磁器色絵円に花模様大角飾筥

解説

 落ちついた色調の柿釉(かきゆう)の筥(はこ)に、円にダリアとカーネーション模様を散らした白布をそっと被せたイメージの作品である。そして、素地は繁菱文様(しげびしもんよう)を薄肉で彫るという富本としてはめずらしい技法を用いており、他に類例を見ない。外観が優雅な趣を持つのに対して、蓋を開けた内面は鮮やかな緑と黄の繁菱文で飾り、四隅には丁寧に白地に小さな同文様を赤で配している。
 カーネーションは富本が自分の模様に完成するまでにかなり苦労したモチーフで、ダリアと同様に使用例はそれほど多くはないが、一時期毎夜のように描くうちに次第に複雑な切れ目の多い花弁の整理ができたという。

コレクションページへ戻る ホームページへ戻る