奈良新聞掲載記事集

令和6年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和5年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和4年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和3年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和2年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

平成31年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

オウトウについて

 オウトウというとあまり馴染みがないかもしれませんが、愛称のサクランボは馴染みがあると思います。オウトウは奈良県でも栽培されており、大産地の山形県よりも暖かいので、2週間程度早く収穫することができます。今回はそんなオウトウについて紹介します。オウトウはバラ科サクラ属の植物です。オウトウ果実は生食用として食卓を賑わすほか、加工用(缶詰、ジュースなど)にも使われており、樹幹は木材として良質です(バージニアチェリーなど)。 オウトウには、ヨーロッパ系と東アジア系の2つの大きなグループがあります。前者は更に、甘果オウトウと酸果オウトウに分かれます。後者には中国オウトウが含まれます。これらの3つのグループは、原産地が異なっています。甘果オウトウの原産地は、イラン北部からヨーロッパ西部にかけて、酸果オウトウの原産地は、黒海からトルコのイスタンブールにかけてとされています。中国オウトウの原産地は明らかにされていませんが、中国国内のどこかであると考えられています。
 明治七年頃に政府より派遣されたの中国農事視察団の一行がモモの苗木と一緒に持ち帰ったシナノミザクラが我が国のオウトウ栽培の始まりとされています。
 現在国内で経済栽培されているのは、主にヨーロッパ系のオウトウです。中でも甘果オウトウは、ほとんどの品種で同一品種だけでは結実しない配偶体型自家不和合性の性質を持っていることが知られています。そのため、別品種を授粉樹として混植しなければなりません。また、特定の品種間では交配しても結実しない性質も合わせ持っていますので、品種間での交配特性を理解し授粉樹として適した組み合わせで植栽する必要があります。さらに授粉樹との開花期のずれなどが結実に大きく影響を与えるため、結実量の年次差が大きくなります。また、オウトウは他の果物と比べて結実しにくいので、対策としては人工授粉や訪花昆虫の利用によりばらつきなく十分授粉させることが必要です。

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         色づいたオウトウ(ナポレオン)の果実

 

【豆知識】

ここでは甘果オウトウの品種についていくつか紹介しようと思います。
○佐藤錦
山形県の佐藤栄助氏により交雑実生から育成された品種です。品質は最上位の部類に属します。しかし、やや裂果しやすいという難点があります。収穫期〈奈良〉5月下旬~6月中旬
○ナポレオン
古くから栽培されている品種ですが、来歴は不明です。やや酸味が強いですが、完熟すると味は濃厚となり食味は良好です。 また、授粉樹に適しています。収穫期〈奈良〉6月中旬~6月下旬
○高砂
アメリカのオハイオ州でYellow Spanishの実生から育成された品種です。酸味がやや強く濃厚な味です。収穫期〈奈良〉5月下旬~6月上旬
○紅秀峰
佐藤錦と天香錦の交雑により育成された品種です。果実は大玉で酸味はやや少なく、甘み濃厚で多汁です。樹勢が低下しやすいという難点があります。収穫期〈奈良〉6月中旬~6月下旬

平成30年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」



奈良新聞で第2日曜日に連載中の「農を楽しむ」に掲載されたものです。
(平成20年まで「みどりのミニ百科」)
※過去に掲載されたトピックスは時間が経過し、現下と異なる点もございますのでご了承下さい。