夜の人々

解説

  前田常作(まえだじょうさく)はマンダラをテーマに仏教世界の宇宙的イメージを表現したことで知られるが、1950年代の後半頃から、生命が誕生するドラマの拡大図のような幻想的な作品を発表した。「夜の人々」と題された本作も、都会の夜にうごめく人間たちの姿というよりも、体内に流れる血液と細胞分裂の神秘的なイメージが画面にあふれる。前田の「夜シリーズ」の原点となった作品。夜のシリーズはその後、誘蛾灯に群がる蛾の乱舞をイメージして、光の円と生き物のフォルムが密集する幻想的な世界を展開していく。後に、パリの個展で、評論会ジェレンスキーから指摘される「マンダラ」世界の萌芽である。

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