活かす 歴史を活かす地域の取組

歴史を活かす地域の取組

灯芯ひき技術 生駒郡安堵町

灯芯とは、ろうそくなどの燃え芯のことです。この燃え芯を藺草(いぐさ)をひいて取り出すのが、灯芯ひき技術です。安堵町では江戸時代中期から灯芯ひきが行われ、藺草は栽培されなくなりましたが、技術は現在も継承されています。2015年、灯芯ひき技術は安堵町指定の無形民俗文化財となりました。

長い歴史をもつ伝統技術が、やがて子どもたちにつながっていくために。 長い歴史をもつ伝統技術が、やがて子どもたちにつながっていくために。

歴史民俗資料館館長として、伝統技術の継承に取り組む 𠮷川雅章氏に聞く
安堵町歴史民俗資料館館長(安堵町教育委員会)。灯芯ひき技術や軽便鉄道など、安堵町の幅広い歴史文化資源の魅力発信に取り組む。
2017年2月
藺草から作った長灯芯・切灯芯と藺がら

地域の方々による保存会が、伝統技術の継承とPR活動に取り組んでいます。

1996年、灯芯ひき技術を後世へ普及・伝承していくことを目的に、地域の方々で構成される灯芯保存会が発足しました。灯芯ひき技術を後世に伝えていくためには、2つの課題があります。1つ目は、伝統技術の継承です。手技は形のないものなので、それを継承する人がいなくなると途絶えてしまいます。保存会では、原料である藺草の栽培を行うほか、定期的に安堵町歴史民俗資料館における練習会で技量の向上に努めています。また、若い人の勧誘にも積極的です。2つ目はPR活動です。灯芯ひき技術を多くの人に知ってもらうために、奈良県立美術館などの場で、実演や体験会を実施したりしています。

PR活動により、多くの寺社で安堵町の灯芯が使われています。

このような保存会を中心としたPR活動の結果、現在では、東大寺、元興寺、春日大社、法隆寺などに灯芯を奉納することができました。かつては年々奉納していた慣習が途絶えていましたが、現在は東大寺の二月堂修二会(お水取り)や、元興寺の地蔵盆の明かりに、安堵町の灯芯が使われています。このように、様々な場所で灯芯を使っていただく機会が増えると、灯芯ひき技術への関心が高まり、技術の継承につながると思います。

こども灯芯ひき教室

教育現場や資料館による普及活動の結果、子どもたちへの認知も広がっています。

安堵町の小学校では、郷土学習の時間に灯芯ひきを学習しますので、子どもたちは一度は灯芯ひきを体験しています。さらに夏休み期間、資料館では、子どもたちを対象に、灯芯ひき教室を開催しています。灯芯ひきに加えて、ひいた残りの皮の部分である藺がらを使って作った筆で、実際に文字を書いてみるという体験も行っています。このように、子どもたちへの認知は広がりつつありますので、その中から将来のひき手が育ってくれるといいですね。