米や野菜、花や果樹などの作物は、田んぼや畑で育てられていることが多いですね。田んぼや畑では、作物が育ちやすいように人が耕し、肥料を用いて栄養分を与えています。そこで今回は、作物の栄養分について紹介します。
作物の生育には、水や光、二酸化炭素や温度などが必要ですが、これと並んで必要なものが栄養分です。その中で特に重要なものは、窒素(N)、リン酸(P)、カリウム(K)です。これらは肥料の3要素と呼ばれ、作物にはこれらが適切な量で必要です。窒素は主に茎や葉の生育に関係し、葉色や成長を良くする役割があります。リン酸は主に開花や果実の実りに関係し、果実の量や品質に影響を与えます。カリウムは主に根の生育に関係し、根を伸張・肥大させる役割を持ちます。これら、栄養分が足りない場合、例えば、窒素が不足すると葉の色が薄くなることや、リン酸が不足すると果実の量や品質が低下することがあります。このような栄養分の不足を招かないように、適切な量の栄養分を肥料として与えることで、健全な作物を栽培しているのです。
肥料の種類は多様で、栄養分の割合が異なっているものもあります。多くの場合、肥料3要素の割合が袋に記載されており、例えば、10-10-10と書かれている肥料だと、窒素、リン酸、カリウムが10%ずつ含まれ、5-0-5だと、窒素とカリウムを5%ずつ含み、リン酸を含まない肥料であるということになります。このように、肥料によって3要素の割合が異なっている場合があるため、よく確認することが大切です。さらに、肥料の種類によって効き方も多様で、すぐに効果が現れる化成肥料もあれば、有機肥料のように少しずつ効果が現れる肥料もあります。このため、適切な肥料を、適切な時期に与えることは、健全な作物の栽培に非常に重要となります。
【豆知識】
作物によって必要となる肥料3要素は異なります。例えば、奈良県の「農作物の施肥基準」では、ホウレンソウは、1平方メートルあたりの窒素、リン酸、カリウム量が10g、5g、10gとされており、窒素とカリウムを多めに与えることで旺盛に育ちます。イチゴの露地栽培だと、植え付け前に8g、10g、8gとなっており、リン酸を多めに与えることで果実の量や品質が良くなります。このように、栽培する作物に合った量を適切なバランスで適切な時期に与えることが大切になります。プロの生産者は、土壌診断を行い、土壌中に不足している栄養分の量を把握し、必要な種類と量を計算しますが、家庭菜園ではそこまで行うことは難しいと思います。そこで、各作物に適した栄養分の量となるように調整された専用の肥料が市販されているので、複雑な肥料計算を行わずに簡単に利用できるアイテムとして活用してみてください。(写真:化成肥料(左)と有機入り化成肥料(右))
