ならまち工房で天然酵母パン工房を経営
天然酵母パン工房 くりぱんクラブ 栗野貞美さん
近鉄奈良駅からならまちを歩いて約10分、複合施設ならまち工房の一画に天然酵母パン工房くりぱんクラブがあります。
栗野貞美さんは、20年近くパン教室をされながら自分のお店を持つという夢を持ち続け、昨年実現された女性起業家です。
名称:天然酵母パン工房 くりぱんクラブ
業種:天然酵母パン工房
住所:奈良市公納堂町12-9号
Tel:070-5265-0734
創業:2015年
URL:http://kuripan-club.jimdo.com/
1.事業やスペースの特徴を教えてください
私のお店は、近鉄奈良駅から徒歩10分の場所にある、ならまち工房の一画をお借りして営業しています。ここでパンの仕込みから焼き上げまで行い、出来上がったパンを販売しています。
従業員は雇っていなくて全て私1人で営業しているので、なかなか時間がとれないのですが、不定期でパン教室も開いています。
パン作りで私がこだわっている点は、「安心・安全の材料を使うこと」と「手づくりであること」です。材料はネットで情報を調べたり、直接生産者に電話をかけて問い合わせたりして、生産者の顔が見えるくらい安心なものにこだわっています。パンはもちろん全て手作りですが、パンに使うジャム等もオリジナルで作っています。
一日に販売するパンの種類は、材料の仕入れ状況によって変わりますが、だいたい5~7種類としています。季節感も大切にしていて、例えば寒くなってきたなと感じる頃は、チーズフォンジュやスープに合うようなパンを提供するといった工夫をしています。
あと、私のお店は、家庭を中心とする営業スタイルなので休みがとても多いです。土日は基本的にお休み、家族のイベントがあると平日もお休みすることがあります。それにも関わらず地元の人たちがオープンするのを待っていてくれているおかげで、いつもパンを売り切ることができています。
2.あなたの起業ストーリーを教えてください
くりぱんクラブをオープンする前は、20年近く自宅でパン教室を開いていました。元々のきっかけは、アトピーだった子どもに少しでも身体に優しい食べ物を作ってあげたいと思ってパン作りのイベントに参加したことでした。参加してからパン作りの魅力にどんどんはまっていき、パン教室に積極的に通ったり、師匠と呼べる尊敬できる先生に出会って習ったりするようになりました。
数年後にはパン作りの技術が身に付いたので、ママ友や近所の方にパン教室を開いたり、ときには小学校や幼稚園で子どもたちに教えたこともありました。
「自分のお店をいつか持ちたい」という夢はパン教室を開いた時からずっとありました。ずっと言い続けていたらいつか叶うと言いますよね。だから周囲の人に「いつかお店をやりたいねん」と言い続けていました。
そうしていると2015年のゴールデンウィークに、突然お店をやらないかという声がかかりました。創業スクールなら(*)で出会った友人を通じて知り合ったとある会社の社長さんが、お店を持ちたいという私の夢を覚えてくれていて、ならまち工房Ⅲが新しく建てられるときに声をかけてくれたんです。
家族と相談して了解を得られた後は、業者と店のレイアウトを考えて改装したり、必要な機材を揃えていったりとオープンまで大忙しでした。
今から振り返ると、創業スクールに通ってから物事が動き出したように思います。特に、起業のきっかけをくれた友人や相談したり励まし合える仲間に出会えたことが大きかったように思います。
(*)創業スクールなら
毎年、新規創業予定者を対象に5日間のコースを開催。
受講者は1ヶ月間毎週土曜日に通い、起業に必要な知識を基礎から学ぶ。
3.起業のときのご苦労をお教えください
お店の話が舞い込んできたとき、もちろんやりたいと思いましたが、家族に理解してもらうことが本当に大変でした。最初に話を切り出したときは、私の本気の思いをうまく伝えられず苦労しました。
「こういう場合はどうするんだ?」、「うまくいかなかったら?」と色々質問をされ、うまく答えられないことも多々ありました。お店を持つということは、それまでやってきたパン教室と違って責任も毎月の出費額も大きくなるということに改めて気付かされました。
4.どのように乗り越えてこられましたか?
まずは家族からの質問に一つ一つ答えていきました。その場で答えられないときや解決方法が分からないときは、創業スクールの仲間や先輩起業家に相談して一緒に考えてもらいました。質問に対して真剣に向き合うことで、自分の思いや考えも明確になってきて、きちんと説明できるようになりました。しっかり腹をくくっていること、それこそ土下座をするくらい本気であることも伝わったと思います。
最終的に、私自身がしんどくないよう無理をしないことと、家族に迷惑をかけないことを約束して、家族の了解を得ることができました。
私は走り出したらなかなか止まれない性格なので、家族との約束がなければ無理をしていたかもしれません。長年一緒に暮らしてきた家族だからこそ私の性格をよく理解していて、見落としがちなポイントを指摘してくれたのだと思います。普段なかなか伝えられませんが、影から支えてくれている家族には本当に感謝しています。
5.これまでの成果や誇りについて教えてください
私のパンをきっかけに、お客さんが幸せを感じてくれていることが何よりの誇りです。「『くりちゃんのパンが手に入ったよ』と旦那に報告したら、旦那が早く帰って来るねん。」という嬉しそうな声を聞いたり、Facebookに寄せられたコメントから、食べた人たちがニコニコしている様子を想像して、「よしっ!!」とガッツポーズを取っています。
お店をお休みしていても他のパン屋で買わずに待っていてくれるお客さんもいてくれて、お客さんからの応援が本当にありがたいです。
6.後輩女性起業家へのメッセージをお願いします
最初の動機を忘れずに貫いてください。
私みたいな家庭を中心とした営業スタイルだとうまくいかないと心配され、「もっとお店を開けた方が良い」とアドバイスをよくいただきます。
ですが、私の最初の動機は「子どものために安全・安心なパンをつくること」だったので、子どもや家庭をおいて仕事をするのは、私のやり方とは違います。家族のことを一番に考えるのが自分のスタイルであり、良さだと思うので、そこから外れて儲けることに夢中になったりするとうまくいかなくなると思うのです。
皆さんも何が自分の最初の動機だったかを忘れずにいてください。自分の一貫した姿を見てくれている人は必ずいると思います。
印刷用PDFデータ
天然酵母パン工房 くりぱんクラブ 栗野貞美さん インタビュー記事(pdf 917KB)
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