奈良新聞掲載記事集

令和6年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和5年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和4年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和3年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和2年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

平成31年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

アブラムシ

 アブラムシはやっかいな害虫の1つです。発生し始めたかと思うと、あっという間に増えてしまいます。このアブラムシの増殖能力がどのくらい凄いのか、簡単な試算をしたことがあります。
 アブラムシの子供はおよそ1週間程度で親になります。1匹の親は、十分な餌があれば100匹くらいのメスの子供を産みます。単純に計算すると、1匹のアブラムシが1週間後には100匹になり、2週間後には1万匹になり・・・。そして、4ヶ月後には増えたアブラムシの体重の合計が、地球の質量を上回るという信じられない結果になりました。つまり、アブラムシは4ヶ月で地球を丸ごと食べ尽くしてしまうほどの増殖能力を持っているのです。
 実際には、アブラムシは土や岩石を食べませんので地球を丸ごと食べ尽くすのは無理です。しかし、皆さんのご近所の雑草地などが、アブラムシに食べられて丸裸にならないのは不思議だと思いませんか。
 自然の中でアブラムシの増殖を抑えているのは自然の天敵です。テントウムシ(写真1)や寄生バチ(写真2)、その他様々な天敵がアブラムシを食べます。アブラムシの持つ高い増殖能力は、天敵に弱いことの裏返しでもあるのです。
 では、なぜ畑ではアブラムシが逆にどんどん増えるのでしょうか。その大きい原因は殺虫剤散布です。天敵はアブラムシに比べると殺虫剤に弱い性質を持っています。そのため、殺虫剤散布に頼っていると、畑の中の天敵が死滅してしまいます。天敵がいなくて餌が豊富にある畑では、アブラムシはその高い増殖能力であっという間に増えてしまうのです。
 わずか4ヶ月で地球を丸ごと食べ尽くす勢いで増えるアブラムシと殺虫剤の力だけで戦うというのは辛い消耗戦です。そのため当センターでは、殺虫剤に頼らずに天敵の力でアブラムシを退治する技術の確立を目指しており、いずれ紹介させて頂く事になると思います。どうぞお楽しみに。

 

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       写真1:テントウムシ              写真2:アブラムシの寄生バチ

 

【豆知識】

 家庭菜園や庭先でアブラムシが発生した時はどうなさっていますか。そのまま放置していたら、いずれ天敵が集まってきて食べ尽くしてくれますが、その前に作物もかなりやられてしまいます。ホームセンターなどでは効果の高い殺虫剤が販売されています。でも、できれば天敵にも期待したい。そういう方には、デンプンを有効成分にしたスプレー剤がお勧めです。これは、水に溶けたデンプンが糊のようにアブラムシを包んで殺すスプレーです。

 単なるデンプンですので、天敵にはほとんど影響しません。使い方のコツは、アブラムシが少ないうちに使い始めること、アブラムシがいるところを狙ってたっぷり噴射すること、アブラムシがいなくなるまで5日間隔くらいで何度か使用すること、の3つです。あくまでもデンプンで包んで殺す資材ですので、虫体に直接かからないと効果はありませんし、乾いた後は効果が持続しません。根気よくスプレーしてみて下さい。

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平成30年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」



奈良新聞で第2日曜日に連載中の「農を楽しむ」に掲載されたものです。
(平成20年まで「みどりのミニ百科」)
※過去に掲載されたトピックスは時間が経過し、現下と異なる点もございますのでご了承下さい。