奈良新聞掲載記事集

令和6年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和5年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

紫外線で病気を防ぐ

 病気とは病原体の感染などにより異常をきたすことであり、植物も人と同じように病気になります。植物の病原体には大きく分けてカビ・ウイルス・細菌の3つがありますが、最も多いのはカビです。農作物が病気になると、葉のしおれや枯死、果実が腐敗することで収穫量が減少します。そのため、農業者が農作物を栽培する際には病気の発生を抑えることに注意を払っています。その対策は化学農薬が中心的な役割を担っており、効果は高く、コスト面でも優れています。しかし、化学農薬を散布する労力は農業者の負担になり、消費者からは使用を減らしてほしいという声も聞かれます。
 実は、化学農薬以外にも病気から農作物を守る方法があり、そのひとつとして紫外線(UV)を用いた手法が注目されています。植物は一定量以上の紫外線を浴びるとそのストレスが引き金となり、病原体に対する抵抗性反応を活発にします。紫外線には、波長が短い方からC波,B波,A波とされ、その中でC波とB波が抵抗性反応を引き起こします。しかし、C波はDNAやタンパク質を損傷させる能力がより高く、植物に悪影響を及ぼすリスクがあります。植物の病気の対策にはB波の使用が一般的であり、UV-Bと呼ばれています。
 農作物が生産されている場面においては、UV-Bを照射できる蛍光灯が導入されています。UV-Bでも長時間浴びると人体に悪影響を及ぼすため照射は深夜に行います。特にイチゴでの利用が最も盛んであり、葉と果実へのうどんこ病の発生を抑えることができます。さらに農薬の散布を減らすことができ、栽培の省力化にも繋がっています。奈良県農業研究開発センターでもUV-Bを用いて、キクの白さび病という病気を防ぐ研究を行なっています。UV-Bの照射の最適な強さや植物体への影響を明らかにすることで実用化を目指します。

【豆知識】

UV-Bの利用には専用の蛍光灯に加えて耐候性の電線やタイマーなどが必要であるため家庭菜園には不向きです。皆さんが利用できる植物の抵抗性反応を利用した技術として、微生物農薬があります。元々自然界に存在するカビを主成分としているため、環境に優しいとされています。この農薬の一つに、たくさんの種類の昆虫に寄生するボーベリア菌という微生物(カビ)を利用したものがあります。このボーベリア菌を散布すると植物表面に定着し、抵抗性を誘導することでうどんこ病の発生を抑えます。このように、紫外線以外にも化学農薬を使わない病気の対策がありますので、興味があれば試してみて下さい。なお、微生物農薬を使うときは、あらかじめ登録をされている作物や使用方法をよくご確認の上、ご使用下さい。(写真:UV-Bランプを用いたキク白さび病の試験の様子)

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令和4年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和3年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和2年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

平成31年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

平成30年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」



奈良新聞で第2日曜日に連載中の「農を楽しむ」に掲載されたものです。
(平成20年まで「みどりのミニ百科」)
※過去に掲載されたトピックスは時間が経過し、現下と異なる点もございますのでご了承下さい。