植物の細菌病

 地球上には4~6×1030という膨大な数の細菌が生息していると推定され、私たち人間や植物の生活に深くかかわっています。細菌は人間の皮膚の表面や腸の中にも存在し、皮脂の分解や病気になる細菌の増殖抑制など、私たちの健康に欠かせないものとなっています。一方で、細菌の種類によっては食中毒をはじめ、様々な病気を引き起こす原因にもなります。植物でも同様に、植物と共生している有用な細菌もいれば、病気を引き起こし、深刻な被害をもたらすものもいます。今回は、細菌が植物に起こす病気についてお話します。
 植物の病気の原因となるものは大きく分けてカビ、細菌、ウイルスの3つですが、細菌が原因となる病気はその約10%を占めると言われています。細菌による病気には、葉や茎、果実から侵入し病気を引き起こす地上部の病害と、根から侵入し病気を引き起こす地下部の病害があります。特に地下部の病害は、病気になる細菌が土壌中に生存するため、対策が難しく、農業生産現場でも問題となっています。
 奈良県内で問題となっている地下部の病害の一つに、トマト、ナス、ピーマンなどのナス科植物で発生する青枯病があります。青枯病を引き起こす細菌は地下部の根から侵入し、根から吸い上げた水が通る導管内で増殖します。ここで大量の多糖類を分泌してバイオフィルムというものを形成しますが、このバイオフィルムによって導管が詰まり、植物は水を吸い上げられず、しおれ、やがて枯死します。このバイオフィルムは私たちの身近にもみられるもので、台所の排水溝にできるヌメりも同じものです。
 畑でトマトやナスを栽培されている方は、一度発病するとその年だけでなく、次の年以降も同じ畑で病気が発生する可能性が非常に高いので注意する必要があります。対策としては、ナス科植物の連作を避けることや病気に強い台木を用いた接木苗の利用があります。

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      トマト青枯病による被害

 

【豆知識】

 植物の病気はカビや細菌などの病原菌によって引き起こされますが、逆にそのカビや細菌を使って病気を抑えられることはご存知でしょうか。バチルス属という細菌のグループの一部は、その細菌のもつ特性を利用して実際に農薬として販売されています。バチルス属による病気を抑制するメカニズムについては、大きく二つ考えられています。一つは、バチルス属がカビや細菌に対する抗生物質を生産することで病原菌の生育を妨げる作用です。もう一つは、バチルス属が植物に直接触れることで、植物自身が持つ病原菌に対する防御システムを高める作用です。このようなカビや細菌を使った病気への対策は、化学農薬に替わる新しい方法として世界中で研究が進められています。現在は、化学農薬に比べ効果が低いことなど問題点もありますが、これからの技術の進歩が期待されます。



奈良新聞で第1日曜日に連載中の「農を楽しむ」に掲載されたものです。
(平成20年まで「みどりのミニ百科」)
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