白磁八角壺

H3>解説

 富本憲吉(とみもとけんきち)は白磁について、「厚く柔らかい白磁釉(はくじゆう)を壺に用いて、一種特別な感じのする陶器を造りだそうと考え出したのは、私がまだ陶磁家として身を立てなかった若い頃で、フランスでマイヨール作の小像を見てその柔らかくふくよかな肉付きに感心した時に始まる(『陶技感想五種』)」と述懐している。そして、色彩や模様によるごまかしが一切きかない白磁には、轆轤(ろくろ)で整形した段階で最も形の整ったものを用いたという。
 本品は八角に面取りした壺で、そのしっとりとしたやわらかさと深く沈んだ気品が漂う白磁釉と、当時の常識を破る首の低い安定感と力強さをもつ壺の形は、富本独特の美意識を示すものである。

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