奈良ゆかり探訪

 

 

◆奈良墨(ならずみ)

 奈良市内を歩いていると、書道用具店や土産物店でたくさんの墨を見かけます。奈良県における墨作りの歴史は古く、西暦701年に制定された大宝律令を見れば、平城京にあった図書寮(ずしょりょう)(図書の保管や書写を行っていた役所の機関)には、墨を作る専門の職人が4人いたことがわかっています。平城宮跡からも数点の墨が出土しており、この図書寮がこの時代、墨作りの中心地だったと考えられています。
 日本に残る墨に関する記録は、日本書紀の「推古天皇の18年(西暦610年)春3月、高麗(こま)王。僧曇徴(どんちょう)よく紙墨(しぼく)をつくる」という内容の記述が最古のもので、また、現存する日本最古の墨は正倉院に納められている舟形の墨で、表面に「新羅(しらぎ)の墨工」の刻印があります。このことから、朝鮮半島から伝わった墨やその製法は、奈良県における墨作りにも大きな影響を与えたと伝えられています。
 現在まで発展を続けてきた奈良の墨は、「奈良墨」とも呼ばれ、奈良県の伝統工芸品に指定されています。その良質な墨の全国シェアは95%と言われています。もしかすると、これをお読みの皆さんも、知らないうちに奈良の墨を使っているのかもしれませんね。

なら工藝館に展示されている奈良墨

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