奈良県立民俗博物館企画 「吉野林業の世界」
2025(令和7)年9月13日(土)-11月16日(日)
主催・会場:奈良県立美術館

杓子(しゃくし)重要有形民俗文化財、奈良県立民俗博物館蔵
■概要
今回、彫刻家の安藤榮作氏の展覧会にあわせ、吉野林業用具と林産加工用具を通じて、「木」を利用した人間生活を伝える展示を試み、本展では、「吉野林業用具と林産加工用具」の一部を展示します。
この「吉野林業用具と林産加工用具」は、木を切り倒すことなどに用いる林業用具616点、切り出した木を加工した道具などの林産加工用具 1,292点、あわせて 1,908 点からなり、2007年に重要有形民俗文化財の指定を受け、保護措置がはかられています。民俗文化財には制度上、国宝指定がなく、この重要有形民俗文化財は、国宝と同等の価値があります。奈良県には林業の道具がこれだけ多くそろっており、吉野林業の全体像を捉えることができると評価されました。これらの道具は同じように見えても、一点一点、用途にあわせて違っていたり、手作りで繊細に作られていたり、工夫が凝らされているところが見所です。
我々人類は、近年は低価格を実現するために、道具を、規格を決めて、速い速度で大量生産によって作り出してきました。現在の大量消費生活のーつの帰結といえますが、それは、現代ではたまたま、平均的な形、あるいは一定の強度で作ったものが便利なことから享受されているにすぎません。決して、ほとんどが手作りでできている時代の道具が劣っているわけではないのです。道具はその時代の社会の求めに応じて作られ、生産・使用されてきたものでした。
吉野林業に着目する本展示を通じて、我々人類が何を選択し、何を捨ててきたのか、その時代の中の生活の知恵をご覧ください。


奈良県立民俗博物館における展示の様子
1.重要有形民俗文化財「吉野林業用具と林産加工用具」
奈良県立民俗博物館に所蔵される、「吉野林業用具と林産加工用具」は明治~昭和30年代ごろに、奈良県南部の吉野郡内で使用されていた育林を中心とした林業関係用具と、豊富な木材資源を利用した林産加工品の製作に用いられた用具類及び一部製品から成る1,908点の資料群です。
これらの資料の展示を通じて吉野林業の技術体系を明らかにするとともに、植林地の拡大によって近世以来継続してきた山林の利用が、歴史的、地理的にどのように変化したのかを具体的に示す資料をご紹介します。
2.伝承されてきた生活の知恵
林業における技術伝承、と聞くと、それは木の切り方や運び方、あるいはどのような木が商品として適しているのか、ということを、先人から受け継いできたと思われるでしょう。しかし、それだけではなく、伝承の中には、山の神への祈りや、この地で暮らす人々の思想もあります。これらを総合して、林業が成り立っていました。こうした、先人達が伝えてきた伝承の世界の解説を行います。
■主催 奈良県立美術館
■会場 奈良県立美術館 1Fギャラリー
■会期 2025(令和7)年9月13日(土)~11月16日(日)
■開館時間 9:00~17:00(入館は16:30まで)
■休館日 9/16(火)、9/22(月)、9/29(月)、10/6(月)、10/14(火)、10/20(月)
■観覧料 無料
■出品協力 奈良県立民俗博物館
■会期中の催し
◆奈良県立民俗博物館学芸員によるギャラリートーク
日時:10月5日(日)、10月19日(日)14:00~
会場:奈良県立美術館 1Fギャラリー
講師:高橋史弥(奈良県立民俗博物館 学芸員)