「とろろ」の材料として知られるジネンジョ(自然薯)はヤマノイモ科ヤマノイモ属に分類されヤマノイモとも呼ばれます。日本では古くから山野に自生しており、食用の他に生薬の原料として利用されます。ジネンジョは褐色腐敗病やセンチュウといった病害虫の影響を受けやすく、肥料分を多く含む土壌では芋が分岐するため畑での栽培が難しい植物です。そのため希少価値が高く、高値で取引されます。ジネンジョによく似た野菜にナガイモがありますが、こちらは中国原産です。ジネンジョに比べ栽培が容易なため、日本でも広く栽培されています。
大きいジネンジョは1メートル以上になり、地中に長く伸びるため掘り取りが大変です。そこで、大和野菜研究センターではジネンジョをパイプ栽培と呼ばれる特徴的な方法で栽培しています。今回は、パイプを用いた栽培方法について紹介します。
ジネンジョ栽培では種芋を植え付け、そこから発生する新生芋を収穫します。植え付け作業は4月から5月にかけて行います。山土をパイプに詰めて(図1.パイプの設置)、畑に掘った深さ40センチメートルほどの溝に15°程度傾けて設置します。種芋は新生芋がパイプの中に伸びるように、発芽点が開口部の中央に来るように設置します(図2.種芋の設置)。その後、種芋の上に土を被せ、雑草の発生を防ぐための稲わらを敷けばジネンジョの植え付けは完了です。山土は肥料分が少ないので、新生芋は分岐せずにまっすぐ生長することができます。一方、種芋から発生する根はパイプの外にある畑の肥沃な土壌に伸びるので、地上部に発生する蔓の生育が盛んになり、新生芋の肥大を促進します。蔓は植え付け後しばらくすると種芋から伸びてきます。畝の上に支柱を立ててキュウリネットを広げておき、蔓を誘導します。収穫は年末に蔓が枯れてから、パイプごと掘り上げて行います。
【豆知識】
ジネンジョの種芋増殖方法は主に2つです。むかごを用いる方法と、切り芋を用いる方法です。むかごは直径1センチメートルほどの球形をしており葉の基部に着生します。塩ゆでや炊き込みご飯の具として利用できるため山菜として人気があります。前年に収穫したむかごを春に播種すると、秋には翌春種芋として利用可能な大きさに生育します。切り芋を用いる方法では、前年に収穫した芋を50~70gほどの大きさに切り分けて使用します。切り分けた芋を土に伏せこみ、農業用ハウス等の暖かい場所に置くと芽が出てくるのでこれを種芋として利用します。この方法では、芋の品質を確認しながらの増殖が可能です。大和野菜研究センターでは、すりおろして「とろろ」にした時に褐変しにくい系統を選抜し、切り芋による増殖を行っています。その他に、県内での有機農業拡大に向け、化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないジネンジョ栽培について研究しています。
(写真 左:パイプを設置する様子 右:種芋の植え付け位置)

