奈良県立美術館 Nara Prefectural Museum of Art
「名所江戸百景 亀戸梅屋舗(めいしょえどひゃっけい かめいどうめやしき)」
歌川広重 (1797-1858)
一枚 江戸時代(安政4年=1857)
大判錦絵 37.2×24.3cm
奈良県立美術館40選
浮 世 絵
解説
前景に当時有名であった「臥竜梅」を大きく描く構図は、新鮮で印象的な詩を求めた『名所江戸百景』の新しい試みをよく示している。赤、紫、緑を背景に純白の梅が馥郁(ふくいく)と薫っている。装飾的で象徴的な日本の伝統的表現法が生かされ、早春の気配が巧みに描き出されている。印象的で装飾的な表現を多用したこのシリーズは『東海道五十三次』などに見られる繊細な写実を脱し、歌川広重(うたがわひろしげ)の新しい詩境を示すものであった。判形もたて形を用い、緊張感と動性をよくあらわすものである。
ヴァン・ゴッホ(1853~1890)は、木版画の平面性と装飾性にひかれ、『名所江戸百景』の中から、この図と「大はしあたけの夕立」を油絵で模写している。