母子

解説

 幼子を背負い、身を屈めた女性の像。母子共に形態を大胆にデフォルメし、母親は直線的な脚部と、大きくねじれを加えた腰から首への量感の変化が若々しく穏やかなリズムを生み出している。子供は、平面的に処理された体側面と、頭、背、尻
と跳ねるような形の変化から、溌剌とした生命力を感じさせる造型で、一つの作品の中に二つの異なる生命感を表現している。

 菅原安男(すがわらやすお)は、日本美術院第二部(彫刻)にて仏像の修理に従事した菅原大三郎の次男として京都太秦に生まれた。幼少時に奈良に移り17歳の時に死別した父から直接の彫刻の手ほどきを受けた事はないとされるが、東大寺知足院の三宅英慶師の指導により奈良の仏像に親しみ、東京美術学校(現在の東京藝術大学)にて高村光雲、関野聖雲、平櫛田中らに師事。卒業後奈良に戻り、明珍恒男、小川晴暘、小林剛、志賀直哉と親交。作風に大きく影響した事を懐述している。昭和19(1944)年に東京美術学校助教授に就任してからは東京に移る。院展・新制作展を中心に写実的な肖像から仏像、構成的要素の強いオブジェ的な動物像まで、幅広い作風を展開し活躍した。

 菅原は制作に関して木彫から塑像まで幅広い技法を用いている。作風の上でも写実的な肖像から仏像、大胆に形態をデフォルメした動物モティーフの作品まで、その作品は多彩な展開をみせる。 その後は昭和19(1944)年の東京藝術大学助教授就任以来30年に渡って、旺盛な制作と併行して指導に当たっている。

 

 


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