歴史文化資源の概要

井田家住宅主屋は、奈良市法蓮町の南北通りに西面する民家です。
法蓮はもともと奈良の町に接する農村でした。昭和中頃まで、法蓮造(※)と呼ばれるわら葺屋根の農家が、町家のように通りに面して建ち並ぶ、江戸時代以来の独特の町並みが残っていました。
昭和6年（1931年）に建てられた井田家住宅は、瓦葺の2階建で、1階に出格子を構え、2階の両脇には袖壁を設けるなど、外観は町家風です。しかし、内部は、広い土間に「煙返し」と呼ばれる大梁が架かる、農家の造りです。
農家でありながら町家風の外観をもつ点は、法蓮造以来の伝統を継承するものといえます。

※法蓮造
屋根はわら葺で、広い土間に「煙返し」と呼ばれる大梁が架かるなど、奈良盆地の一般的な農家と共通の造りです。他方、間口が狭く奥行きの深い敷地の前面に、道路に面して隣家と接して建ち並び、正面に「法蓮格子」と呼ばれる丸太格子を備えるなど、町家と共通する要素がみられます。農家としては珍しい造りで、「法蓮造」と呼ばれます。

地域にとって大切な歴史文化資源である、その理由

井田家住宅主屋は、奈良市法蓮町にあって、当地独特の伝統的な民家形式である「法蓮造」の特徴を継承しながら発展した昭和初期の農家建築として価値があります。また、正面外観は建築当初からほとんど改造がなく、法蓮の歴史的景観形成上も重要な建物です。

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