奈良新聞掲載記事集

令和6年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和5年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和4年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和3年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和2年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

平成31年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

パン用小麦について

 小麦粉は、パン用の強力粉やうどんなどの日本めん用の中力粉など、幅広い用途を持っています。パンは日本でも身近な食品ですが、主にどこの産地の小麦が原料に使われているのでしょうか。
 パンの原料には、アメリカ、カナダ、オーストラリア産の小麦が多く使われています。外国産パン用小麦が日本でも普及しているのは、大量に流通している上、一般的に品質が良いと言われているためです。小麦粉の性質は、小麦粉に含まれるタンパク質によって影響されます。小麦粉に水を加えてこねることで、弾力と粘着力を備えたグルテニンとグリアジンというタンパク質が絡み合い、グルテンが形成されます。製パンには、タンパク質を多く含み、粘弾性のバランスが良いグルテンを形成する強力粉が適しています。しかし、従来の国内産小麦の多くは、タンパク質含有量が中程度の中力粉として主に使われており、パンにはあまり適していませんでした。
 小麦の国内自給率は平成29年度でわずか14%程度ですが、国内産パン用小麦の需要は高まっています。かつて北海道で普及した強力系品種「ハルユタカ」は、収穫期に雨が降ると品質が低下するおそれがありました。その後、問題点を改善した「春よ恋」が開発され、作付面積を伸ばしました。平成21年に北海道の優良品種として採用された「ゆめちから」は、強靱なグルテンを持つことから超強力小麦と呼ばれており、国内で比較的生産量の多い中力粉とブレンドすることで、製パンに利用することができます。また、近年育成された「せときらら」は、西日本の温暖地での栽培に適しており、外国産小麦に近い製パン適性を持っています。このように、各地域に適した新品種が開発されており、国内産パン用小麦の普及が期待されています。農業研究開発センターにおいても、栽培適性や製パン適性の優れた品種の選定に取り組んでいます。

 

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現奨励品種「ふくはるか」(右)のパンは中力系小麦であるため膨らみにくいが、センター内の試作パン用系統(左)は北米産1CW(中央)並に製パンに適している。

 

【豆知識】

 ご家庭でも小麦粉を使って調理をされる機会は多いのではないでしょうか。用途に合わせて小麦粉を選び、グルテンの性質を活かすことで上手に調理をすることができます。小麦粉は、タンパク質含有量の高いものから、食パン用の強力粉、菓子パンや中華めん用の準強力粉、日本めん用の中力粉、菓子用の薄力粉として、おおまかに分けられています。パンを作る場合は、タンパク質が多く含まれている強力粉を使って、グルテンがよく形成されるよう生地をしっかりこねることが大切です。これに対して、ケーキや天ぷらを作る場合は、薄力粉を使って、グルテンができるだけ形成しないようにするため生地は軽く混ぜることが大切です。小麦粉は湿気を吸いやすく、開封後には固まったりカビが生えるおそれがあるので、開封後は袋をしっかり閉めるなどしてなるべく密封し、乾燥した場所で保存するようにしましょう。

平成30年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」



奈良新聞で第2日曜日に連載中の「農を楽しむ」に掲載されたものです。
(平成20年まで「みどりのミニ百科」)
※過去に掲載されたトピックスは時間が経過し、現下と異なる点もございますのでご了承下さい。