平成29年12月27日(水)知事定例記者会見

司会:
 お待たせいたしました。おはようございます。
 それでは、ただいまから知事定例記者会見を始めさせていただきます。

 本日は、まず平成29年県政の主な出来事につきまして知事からご発表いただいた後、今年の漢字について、色紙をお示しいただきながらご説明をお願いしたいと思っております。

 それでは、まず県政の主な出来事からお願いいたします。


県政のおもな出来事・今年の漢字


県政の主な出来事はこちらをご覧ください。(pdf 209KB)

知事:
 県政の主な出来事をこのような紙で書いています。カテゴリーに分けたということですが、その順番でどうこうというような編集はしておりません。赤字は編集の面から見た主な項目ということですが、私の目から見ると、主な項目がその種類が違うように思う、種類というのは、数字で分かるようなもの、最初の1の(7)「工場立地件数が平成29年上期で全国7位に」というのは、7位というのが値打ちがあると私どもは思うわけでありますが、これは数字でしか分からないような出来事ということです。そのようなものが幾つか出ております。

 もう一つは、事業の進捗というような意味で、例えば2の(3)「『大宮通り新ホテル・交流拠点事業』交流拠点施設、JWマリオットホテル奈良の工事が始まる」、ハード的になりますけれども、交流拠点施設というプロジェクトがここまで来たといったような、事業が始まるというような、その次の3の(1)「奈良県ドクターヘリを運航開始」というようなものもそのようなことであります。

 それをBタイプといたしましたら、Cタイプがあるなというふうに思いましたのは、4の(7)「奈良県が要望してきた地方消費税の清算基準見直しが決定」ですが、これは制度とかイベントというようなことですが、4の(7)は、これも制度ですから、目に見えない、目の前に何かいいものが立ち上がったというようなことではありませんが、すごく意味が大きいと私どもは思いますので、主な出来事に上げております。

 同じようなことは、その制度ができたとかイベントという意味では、イベントも入れますと、5の(4)「国民文化祭と全国障害者芸術・文化祭を全国初の一体開催、開会式には皇太子同妃両殿下が御臨席」というのは、制度とイベントを一緒にするとCタイプかなと思います。

 イベントの中で、5の(5)「フランス・ギメ東洋美術館での奈良の仏像展示が決定」と、これも今までにないことですので、私どもとしては主な出来事だと思います。これはまだ形に見えないものです。

 逆に、イベントという言い方は変ですけれども、マイナスの被害があったイベントという意味では、7の(2)「台風21号により県内で171億円の被害が発生、農林被害は激甚災害に指定」というのも、これは出来事によってこういう被害があったと、いい効果があるという逆に、すごい被害があったという意味のカテゴリーの分け方では、Cタイプが7の(2)と思います。

 そのようにA、B、Cを分けてみますと、赤字で書いてあるのをなぞらえますと、1の(7)は、数字で全国7位と。1の(8)「平成29年11月の県内の就業地別有効求人倍率は1.59倍で、調査開始以降の最高値を更新」は、これも注目しておりました数字です。2の(3)は、プロジェクトの進捗という意味でBタイプ。3の(1)もBタイプ。それから4の(3)「10年間のがん死亡率の減少幅が全国1位に」も、これは数字でAタイプ。それから4の(5)「健康寿命の女性の全国順位が28位から18位に上昇」も、数字だけですのでAタイプ。それから4の(6)「障害者雇用率が2年連続で全国1位に」は、数字で出ております関係でAタイプ。4の(7)は、制度・イベントということでCタイプ。5の(4)、(5)は、制度・イベントの欄でCタイプ。それから7の(2)台風21号もCタイプ。それから8の(2)「京奈和自動車道 大和御所道路(御所南IC~五條北IC間)が開通」は、プロジェクトの進捗ということでBタイプで、8の(3)「リニア早期実現に向け、沿線3府県と経済界が一致団結した決起大会を開催」もプロジェクト絡みですのでBタイプと思います。

 それから、9の(3)「中和幹線沿道の屋外広告景観向上に関する協定を沿道5市町と締結」、これもイベントというか、これは少し調子よくカテゴリーしましたが、9の(3)はどちらに入れるのかなと。締結ということはCタイプかもしれないんだけれども、景観をよくするというのはプロジェクトなんです。だからプロジェクトのBタイプになるのかなと。景観をよくする、道路をよくするという同じで、そういうタイプで、そのうちの工事が始まったとか、協議を締結したというのでBタイプにしたいと思います。10の(2)「『第8回東アジア地方政府会合』を中国・四川省成都市で開催」は行事なのでCタイプと、そんなふうに思ってみました。

 これは、そう見ますと、数字で出た効果というものの主な出来事で、結構あるんだなと思っております。Bタイプは、道路が開通したとか、ホテルができたとか、ホテルの工事が始まったとか、そのようなタイプで、それも割と進捗ありますが、時間がかかる中での今年の出来事ですので、Bタイプが随分出る時と、余り出ない時があるんだなと。Cタイプは、イベント、制度が出るのはなかなかないんですが、地方消費税のような制度というのはなかなか毎年出るものではありませんので、制度改正というのは大きな事柄だと思いますが、イベントはいろんな形で出ますのでCタイプと、そのように思っております。

 総括いたしますと、私の感じでは、今年は、数字の成果があるのが目立ったな、というようなイメージです。雑駁なことですが、この出来事の感想というのは、以上です。

司会:
 ありがとうございました。
 それでは、続きまして、ことしの漢字を知事からお示しいただければと思います。

知事:
 今年の漢字ですが、何だと思われますか、当たるかな、自分で喜んでいてはいけませんが、この字です。これは「譲」、譲るということで、皆さん、すぐお察しだと思いますが、天皇陛下の譲位という大変歴史的な出来事が決まったという意味で、「譲」という字に、ことしのすごいエポックメーキングをこのような字で、譲られるという字を当てました。

 譲位という、天皇位を譲られるということはすごく大きなこと、日本の歴史の中でも大きなことだと私は思います。それは何百年に1度の出来事のように思いますので、そのように思って、この「譲」、譲るという意味、漢字を使いました。

 譲るは、立場を譲るとか、意見を譲るとか、いろんな意味で謙譲の「譲」でもありますので、一歩下がるとか、そういう意味もありますので、非常に奥ゆかしい言葉のようにも印象があります。それも大事ですけれども、今年の言葉としては、その譲位の「譲」というのが一番私の気持ちで強力、強烈な意味がありましたので、このような字にさせていただきました。以上です。

司会:
 ありがとうございました。
 それでは、県政の主な出来事と、今年の漢字に対するご質問をよろしくお願いいたします。

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質疑応答

県政のおもな出来事・今年の漢字

奈良テレビ:
 今年の漢字と奈良県政の今年1年を関連づけると、どのようなことが言えるでしょうか。

知事:
 今年の漢字は、天皇家のことですが、今年は国文祭で、皇室行事としては皇太子同妃両殿下の行啓がございました。両陛下は去年お越しになりましたのがとても印象に残っていますが、(今年の県政には)あまり関係ないですね。今年の奈良県の行事と国の行事とはあまり関係ないですが、私の気持ちの中でこうなっているということなのかもしれません。

奈良テレビ:
 改めて今年1年の県政を、今ざっと出来事を出していただいたんですが、振り返っていかがですか。

知事:
 県政ですね。今年、私が知事になって10年たったという感じです。県営プール跡地のJWマリオットホテルの工事がいよいよ始まったという出来事が出ていますが、就任直後から取りかかって、やっと工事が始まったと、10年越し、10年がかりの出来事で、私の県政という立場から見るとそのような思いがします。だからその意味で、10年がかりの出来事がちょっと形になってきたかなというのが、主観的な気持ちではとても強い感じがします。

 今年の出来事には入っていませんが、来年の5月に病院ができます。これも10年がかりの「医療をよくする」という思いを込めた出来事ですので、10年振り返ってというのは変なことで、そんなに振り返らなくても毎年毎年努力するしかないわけですが、時間がかかるプロジェクトが形になってきたというのが少し出てきていますので、主観的な思いではそういう点に振り返りが強く思います。

 それから、工場立地も、ずっとこの数字を上げるのに10年がかりだったなと思っています。就任してから、毎年20件を超えるようになりまして、この工場立地件数20件維持ということを努めてきて、そう目標にしてきたのが、全国ランク7位というこのような数字であらわれてきたというのがうれしいことです。工場立地件数が年々20件から25件、26件、この全国7位では半期で20件というところになりましたので、10年前の倍の数になっているわけですが、いろんな努力がこのような数字で実ったのは大変うれしいことです。

 工場立地とか経済活性化をやってきているので、その次の有効求人倍率も全国平均を超えるというのは、奈良県では珍しいことですので、関西全体は低いんですけど、滋賀と肩を並べ随分トップクラスを今走っているというのはうれしいことです。そのような流れの中での、この1年の振り返りというふうに思ってしまいます。

 そういう意味で、時間がかかりましたが実ったという地方消費税の清算基準も、これは何年前から言い出したのかな、少なくとも6、7年前、民主党政権の前からもう言い出していましたので、それこそ10年近く前かな、地方法人譲与税反対と知事会が言ったのが記事になって、そのころのことを思うと様変わりしたなと思って、今度知事会が賛成してくれましたので、そういう意味で10年近くなると、その環境、意識、時代というのは、大げさかもしれませんが、少しずつ変わる面もあるのかなという思いがします。いいほうに、いいほうにという努力をしないといけないなと。いいほうにという努力は、一発でできないし、何十発も努力を踏み固めてやっと一つ旗が出るというような感じです。

産経新聞:
 知事の中で印象的な漢字は「譲」ということですが、県政の1年間を振り返ったときに、去年は「学」という字を出されたかなと思います。県政の1年間を漢字であらわすと、何か思い浮かばれるものはありますか。

知事:
 何か字であらわすことも実は考えたんですが、今みたいな県政のことよりも、この「譲」のほうが圧倒的に今年の字というので頭に浮かんでしまったので、やはり奈良県にとって天皇陛下はとても関係が深いですし、個人的と言ったら失礼ですが、主観的にも天皇皇后両陛下が奈良へお越しになる回数はとても多くて、お目にかかることも多く、印象的なので、どうしてもこの字に、「譲」というのは「こだわらない」という意味もあるんですが、こだわってしまいました。

 そのように(県政のおもな出来事と)比較して、字ということで言われると、字のほうは偏ってしまいますので、2つ一緒にプレゼンするのは少しまずかったんですが、こちらの(県政を振り反っての)字はなかなか思いつかないですね。主な出来事もばらばらだしというような感じでですね。県政の字というのは、マイナーですからあまり固執されずに、何かいい字があればとは思ったんですが、ちょっと思い浮かびませんでした。今もすぐにはちょっと、考えながらこんなことをぐじゃぐじゃ言ってますが、ちょっとすぐに思い浮かばないような気がします。

日経新聞:
 知事、日経新聞の浜部ですけども、東アジア地方政府会合が初の海外開催、これも大事なことだと思うんですが、今後例えば韓国、台湾とかも海外持ち回りでやるのか、やっぱりまた奈良に戻すのか、これは知事、どういうお考えをお持ちでしょうか。

知事:
 東アジア地方政府会合は、日経新聞の大阪の局長が中国通でおられて、随分応援していただきました。「大機小機」というコラムで、奈良は日本のへそだと、この東アジア地方政府会合のことを引用して書いていただいたんですね。その大阪局長が執筆者と聞きましたが、それを見て、亡くなられた塩川正十郎さんから、「日本のへそとはうまく言ってあるな、『大機小機』に書いてあったぞ」という手紙をいただきました。そういうふうに注目されるようなことをしているんだなということで、大変勇気づけられたように思います。

 実はEU議会の中には、ローカルコングレスのミーティングがあります。東アジア地方政府会合は、それをまねてきたわけで、ローカルオーソリティーとローカルコングレスのミーティングということで、それを、欧州議会は国の集まりが前提でありますけれども、地方政府の集まりをわざわざEUの中に作っているのは一つおもしろいなと思って、東アジアでも国同士は大変けんかするけれども、地方同士はそうけんかしなくて学び合うことができるんじゃないかと。それはEUの知恵かなと思って、始めたわけです。

 東アジアは、とりわけ国同士の衝突が激しくなってきていますので、それを緩和しようというほどの大それた志はないわけですが、しかし、その地方政府同士が大変共通項、共通の課題が多いということが、やってわかってきましたので、ここまで続けられてよかったなと思いますが、当初やり始めたときは、県という立場で、なぜこんな国際会議をするのかという意見が、議会でも出ておりました。それは昔の東アジアの交流、唐グローバルセンター、長安グローバルセンターの中で、奈良が一つの端っこの一翼を担ったという歴史があり、それは奈良というところに政権があったからという歴史を踏まえて、東アジアの地方の集まりを日本から申し出るのは奈良でもいいじゃないかという理屈で言ったら、中央の外務省関係の方も賛同していただいて、やはり奈良が言うのは歴史を踏まえていいんじゃないかとおっしゃって、それが各国の今の地方政府の担当もそのような認識がやはりおありになるようで、続いてきているんだと思います。で、奈良がこうやって主催するのに違和感がないですね。奈良は、昔の状況からすれば、唐のグローバルセンターの文明の恩恵を存分に受けたというのを感謝して(主催)してるんですよということを、もう随分アピールしてきました。感謝の気持ちでこういうことをさせていただいているんですよとアピールしてきました。その奈良県の意思が、だんだん関係地方政府に浸透してきているように思います。

 その一つが、成都でやってもいいよと。中国の思惑といいますか、やはり世界の中国ということをアピールしたいということは、これは一帯一路、習近平さんの会議と近接していましたので、両方出ましたが、本当に似たような雰囲気の会議でした。だからそのような中で、このイニシアチブをとったというのが、多少先進・先駆的な意味があろうかと思います。

 これからのことですが、そういう趣旨ですので、奈良しかできないわけではありませんので、欧州の地方政府議会会合、ローカルオーソリティー・コングレスミーティングというのがストラスブルグ(フランス)の欧州議会の中にその本拠があるわけですが、東アジアでは欧州議会というような組織はまだなく、上海機構や、中国主導などいろんなのがありますので、東アジアはEUのようにまだ落ちついていない中での今の努力ですので、本拠というほどのことはありません。もしそういう組織ができるなら、東アジア地方政府機構というものができるなら、奈良は手を挙げたいなと思いますが、コンベンションホールができたりすると、ベルギーのブリュッセルと(フランスの)ストラスブルグ(二つとも「欧州の首都」と呼ばれる都市で、EUの拠点都市の一つ)があるように、大きな国同士の、ブリュッセルのようにはなれませんが、ストラスブルグのような立場で手を挙げることができたらその節はと思いますが、そういう兆しもまだありませんので、地方政府が集まって一緒に仲よく勉強しようというようなことを続けるのが趣旨です。そういう趣旨を踏まえて中国の成都でそういうことをして、長安や西安もやりたいと手を挙げていただいた経緯があります。

 陝西省の西安は、唐のそういうグローバルセンターのことを思うと、長安はもう奈良よりもはるかに歴史的に手を挙げていただく値打ちはあるように思いますが、西安は手を挙げましたが、それがなくなって成都になった。もう一つは、百済の都の忠清南道が興味を持ってやろうかなというふうに言っていただいていますが、忠清南道は少し離れているのと小さいなというふうに言っておられます。韓国で最初にやるならソウル市でやってくれるといいんですが、という動きがございます。

 そのような状況ですので、持ち回りではないんですが、各地での会合、それから農業の会合や観光の会合というのは分科会という形でほうぼうの都市で始まっていますので、分散的に会合が重なればという希望は強く持っております。

毎日新聞:
 この一覧表には載ってないんですが、先日、国勢調査に基づく県外就業率がずっとワーストワンでしたが、2位になったと。ここにある工場立地件数とか就業地別の有効求人倍率と何かリンクするような気もするんですが、長年ずっとワーストワンだったのが2位になったのは、どういう要因あるいは背景がというふうに見られていますか。

知事:
 奈良は人口が40年ほど前に急増しました。人口が80万人の県が60万人も30年間にふえたんです。140万人になって、今137万人。これは急速人口減少圏に入り、これはベッドタウンだからということです。

 ベッドタウンの特徴は、ベッドタウン内には働く場がないから、ベッドタウン外に行くと。それが奈良では県外であったということです。埼玉も県外であったということです。それは大きな働く場がある大都市の近辺には起こり得る現象ですが、そうするとベッドタウンの困ることは、ご子息たちの働く場が用意されてないということです。するとせっかく家を買ったけど、子供がいなくなって、あとはかごの鳥になってしまい、年寄りだけが残されるということが各地で起こりますが、それはベッドタウンをつくったらそうなるということがようやく現象的にわかってきました。

 それを回復するために、地域創生というかけ声はありますけれども、若者の働く場をつくるというのは、これは大きなことであると思います。それは少子化対策にもつながっていると思います。地方で働く場をつくるというのに、一生懸命にならなきゃいけない。奈良県はとりわけならなきゃいけないということで、働く場は観光であれ、あるいは工場であれ、研究所であれ、できる限りのことをしようということので努力して、工場の立地というのは一つの手法でありますが、どちらかというと誘致は手っ取り早い手法でありました。有効求人倍率にも関係していると思いますが、この10年間の工場立地件数が280件を超えております、280工場。1,000平米以上の工場が280。すると、就職の働き場の創出というのは、3,800人ぐらいと調査ではなっております、これから雇われるのを含めましてですね。

 3,800人というのは、年間の新規のリクルートが3万人ぐらいの県なんですね。すると1割が新規の工場創出で賄われるということは、その3,800人が県外に行かないで県内で就職できるということは確実です。その間、工場がなくなって逃げていくのももちろんあるわけで、ネットでありますけれども、それがないともっと減るわけです。その3,800人の雇用創出を県外じゃなく県内で確保できるということは確実であったわけで、この10年間の努力でしたので、それが一つ、今おっしゃったような、県外就業率のランク低下というのにも影響しているような気はします。

 もう少し数字を追うと、ランクは埼玉がトップであると、そういう構造的なのは相変わらずですが、埼玉はそういうことをしなくても全体としては、基盤の大きな県ですが、奈良県は基盤自身が小さいというハンデがありますので、県内就業の場を確保というのは、やはりすごく大きな課題、ターゲットだと思っています。関係あるかもということは、今は、そんな感じですが、また少し調べます。

毎日新聞:
 そうすると、今後も引き続きそういった誘致など、働く場をつくるということに力を入れていかれるというお考えですか。

知事:
 それは、入れていかなければいけないと思っています。

司会:
 よろしいでしょうか。
 それでは、発表案件の質問につきましてはよろしいでしょうか。
 それでは、その他の質問を含めましてよろしくお願いいたします。

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関空・リニア接続新幹線構想について

奈良新聞:
 7月の定例記者会見の時に、メガリージョンとリニアの関係の研究会のお誘いを受けて、この間、発表されたと聞いています。詳細を改めてご紹介いただけたらと思います。

知事:
 メガリージョンの勉強会があるということを、当時の国土交通省の国土政策局長、藤井さんが言ってこられて、オブザーバー、メンバーに入りなさいと、こうお誘いが来た。メンバーに入るのは良いけれども、国土形成についてはいろいろ勉強をしてきたし、一家言あるんですと言ったら、では、プレゼンしなさいということがもう夏頃にだったのですが、それが多少遅れていて、紆余曲折があって、この12月22日に発表することになりました。私としては力を入れたプレゼンです。

 「スーパー・メガリージョンとリニア中央新幹線が国土形成に与える影響を地方の視点で考える」というタイトルです。スーパー・メガリージョンがとても注目されていますが、広大な地域に大都市、中小都市が連続している、衛星で見ると光が連なっている地域、それとリニア中央新幹線を結びつけるという勉強会なんで、私の言い方をすれば、リニア中央新幹線は山の中、田舎を通ると。スーパー・メガリージョンの真ん中を通るリニアじゃないと、こういうことから実は始まっているんです。だから地方の視点で、地方と大都市の関係、働き方関係などを展開しております。1つは、3帯3路の沿線を比較しておりますが、北陸新幹線、中央新幹線、東海道新幹線の、3帯3路の比較ということをしております。

 それから、日本の発展形態ということから展開しております。日本の発展形態は、開国と鎖国を繰り返した。開国をしたのは奈良時代と明治時代、それと今ということで、すぐに鎖国してしまった。京都に都がうつって鎖国をしたというような、ほとんど鎖国という状態でしたというような歴史の繰り返し。今は、常時開国をしていないとグローバル世界につき合えないという、常時開放体制の中での内発的発展形態をどう探るかというようなテーマでしております。

 今の常時開国体制の大きな特徴は、インバウンドの波が押し寄せてくる。観光だけではなく、ビジネスの情報や人も押し寄せてくる。それをどう地方の奥地まで取り入れて、内なる国際化、地方の国際化をどうするのか。国際化は大都市だけという国のやり方はもう通用しないというテーマで、内陸の国際化、制度の国際化、精神の国際化にどう向き合うのかといったような、少し哲学的なテーマとしております。するとインバウンドの観光とインバウンドの需要を、どう日本は開国体制の中で受けとめるかということを、まちの交通の中ですると、交通の結節性を確保して日本国内へ均てんするということが必要でしょうと。そういう意識の国土形成が必要で、そこで関西国際空港とリニア中央新幹線を奈良で結びつけようという構想を、ここで言ったわけです。

 さわりを簡単に申し上げますと、関西国際空港から、例えば高野山のある橋本、それから五條、御所、高田に駅を作る。これは資料には書いてないんで口頭で言いました。そして、奈良市附近でリニアに結びつける。この間、約80キロの単線・狭軌の新幹線であります。200キロ程度出るので、約30分で関西国際空港から奈良市附近に到達する新幹線構想ということです。そして、工事費が約5,000億ということを口で申し上げました。

 その整備の仕方は、今みたいなプレゼンの中で入れて出した。中央で新幹線構想をデビューさせましたが、余り注目されませんで、たくさんの資料を出したもんだから、15分間のプレゼンで、25分ぐらいプレゼンをさせていただきました。いろいろなそういう経緯があってプレゼンさせていただき、私としては少し力を入れてプレゼン資料を作りました。

 25日、県・市町村サミットがあって、時事通信の記者さんだけ来られましたが、この資料を披露して、今言ったようなことを、関空・リニア接続新幹線構想を発表させていただきました。そして、今日、年内最後の記者会見があるので、奈良新聞の記者さんの質問があったという経緯です。注目されないまま埋もれてしまうような構想であるかもしれませんが。

 それで、このメガリージョンの中で言ったわけでありますけれども、これから奈良県のインバウンド観光戦略20年ビジョンというものを策定すると県・市町村サミットで言いましたが、20年というのは、リニア中央新幹線の奈良市附近駅が20年後にできると、この20年間で大きなゲートウェーができる。それから20年以内に京奈和自動車道が近畿の環状道の一角として完成する。3,000億の工事が残っておりますけれども、今の高田・橿原の高架化と、大和北区間、今までの奈良インター付近と、そこからトンネルということで、木津インターまで出れば京都の高速道路に接続する、そのネクスコ化というものを要求しておりますが、第二阪奈のネクスコと一体的にネクスコ化、両方ネクスコ化してくださいといって要求しておりますが、第二阪奈のネクスコ化は今正式に決められましたので、この京奈和自動車道のネクスコ化は来年、うまくいけば決まるかもしれない。

 そういたしますと、工期が大体確実になってきますので、京奈和自動車道全通というのが20年以内には確立するので、その2つは確実なゲートウェー。3つ目のゲートウェーがこの関西国際空港からリニア中央新幹線に接続する新幹線、3つのゲートウェーが新たに奈良県にとってできる。これは工場立地だけではなく、ビジネス客の往来、研究所、事業所のビジネス・産業面ではそのような効果が期待できますし、観光面でも大きな需要が期待できます。それに向けて地域開発を、地域整備をしましょうという呼びかけを市町村サミットでしたわけです。

 私にとってはとても大事な虎の子構想、虎の子ビジョンですが、そのような経緯を踏まえて言いました。

日経新聞:
 今の新幹線構想は、名称は何新幹線と名づけられたんですか。

知事:
 関西国際空港・リニア中央新幹線接続新幹線構想です。縮めたら、関空・リニア接続新幹線構想と言っております。

日経新聞:
 これは既存の東海道新幹線や北陸新幹線とは全く別の路線ですか。

知事:
 全く別の路線ですね。

日経新聞:
 以前、ちらっとおっしゃった、四国新幹線と結びつけることともまた違いますか。

知事:
 違うものです。

日経新聞:
 独立した、関西国際空港と奈良だけの新幹線というイメージですか。

知事:
 関西国際空港とリニア中央新幹線の接続だけの新幹線。しかもスーパー特急という、狭軌の新幹線という構想であります。すると、狭軌の新幹線だと、トンネルとか標準軌用でできるんですが、関西国際空港へわたるのは狭軌、今、南海とJRが通っておりますのは狭軌ですので、そこを利用させてもらおうと、トンネルの整備は要らないからということで、狭軌でも200キロ出るんです。200キロ出るので、そうしますと、ずっと作りますと、関西本線へも乗り込めるんです。線路は弱いですが、奈良線で京都まで行こうと思ったら行けます、その先滋賀まで行こうと思ったら行けます。それと、木津から、学研都市線、片町線でずっと京都の近くまで行けますといったような、狭軌新幹線だから。新幹線がそのまま在来線に入るというのは、昔構想していたのですが、実現しなかったんですけれども、ここでどうだろうかという構想で打ち出しました。

日経新聞:
 通る都道府県は、和歌山と奈良だけですか。

知事:
 そうです。大阪は駅がないから、大阪はほとんど金剛山の中をトンネルで通ります。

日経新聞:
 大阪府も通るんですね。

知事:
 通ります。

日経新聞:
 和歌山、大阪、奈良。

知事:
 そうですね。大阪、和歌山、奈良。和歌山県とは内々で話はしております。

日経新聞:
 前におっしゃっていた北陸新幹線の南伸というのとはまた別の話なのですか。

知事:
 ええ、今度は北伸ですね、南朝の北伸です。

NHK:
 和歌山と内々で話をされているということは、これはもう一案ということではなくて、県の事業にしていきたいということでしょうか。

知事:
 一緒にしませんかということでお知らせしているということです。

NHK:
 今後はどう進めていかれますか。具体化していくんですか。

知事:
 これからこのように発表を奈良県としてさせてもらいますということで、話しております。発表して、あと県内の政治家の皆さんにも、県会議員の皆さんにまだ何も言ってないもんですから、荒井が勝手なことを言っているんだというステータスにまだありますけれども、和歌山県にもこういう構想で一緒にしませんかということで呼びかけをしておりますので、うまく進めば和歌山県と奈良県の期成同盟会を作って、陳情母体を作るということになると思いますが、うまくいけばですね。年明けにでも期成同盟会のようなものができたらいいなとは思っております。それはまだこれからであります。

NHK:
 和歌山は、いいねと言っている。

知事:
 まだ、はっきりと、言ったと言うと、ちょっと和歌山県が、まだ関係の県会議員とか、奈良県も同じですが、国会議員に説明されてないと聞いておりますので、荒井がこの駅名とか事業の概要や、橋本、五條とか言うのは、資料には書いてないんです。それは荒井が勝手に口走ったと、こういうことになっておりますので。

NHK:
 期成同盟会になれば、沿線自治体も協力が必要だと思いますが、この前発表された時はどういう反応がありましたか。

知事:
 実は五條、御所、高田には内々に相談しております。沿線自治体は大歓迎です。

奈良新聞:
 和歌山と奈良、両県の知事の間ではもう大体お話は了解ということですか。

知事:
 了解というと少し和歌山の知事、その周りとの調整があるので私が怒られると思いますが、話はさせていただいておりますという程度です。実態は、こういうアイデアは賛成ですというようなご意向だと思っております。知事ご自身はご賛成していただいているんじゃないかと勝手に思っております。勝手に思っているという形にさせていただきたいと思います。県の内部のご了解作業が要ると思います。奈良県でもまだ要るんですが、まだ荒井が勝手に言ったというステータスのペーパーです。

 橋本は、高野山があるので大きな意味があると思うんですけれども、関西空港から橋本までは1時間14分かかっているんですが、この新幹線がぴゅっと来ると約14分で来るんです。約1時間短縮なので、関空のインバウンドを高野山、今でも多いんですけれども、高野山に取り込むというのは、和歌山の北にとってはとても大きなことだということはわかっていただいていると思います。

 奈良の五條、御所、高田のような、高田は、まほろば線の奈良市と桜井、橿原を結んで高田に行くまほろば線の起終点でありますので、そのリニアと関西国際空港との間のまほろば線というのは、観光の域内構想の大きな主役に、奈良県にとっては大きな主役になる可能性があると考えております。だから高田が中和・東部のゲートウェー、インバウンドのゲートウェーになる。御所は洞川とか天川とかに309号という道路がありますが、それが走る大きなゲートウェー。五條は168、十津川とかに行くゲートウェーでありますので、とても大きなその新幹線のゲートウェーになるという構想をしております。だからインバウンド戦略20年ビジョンに大きく位置づけて、実現を目指して、実現できれば京奈和自動車道と、この関空・リニア接続新幹線のゲートウェーの機能が南部・東部に均てんするという戦略で努力ができたらと思っております。

奈良新聞:
 関連してなんですけれども、その構想は和歌山、関西国際空港から橋本、五條、御所、高田、そして高田から奈良市附近駅。関空入れたら、計5つの駅ですか。

知事:
 関空、橋本、五條、御所、高田、それから奈良市附近。6つの駅です。

奈良新聞:
 橋本市にも、もちろん説明はされている。

知事:
 説明は事実上しております。

朝日新聞:
 アイデアは会見の場でいろいろ出てくるんですけれども、このアイデアをどこの担当がメインでされて、次はいつまでにこれをして、いつまでにこれをするんだというような譲れない来年の目標、来年には限りませんが、今後これぐらいをめどにこうやっていくという、事務方の方々もいらっしゃるので、宣言をしてもらえれば刺激にもなります。

知事:
 ありがとうございます。来年の、これをデビューさせていただいたという段階で、あとは陳情母体、期成同盟会のようなものを作らないといけないと思います。それで、期成同盟会のようなものを作って陳情、これは国に、補助金がある程度ないともちませんので、期成同盟会を作らないといけない。それは和歌山県・奈良県沿線自治体というようなイメージであります。

 それともう一つは、これと関係してインバウンドの観光戦略を、これは来ればよりいいのですが、来なくても必要なことなので、インバウンド観光戦略の協議会を県内で作ろうと思っています。このプロジェクト、プロパーについては、先の長い話ですけれども、20年後にリニア中央新幹線が来るわけでありますけれども、それに間に合うようにという願いはあります。そういたしますと、リニア中央新幹線の工事が10年後に始まる。10年後に始まる時には、もう駅の位置が決まって始まりますので、そのリニア中央新幹線は奈良市附近駅に接続するという、具体的な接続駅の目標が出てくる。それを目指して10年後に工事が開始できたらと思いますが、やはりスキームを作らなければ、補助金の主体が、補助金がどこで出るのか、誰が運営主体になるのかといったようなスキームの、詳しくは申し上げませんでしたが、そのスキームの運営の概要もちょっと多少の知恵を凝らして考えております。

 運営主体は、上下分離で、施設保有主体と運営主体が別で、運営主体が、これ主な観光需要の路線ですので、ある程度の需要がないと経費も賄えない。経費が賄えないと沿線自治体、県も含めて補填をしよう。それより上回った場合には協力金で返してもらおうというような線を引いて、その返してもらったものは原資の償還に充てるといったようなスキームを考えているところです。そのようなスキームの同意を沿線自治体で期成同盟会の結成と内部固めというので要ると思います。それは来年の大きな目標です。体制固めというのが来年の大きな目標です。

 10年後の工事開始を目指して、運営主体の獲得、その前に補助金の獲得というようなことが、これ何年もかかると思いますが、ホテルの誘致や病院の誘致も10年がかりでしたので、そのぐらいのスパンのことを志してやれたらといったような、長い大きなプロジェクトというような感じです。

 来年は体制づくりというのが大きなことだと思います。担当は、地域交通課になります。

朝日新聞:
 そのアイデアですが、東京での反応はどうだったのですか、お役所サイドです。

知事:
 構想の検討会では、反応はさっぱりだった。これだけたくさんなので、これをメインでこれを言いに行ったという体(てい)にしてませんので、今後のメガリージョンのあり方の大きな文化的な検討会のような中での発表ですので、あまり奈良の構想をアピールするという設定ではないと自覚しておりました。この資料も最後のほうにちょっとつけたということですので、反応は全くありませんでした。記事も出ませんでした。

NHK:
 改めて、もしこれができたら、こんなふうに地域が活性化する、何かこんなふうになったらいいなという期待を教えていただけますか。

知事:
 奈良県は、少し閉じこもっていた、離れた陸のアイランドみたいな、変な言い方ですが、そのゲートウェー、玄関口があまり整備されませんでした。玄関口が、リニア中央新幹線という玄関口、奈良市附近駅という玄関口、それと京奈和自動車道の奈良インターとか各インター、京都からずっと環状で来る玄関口、これができる関西国際空港から今の6つの駅、関西国際空港を除いた5つの駅の、1つは和歌山ですが、奈良県に4つの玄関口ができます。それから展開する。

 玄関口ができたら玄関ができるわけで、玄関口を作らないといけない。これは駅前の整備のようなイメージ。そこから来ていただくと応接間を作らなきゃいけない。おもてなしの食堂を作らなきゃいけない。その家にくつろいでいただくための、来ていただく居間のようなものを作らなきゃいけないというのは、家になぞらえますと観光客が来られても、玄関のない奈良県であったように思いますので、この身近な玄関ができるというのが大きい、その玄関口を作ろう、玄関口から入ってくつろげる応接間を作ろう、応接間もない、それから来ていただける食堂を作る。来ていただいてくつろげる居間を作ろうといったようなイメージで各地の沿線自治体と協働して、インバウンド観光戦略20年ビジョンを実現できたらと思っています。抽象的ですが、そんなイメージですね。

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文化財保存業務の知事部局への移管について

共同通信:
 奈良新聞の一面に、これからの文化財保護行政において、現在の県教委の文化財保存業務を知事部局に移すということが26日に正式に表明されましたが、それは具体的に文化審議会などで4つの要請というのがありますが、どのようにそれに対応されていくのか、お聞かせください。

知事:
 文化財保存行政の見直しが国のほうで行われまして、その特別部会に参加しプレゼンいたしました。国のほうの文化財保存行政の大きな柱は、活用と保存を両立させることです。保存に偏ってきているのを活用も一緒にしようということです。

 これは文化財だけなく、美術館の持っているだけでなく展示発信をうまくしないと日本はだめだと言っていることと共通します。学芸員はちゃんと説明しなさいよと、デービッド・アトキンソンが言っているのと、国の動きが一緒になっているように思います。そういう中で、保存と活用について、とりわけ法律で文化財保存課が教育委員会しか設置できないのを、知事部局に設置できるようにしようという法律改正の検討が中央でありました。賛成か反対か、その所見を述べる機会があり、3回ほどあって、私が行きました。ほかの県の市町村長さんも来られまして、大体皆、賛成でした。保存は大事だけども、活用も調和させてやりたいということです。

 きのう、そのようなことを受けて、教育委員会の文化財保存課が県と一緒になって、県の部局にして活用と保存が車の両輪としてできないかという県の構想に、奈良県の青柳さんが座長を務めていただいて、そのように方針を出していただいたという経緯がございます。

 保存と活用を車の両輪とはいえ、なかなか現実に難しいのではないかと言われる方もいますが、県としては文化振興大綱というのをつくれるようになりました。文化振興大綱の中で文化財の保存と活用というのは大きなテーマです。県がつくった文化財の保存と活用の、保存の部分は書いてありません。それは文化財保存行政は教育委員会だから、県の大綱の中には書いていません。今度は保存も含めて書けることになるのではと思っております。保存と活用の保存も、県の知事が策定する文化振興大綱の中の大きな要素だと、国の中央でも言いました。

 もう一つは、前の文化長官である青柳さんや、イタリアあるいはその影響を受けているユネスコが、保存のやり方が随分変わってきていると、こう言っておられました。

 その中での保存と活用のメリットは、今みたいに文化振興大綱の中に保存と活用を車の両輪として書けるということと、やはり直接的に予算を積極的につけられる、保存もまとめて出てきて承認するということです。県の予算の審議の中で具体的にできます。きのう県の試みの中で大変青柳さん始めみんなに評価されましたのは、データベースをつくるのを大きな仕事にしようということです。今、日本の文化財の保存といいながら、文化財の所在というのがわからない、アーカイブズがないこんな国は珍しいと叫んでおられました。アーカイブズをつくっておかなきゃと、こうも青柳さんは叫んでおられました。奈良県は県の部局に移したらデータベースをつくるのを大きな仕事にしようということをその案の中で言っております。これは県でやる大きな事業だと思います。

 教育委員会の保存課でもできないことはないですが、活用と一緒にデータベースをつくらないと、そんなデータばっかりとって、文化財は私有物ばかりでありますので、そんなデータベースの情報なんかいらないと言われている風土もあります。私有物ばかりの文化財のデータベースというのは、地籍調査と同じようになかなか難しい面がありました。しかしそれを保存と活用ということを両建てにしてデータベースをつくろうということ、知事部局でやろうというのが大きな事業で、これは大変評価していただきました。

共同通信:
 知事部局に移すことのメリットはあると思います。もともと教委に置かれていたのは政治的中立性とか専門性の確保というのがあったと思います、それが知事部局に移ることによって揺るがされるようなことはないんでしょうか。

知事:
 ないと思います。それをないようにしようということです。あると言っておられる方もおられますが、それは今までの構造からすれば、国の文科省自身がそう言っておられます。専門性と称してタコつぼに入る専門調査官が多いということは、認識されています。専門性の持った人が専門性を持って外の人と交流しろよということです。これは大きな反省があって、高松塚の古墳の修復、専門性があると称して、実は高松塚の壁画の専門性が発揮されないで、剥奪劣化しました。

 当時の朝日新聞には、高松塚は人災であるという社説が出た。人災というのは、専門性があると称して押しかけて、専門性のある処方箋を書かなかった、人災であると書いていました。参議院議員時代、それを拡大コピーにして机の前に置いていました。それが専門性の弊害だと、にせ専門性の弊害だったと私は思いました。本当の専門性というのは、もう少し広くとらなきゃいけないというのが文化庁、文科省、とりわけ官邸はそのように言っておられるようであります。今の文化財行政はひどいと。それを直そうというのが大きな動きですので大変いいことだと私は思います。今の専門性の壁に塗りたくられて囲われているのを、壁を取り除くという大きな意味があります。

共同通信:
 専門性の閉鎖性というのがあると思います。壁に囲われている、なかなかその内実が見えないというのがあると思いますが、それは知事部局に移したら、よりプロセスをオープンにするということですか。

知事:
 そうですね、プロセスのオープン、トランスペアランシーというのはとても大きいです。

 専門家と称して何してるかわからなかったというのが、高松塚の人災という社説の根拠になっていたと思います。プロセスを公開すると、いろんな意見が出てきます。そのプロセスを、デジタルで公開すると、世界の専門家がそこに意見を言います。青柳さんはそれを言うんです。こんなふうな状況なので、どう困っているのかということをデータベースで出すと、世界の専門家、関心ある人は、そんな値打ちのあるものをどうしてそうしているのか、こうしたらという意見がものすごく集まってくるそうです。限られたポストの専門性から、広く専門性を募集するというやり方に変えようという強い意思が文化庁と文科省にあるように思いましたので、それは大賛成です。

 地域の知事部局に任すと、専門性が脆弱にならないかという形の反対があります。それは文化財保存審議会というのを充実させるということで、ある面その解決ができるのと、今おっしゃったプロセスの公開性で随分よくなると思います。とりわけデジタルでプロセスを公開すると、いろんなその分野の専門家がたくさん意見を言っていただくのは、今の時代でこそできる手法だというふうに青柳さんはいつも言っておられます。そのようなことが奈良で先駆的に実験、実現できたらと思います。

共同通信:
 現在も審議会はありますが、その審議会の機能を、またその知事部局に移すのかもしれませんが、具体的にどのように強化する方針ですか。

知事:
 審議会はいろんな意見、審議会が最終的にうんと言わないと物は決まらないぐらい強い権限があります。その審議会自身の専門性を高めるというのが大事かと思います。権限はすごくあります。それは行政をこえた審議会、第三者の目というのがとても大きいです。例えば第三者の目が固まった小さな第三者じゃなしに、大きな第三者というふうに、そのオープンも一つです。それはどんな人でも審議会というわけにいかないから、専門性がこういうことにあるということをたくさんの具体的な意見を寄せていただくのが何よりです。俺はこんなふうに保存すべきだという主張があるんですけど、主張と専門性のある見解というのは随分違うように思います。専門性のある見解をその審議会のそのプロセスでためていくというのは、大きな意味がある。世界はそのようになってきていますので、日本の一部の人がそういうのについていけないだけだと私は思っています。

共同通信:
 それに関連してもう一つ、個別の事例ですが、先日、興福寺の瓦窯跡の話があり、前の知事会見からその方針を少し変えられた理由をお聞かせください。

知事:
 それは、何か新たな発見があったという報告を、私が変えたわけじゃありませんけど、今は教育委員会文化財保存課でされているわけで、報告は受けております。新しい発見、何か値打ちがあるもの、まだはっきりわからないですが、値打ちがあるかもしれないということで、普通は記録保存で、保存の仕方のタイプは、記録保存、あとはもう壊してもいいというのと、埋め戻しで壊さない埋め戻しと、あとはオープンにして公開して保存というのがある。遺跡の地下の埋蔵物をオープンにして公開すると劣化するので、その現物を埋め戻して保存するということで、これは最終的な保存の形態ではありません。値打ちをもう少し分析をして、どのようなものかと明確になった段階で最終判断するという報告を受けています。

 これまでは、そういう値打ちがあるかどうか、値打ちがあるかもしれないという発見があったから、慎重にやろうという理解をしております。それはいい方向だと思います。その値打ちがあるかどうかは主観的でなく、客観的に、値打ちの客観性というのは難しいんですが、より多くの人の意見を聞くようなプロセスを、透明性を持ったプロセスをしていただけたらと願っています。

共同通信:
 その透明性あるその客観的なプロセスとおっしゃりますが、実際に今までのこの瓦窯跡については、第三者的な方を交えた審議が行われているんでしょうか。

知事:
 そうですね、まだこれからその値打ちを、瓦というものに対する値打ちの専門性を、どういう人を集められるか知りません。評価してもらうというプロセスに入ると理解しています。その過程は、私は関与しておりません。教育委員会文化財保存課の所掌でされております。それは聞く限りでは、いい方向かと思っております。

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当初予算について

朝日新聞:
 本日午後から当初予算の発表レクがありますが、次年度予算は、どういうふうに、どういうカラーをつけて、特色をつけていかれるのかを知事から一言お願いします。また、再来年は知事選もありますので、今回の予算編成が結構重要になってくると思いますが、漢字に絡めて、譲れないものはあるのか、一つお尋ねです。

知事:
 短く言うと、あんまりないです。

 譲れないというのは、そういう選挙とかエポックがあるから譲れないとかっていう気持ちは今までもさらさらありません。奈良県の発展形態というものについて、この認識は人によって違うわけですが、私としてはという意見はございます。

 奈良県の置かれた事情を分析すると、2つの要素があり、1つの大きな特徴は、先ほど毎日新聞の記者さんが言われた県外就職率が減ったという、ベッドタウンだということです。今もベッドタウンですが、そのベッドタウンで起きる現象は、人口急増、急減です。今、急減期に入っているということです。毎月500人ぐらい人口が減っているという状況です。

 それと、ベッドタウンは急速高齢化、みんなある程度になりますと、どんどんどんどん高齢化するわけです。そうすると政策として医療費とかいろんな、人口急増、急減、急速高齢化、それと影響があるのは少子化、低出生率というのにおそわれています。これはベッドタウンの現象で、普遍的な現象ですので、それをどのように緩和するかというのは大きな課題です。そういう認識をするのがまず一つであります。これは誰が来てもそういう認識をしてほしいなと自分では思っています。

 もう一つは、奈良県内の地域性です。県という行政主体の持っております課題認識です。地域振興という場合に、地域振興の大きなターゲットは働き口という、日本全体もそうですけど、どうして食わせるのかというのが課題です。家族をどうして食わせるのか、外に行って出稼ぎに、喜んでその働き口を探すというのは昔の出稼ぎというイメージと違いますが、出稼ぎを強いられるような国柄ではだんだんなくなってきています。奈良県の外に行ってしか働けない、働き口がないというのをなくしたいと思っています。それは地域の雇用の現場の差、雇用の場が北西和に集中しています。南部、東部には雇用が低い。それがずっと人口が移動して、過疎化が南部、東部で進行してきたという状況になっております。その過疎化を食いとめるのには働き口を南部、東部に発生させるという大きな地域の課題があります。奈良県政の課題というのは、その2つ大きな課題として認識をしたいというふうに思います。

 そのような中で、先ほどの出来事で、有効求人倍率とか企業立地の数字が上がってきて、働く場の確保にちょっと好転、温度が上がってきたかなということです。まだまだ今の2つの課題を解決というところまで至らないという認識です。したがって、引き続きの働く場の確保に向けての努力というのは継続して、来年度予算でも継続できたらと思います。

 その働く場の確保で大きな意味を持ってきたのは、京奈和自動車道で企業立地がたくさん進んだことがわかっております。これは県の予算とはなりませんが、国の意思決定があると、京奈和自動車道のネクスコ化があると、あるいは国に要望しておりますが、西九条佐保線の奈良駅や、幹線道路が県の事業としてできれば、すごく働く場が増えるということは実証されています。そのようなことには引き続き力を入れたいと思います。

 だから、来年度だからではなく、奈良県政の向かう方向というのをこうしてプレゼンをしたり話したりして、できるだけ議会とか県民の方の理解を得たいというふうに思います。まだ下手で、なかなか理解してもらえないのかなという感じは残ります。理解をしてもらうように、このようなことをどんどん言うしかないなと思っています。この理解が正しいかどうかは、またいろいろな議会を中心に議論があってしかるべきだと思っています。私の見方としては、この10年間の県政は、働く場の確保というのにやっぱり大事だと思っています。

 それと、もう大分進んでいますので、とりわけ強調しなくてもいいと思いますのは、高齢化が進んで、10年前は医療の体制が弱かったので医療提供体制を充実させるというのに意を酌んできて、それもほとんど8分ぐらいまで来たという気はします。それをそのまま延長して医療提供体制の確保、国民健康保険の県営化、地域包括ケア、高齢者の包括ケアでは、先進的な、先駆的な取り組みをする県となってきています。それはそのまま努力できたらと思っています。高齢者にとっては、地域包括ケアに代表されるようなケアを十分するということで、若者にとっては、女性も含めて働く場の確保というのが大きなことだと思います。その方向は、譲れない点のように自分では思っています。

司会:
 よろしいでしょうか。
 幹事者さん、よろしいですか。
 それでは、これで知事定例記者会見を終了させていただきます。ありがとうございました。

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(発言内容については、読みやすくするために、広報広聴課で編集しています。)

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