みなさん、お米作りはされていますか?私の仕事は農業経営の研究で、農作業の省力化について考えることがあります。また、自宅で米作りをしており、その省力化を実践しようと、3年前から水稲(すいとう)の直播(ちょくは)栽培に挑戦しています。そこで、今回は水稲栽培で省力化が期待できる代かき同時直播について紹介します。
水稲の直播栽培とは、水田に種もみを直接播く方法のことで、浅く水をためた水田に播種する湛水直播と、水を入れる前の水田に播種する乾田直播があります。苗づくりと田植えを行わないため、これらの資材や労力が不要となります。
私の場合、湛水直播を行っており、これまで肥料や農薬を風力で飛散させる背負式の動力散布機を使って播種していました。この時の失敗談として、播種した際に種もみが密集する箇所や散布できていない箇所が発生し、その後の株の生育にバラツキができ、収穫時にコンバインの搬送部を何度も詰まらせる結果となりました。また、面積が広い水田では、その中央まで種もみが届きづらいという欠点が挙げられます。
これらを改善し、さらなる省力化を目指すために昨年実践したのが、代(しろ)かき同時直播です。直播前に土を軟らかくし、田面を平らにするために行っている代かきと同時に播種する方法です。トラクター後部に取り付けた肥料散布機のホッパーに種もみを入れ、ロータリーの後方から播種するようにホースの散布口を固定しました。そうすることで、代かきを行ったあとに種もみがほぼ均一に落下し、生育のバラツキが発生しにくくなりました。これまで背負式の動力散布機で10アールあたり約20分かかっていた播種時間や重い動力散布機を背負う労力がなくなったのは大きなメリットと言えます。なお、発芽は水稲と雑草で同時、または雑草の方が早いため、初期の雑草対策が重要です。除草剤を効果的に効かせるため田面の均平化を心がけましょう。
【豆知識】
水稲の代かき同時直播を行う上で注意点があります。
1.種もみについて
均一に播種するため、播種量を事前に確認する必要があります。私の場合、ヒノヒカリを栽培しており、1平方メートルあたり約110粒の種もみが落下するように肥料散布機を調整しました(10アールあたり乾もみ約3キログラム相当)。また、催芽処理直後や種子コーティング直後の種もみは湿っていて播種時にホースへ付着し、詰まりの原因となるため、種もみは陰干し後に用いるようにしましょう。
2.ホースの散布口について
散布口の設置位置によっては、田面ではなくロータリーカバーの上に種もみが落下する可能性があるので、その場合はホースを後方に延長するなどの対策が必要です。また、稲刈りの作業性を考慮し、播種時に畦側にある一番端のホッパー出口を閉じることで、そこには種もみが落下せず畦とコンバインの刈取部先端にスペースができ、稲刈りがしやすくなります。
(写真:肥料散布機を活用した代かき同時直播(通常、ロータリーの前方にある散布口を後方に設置したクワの柄(え)に固定している))
