出会う 奈良県歴史文化資源データベース

踏車 ふみぐるま

記入年月日 2017/09/17

踏車
所在地
大和郡山市矢田町545番地
区分
民俗 | 有形民俗文化財
指定内容

※各歴史文化資源へのご訪問の際は公開日・公開時間・料金等を別途ご確認ください。

歴史文化資源の概要
踏車は用水路や河川から田へ水をくみ上げるための水車で、羽根車を人が足で踏んで回し水をくみ上げる揚水水車です。江戸時代初期に大阪の農具商・京屋が製造を始めたとされています。用水路などから水を引き入れられない高い田面へ水を揚げる道具として用いられてきました。昭和20年代より発動機を動力としたバーチカルポンプが広まるまで、東北から九州まで広く普及しており、地域ごとで構造などに特徴がみられます。 文政5年(1822年)に大蔵永常が著した『農具便利論』には、京屋が製造した踏車を図解で紹介しており、『農具便利論』を参考に地元大工に同じ寸法でつくらせれば、京屋と同じく上等の踏車を普及させることができるとして推奨しています。 史料上、材料や寸法が細かくわかる踏車ですが、現在、資料館・博物館等の収蔵施設に残る踏車で製造年がわかるものは、全国的にみて報告例が少ない状況です。
地域にとって大切な歴史文化資源である、その理由
奈良は大河川が少なく、特に奈良盆地は北・東・南からの水が大和川となって大阪へ流れて出していくため、安定的に水を利用することが難しい地域が多くあります。その場合、ため池を造成するなどして水の確保に努めますが、河川・用水路より高い位置にある田には、揚水機の使用が不可欠でした。奈良県立民俗博物館には50点近い踏車が保存されていますが、これらの資料をみていると、水の確保に努めた人々の姿を垣間見ることができます。 博物館で保存されている踏車の特徴としては、半数近くに墨書きが残されていることが挙げられます。多くは製造年(購入年)や製作者名、購入者名などが、羽根や胴の部分に書かれています。このように、踏車に墨書が残されることは他の地域では珍しいことです。 本資料はそうした資料群のなかでも江戸時代(明治元年)の年号を有しており、現存資料としては全国で最も古い踏車といえます。踏車の使用例として、耐用年数は約20年~30年といわれていますから、江戸時代の踏車が残されていること自体が、いままで大切に使われ保存されてきたことを表しています。
当資源と関連する文献史料
大蔵永常『農具便利論』文政五年
問い合わせ先
奈良県立民俗博物館
電話番号
0743-53-3171

掲載されております歴史文化資源の情報は、その歴史文化資源が地域にとって大切であると考えておられる市町村、所有者、地域の方々により作成いただいたものです。
見解・学説等の相違については、ご了承ください。