスペン・エグゼクティブ・セミナーを奈良でやってくれたんですが、そのテキストの最初が「世界と日本」という題と、最後が「デモクラシー」という題で、昔の古典を読もうというセミナーなんですが、その最初にジョージ・ケナンが出てきているんです。ジョージ・ケナンはとてもいい外交官ですが、彼は「回顧録」というのを書いていて、ロシア語を希望して外交官に採用され、リガ(ラトビア共和国の首都)とか、ソ連承認前のバルト三国の外交官になり、その中でロシアにも行ったんですが、そのときに大統領がルーズベルトにかわって、そのときの国務省東欧部東欧課というのがソ連懐疑論を随分上げてたんですが、FDR(ルーズベルト)に無視されたというのが随所に出てきます。しかしジョージ・ケナンが回顧録を書いたときは、FDRの歴史認識はもう絶対的な時代だったので、それと違うことを書くと歴史修正主義と言われるようなことになってたんですが、非常に落ちついて穏やかに書いておられます。ソ連の承認は反対だったこと、それとFDRの対応が国内世論向けだということを書いて、そういうテキストで今、勉強するような時代になってきているということが一つです。最近、ジョージ・ケナンが勉強会に入りましたので。

 それともう一つは、これ渡辺さんかな、日本の学者がフーバー元アメリカ大統領の「裏切られた自由」という、回顧録を訳している。フーバーは90歳ぐらいで死ぬんですが、それまで交渉に交渉を重ねてフーバー回顧録「裏切られた自由」という本を書いているんですね。これは、陰謀説と言われレッテルを張られるんですが、フランクリン・ルーズベルト批判の書であります。ケナンはソ連封じ込め論で有名な方ですが、ソ連、共産主義・コミンテルンを封じ込めておけばよかったのではないかというような論争がアメリカにあったわけなんです。だから今もロシアとアメリカとの関係を気にしたほうがいいんじゃないかというのは、そういう書物から来ている。

 それと、フーバーとジョージ・ケナンと、その当時のチャーチルの立ち位置、チャーチルやルーズベルトは勝者ということになって、彼の言った言葉が随分喧伝されるんですが、フーバーとかチェンバレンとか、とても低く評価された人の言葉はどういう意味だったのかということを、彼らは歴史検証をすごくしつこくするからね。日本の歴史検証、戦前の日本の政治検証というのがあまりないのではないかということも強く感じるんですが、この国難という言葉から、安倍さんの政治思想の中での日本の歴史検証というのはどうなっているのかなと、批判的じゃなく、いつも思うことではあります。

司会:
 よろしいでしょうか。 それでは、これで知事定例記者会見を終了させていただきます。ありがとうございました。

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(発言内容については、読みやすくするために、広報広聴課で編集しています。)

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