解説

 古沢岩美(ふるさわいわみ)は、幻想的で官能的な女性像表現を展開したシュルレアリスムの代表的画家。
 本作は美術文化協会秋季展への出品作で、昭和23年(1948)の福井大地震跡を取材した素描が制作の起点である。極端に身体をねじ曲げた裸婦像に地震の恐怖を暗示させ、背後には廃墟と化した建造物が描かれるが、人体の曲線と、巨大な壁の直線とがあいまって緊張感にあふれた画面空間となっている。大胆にデフォルメされた身体は官能性を喚起させるが、同時に人間の苦悩も内在させる。そこには古沢の中国での捕虜体験の苦しみや戦争の矛盾、敗戦後の混乱に直面した社会批判が投影されている。古沢初期の代表作。

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