時代の変遷が生んだ都への想い

694(持統天皇8)年、飛鳥から藤原宮へ遷都された後に志貴皇子(しきのみこ)が詠んだ歌がある。

「采女(うねめ)の 袖吹きかへす 明日香風(あすかかぜ) 都を遠み いたづらに吹く」(万葉集 巻1-51)

都がなくなってしまった寂しい飛鳥で皇子は、かつて美しい采女の袖をひるがえしていた明日香の風が、都がうつった今は、むなしく吹き抜けるばかりだ、と嘆いている。

さらに、藤原京は日本初の本格的な中国風の都城であった。飛鳥との違いは歴然。そして政治スタイルも、豪族同士が話し合って決めていたそれまでとは異なり、中央集権が確立された新しい時代へ。歴史や文化、社会の仕組みや価値観など時代全体が大きく変化した。それは戦前と戦後、はたまた明治維新前と後ぐらい、人々にとっては違いがあっただろう。

飛鳥と藤原京とでは、わずかしか離れていない。距離よりもむしろ、心理的な“遠さ”が大きかったのだろう。

国づくりの源流「飛鳥京」
~奈良の三都物語①~
日本初の本格都城「藤原京」
~奈良の三都物語②~
天平文化のど真ん中「平城京」
~奈良の三都物語③~
陵墓の位置に現れた皇統意識
~天智系と天武系~
地上に降り立った“照り輝く”太陽神
~鏡作神社・原宮司に聞く
橿原宮周辺に伝承残す、
多氏始祖の謎
環濠集落、そのルーツをたどる
~田原本町「法貴寺遺跡」~
光明皇后より口伝で受け継ぐ、精進念仏の結晶
~法華寺のお守り犬~
切れ味を甦らせる指先
~田原やま里博物館①~
日本茶の奥深さを伝える~田原やま里博物館②~
奈良晒の伝統を守り継ぐ~田原やま里博物館③~
「やすまろさんや!」
~太安万侶墓、発見のエピソード①~
「これはえらいことになる…」
~太安万侶墓、発見のエピソード②~
謎とロマンが語り継がれる金剛山麓
~高鴨神社・鈴鹿宮司に聞く~
考古学調査が解明する
大豪族・葛城氏
お年玉の起源は
葛城山麓の古社にあり!?
纏向遺跡で迎えた、
古墳時代の夜明け
人に振る舞われた、
大物主の恵みし神酒
万葉人のグルメはどんな味?
宮滝式土器から見えてくる、縄文・弥生時代の暮らし
~吉野歴史資料館・ 池田館長に聞く①~
昔時の姿を重ね見る、歴代天皇が愛した神仙境
~吉野歴史資料館・池田館長に聞く②~
時代の変遷が生んだ、都への想い
~歌に表れた万葉人の距離感~
ベテランが指南する恋の必勝法
~奈良時代のプロポーズ①~
名をあかすは、夫婦のしるし
~奈良時代のプロポーズ②~
天照大神がたどった
神宮の候補地・元伊勢
二つの顔を持つ男、不比等
~県立図書情報館・千田館長に聞く①~
不比等が仕組んだ、華麗なるパワーゲーム
~県立図書情報館・千田館長に聞く②~