この時期、スーパーや直売所などでは、様々なイチゴの品種がところ狭しと並んでいます。いずれの品種もおいしく、甘味、香り、色、大きさなどに特徴があり、どの品種を選ぶか悩むほどです。
この日本のおいしいイチゴの輸出額が、近年増加していることを皆さんご存じでしょうか(図)。青果物の中では、リンゴやブドウに並ぶ代表的な輸出品目になっており、主に香港、台湾、タイなどのアジア諸国へ、ほとんどが空輸便で輸出されています。また、月別で見ると11月頃から増えはじめ、2月頃にピークを迎え、5月頃を最後に夏季には輸出がほとんどなくなります。それは、イチゴは皮ごと食べても全く気にならないほど皮が薄い果物であり、特に高温時期は傷みやすくなることが理由の一つに挙げられます。また、海外へ輸出ともなると、収穫後に地域の集荷場→市場→物流業者倉庫→空港→検疫→空輸→現地空港倉庫→検疫→流通業者倉庫→小売店の経路をとおり、店頭に並ぶまでに10日間程度かかる事例があるなど、4月以降は空輸便であっても暑い時期の長距離輸送は難しいことがうかがえます。
少しでも長い期間、傷まないように輸送するために、傷みを軽減する取り組みが行われています。例えば包装資材や包装方法では、柔らかいスポンジをイチゴと容器、フィルムの間に敷く、イチゴ同士が擦れ合わないように2段積みではなく1段積みにする、イチゴを置くトレイの窪みと窪みの間に距離があるホールトレイと呼ばれる容器を用いるなどの工夫が見られます。
奈良県が育成した‘古都華’は他の品種に比べて皮が傷みやすいので、県内出荷向けの‘古都華’にも先述の包装容器や包装方法が用いられていることがあります。次に、イチゴを買われるときは、包装資材にも気を配りながら、新鮮なイチゴを選んでみてください。
【豆知識】
みなさんは、購入したイチゴをどのように保存していますか。
イチゴをはじめとする多くの青果物は、収穫後も生きて(呼吸して)いるため、時間が経過するにつれて栄養分を消費し、皮の光沢は失なわれていきます。また、輸送中に押された傷跡に黒ずみやカビが発生するなどして、品質が低下します。
もちろん、保存せずにすぐに食べる方がよいのですが、保存が必要な場合は、保存期間中に呼吸を低く抑えることが重要で、一般的に低温の方が呼吸は抑制され、より品質が保持できることが知られています。冷蔵室や野菜室の5℃程度の温度で保存しても良いのですが、イチゴはチルド室と呼ばれる0℃程度の室内で最も保存性が高まることが報告されています。それよりも低い温度では果実が凍ってしまうので注意してください。これから出荷量のピークをイチゴは迎えます。鮮度の良いイチゴを堪能してください。