奈良県立美術館 Nara Prefectural Museum of Art
「隅田川舟遊(すみだがわふなあそび)」
喜多川歌麿(きたがわうたまろ)(1753?-1806)
三枚続 江戸時代(18世紀)
大判錦絵 各38.6×25.7cm
奈良県立美術館40選
浮世絵
解説
喜多川歌麿は江戸の浮世絵師。初め北川豊章(きたがわとよあき)と名のり、役者絵版画や版本の挿絵を描いた。天明年間(1781-89)から歌麿号・喜多川姓を用い、蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう)等の版元が出版した錦絵(多色摺り浮世絵版画)の美人画や狂歌入り風俗画、絵入り狂歌本を手がけ、寛政年間(1789-1801)には大首絵(おおくびえ=上半身像)・全身像に女性の美を表現した。
本図では、隅田川に舟を出し、釣り竿や投げ網で魚を獲って遊ぶ男女を、遠くまで続く川、高い位置に架かる橋による広々とした風景の中に描いている。屋形舟の屋根へ上る女性の伸びやかな肢体など、女性の描写には美人画家歌麿の実力が発揮されている。
両国橋の下の網舟の図として知られる作品で、歌麿が自己の画風を確立した天明年間末期から寛政年間初期の作とされている。この頃の歌麿は3枚続の画面に人物群像による名所遊楽図を描いており、本図もその内の一点である。