深める 歴史文献で訪ねる奈良

大和名所図会で見る
今昔
安倍文殊院(桜井市)

安部文殊院は、大化の改新があった645年に創建されました。698年(一説には700年)、この地で安倍仲麻呂が出生したことでも知られています。大和十五大寺のひとつとして栄華を誇っていましたが、永禄6(1563)年、松永久秀による焼き討ちにより、伽藍のほとんどが失われました。図会に見える本堂(本社)は、寛文5(1665)年に再建されたものであり、現存しています。本尊は文殊菩薩(智慧を象徴する仏)であり、宮津の切戸文殊、山形の亀岡文殊とともに、日本三大文殊のひとつに数えられています。

奈良県立図書情報館所蔵 大和名所圖會より
木造騎獅文殊菩薩及脇侍像

ここが見所

本尊である文殊菩薩と4人の脇侍の像です。「三人寄れば文殊の知恵」という諺は、この像に由来します。松永久秀による焼き討ちの際に、文殊菩薩の胎内から造立願文が見つかり、建仁3(1203)年に快慶によって造立されたことが分かりました。平成25(2013)年に、5像とも国宝に指定されました。