奈良新聞掲載記事集

令和6年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和5年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和4年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和3年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

小麦の種類と国産小麦

日本人の主食といえばお米ですが、パンや麺類も普段の食生活に欠くことのできないものです。また、特別な日にはケーキを焼いたり、外出先でタコ焼きを買うこともあります。これらの材料には小麦粉が使われていますが、小麦粉はその性質から強力粉、中力粉、薄力粉の3種類に分類されています。
 小麦粉にはグリアジンとグルテニンという2種類のタンパク質が含まれており、粉に水を加えて練ると、グルテンという粘着性と弾力のあるタンパク質になります。強く練るほどグルテンが形成され粘りの強い生地が出来上がります。グルテンの量が多く、コシの強い生地になり、パンや中華麺・パスタに向いているのが強力粉、逆に粘りが弱く柔らかい仕上がりでケーキなどのお菓子や天ぷらの衣に向いているのが薄力粉、その中間的な性質でうどんやお好み焼き、ドーナツに向いているのが中力粉になります。
 小麦粉の性質の違いは、原料となる小麦の性質の違いに由来します。強力粉は硬質小麦を原料とします。パスタ用のデュラムセモリナと呼ばれる小麦粉はデュラム小麦を粗挽きにしたもので、これも強力粉に分類されます。中力粉は中間質小麦、薄力粉は軟質小麦からできています。
 これまで日本の小麦粉の主な需要はうどん用途でしたので、国内には中間質小麦の品種しかありませんでした。国産強力粉の要望に応えようにも、外国の硬質小麦の品種は日本の気候や土壌ではうまく育ちません。そこで、1990年代から品種改良が進められ、国内でも作りやすい硬質小麦の品種が次々と出現しました。国産の硬質小麦品種にはアミロース含量が低いものも多く、そこから作られた加工品はモチモチした食感となりますので、外国産小麦とはひと味違ったパンや麺類を楽しむことができるようになりました。小麦粉はブレンドして使われることが多く、商品ラベルに詳しい記載が無いことも多いですが、小麦の由来を意識していると、新しい味と出会えるかもしれません。

【写真:2020年産小麦の製パン試験。左が1CW(カナダ産、標準)、右がはるみずき(奈良県産)】

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【豆知識】

奈良県ではこれまで小麦の奨励品種として「ふくはるか」が指定されていました。「ふくはるか」は中間質の小麦品種で、学校給食パンのブレンド材料やお好み焼き、製菓用途に使われています。一方、近年の「奈良県産の強力粉が欲しい」という声に応えるため、奈良県農業研究開発センターでは本県の気候、土壌に適した硬質小麦の検索を行ってきました。その結果、「はるみずき」という品種が、「ふくはるか」と同様に本県における栽培適性が高く、製パン性の評価も非常に高いということが分かりました。
 そこで、2021年10月に、「はるみずき」を奈良県奨励品種に指定しました。現在、県とJAでは「はるみずき」の種子の増殖に取り組んでおり、2024年の春に本格的な出荷が始まる予定です。「ふくはるか」以上に様々な用途に使えるようになるため、多くの方に奈良県産小麦を食べていただける機会が増えることを期待しています。

令和2年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

平成31年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

平成30年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」



奈良新聞で第2日曜日に連載中の「農を楽しむ」に掲載されたものです。
(平成20年まで「みどりのミニ百科」)
※過去に掲載されたトピックスは時間が経過し、現下と異なる点もございますのでご了承下さい。