奈良新聞掲載記事集

令和7年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

地域に根ざすナス品種 New!

 ナスの原産地はインド東部と推定されています。日本には中国を経由して伝わったとされ、奈良時代の書物に登場することや平城京の遺構から種子が見つかっていることから、古くから栽培されていたようです。日本で長く利用される中で、全国各地にはそれぞれの気候や食文化に適合した多くの在来品種が成立してきました。
 在来品種の果実の形に注目すると、関東では卵型の品種が多く、九州では果実の長い品種が多いなど、地域性があります。関西に目を向けると、京都の「賀茂なす」、大阪の「鳥飼なす」、奈良の「大和丸なす」、和歌山の「湯浅なす」というように果実が丸い品種が多くあります。これらの品種は共通して、緻密な肉質が特徴のひとつとなっていますが、それぞれに若干の形の違いや調理方法の違いがあり、それぞれの地域で長く大切に受け継がれてきました。
 ここでは、奈良の「大和丸なす」について簡単に紹介します。奈良の「大和丸なす」は戦前から生産されていることから、奈良県が「大和の伝統野菜」に認定しています。一般的な長卵型の品種と比べると収穫時の果実の重さは2倍近くとなるため、1株から収穫する果実の数を制限した栽培管理を行い品質を確保しています。肉質の良さ、渋みが弱く甘味が強い味わい、そして光沢の強い丸い果実の美しさが評判で、高級野菜として取引されています。料亭で用いられることが多く、主に京都や京浜市場へ出荷されています。
 ヘタには鋭いトゲがあるため、調理の際にはけがをしないように注意が必要ですが、量販店の店頭に並ぶこともありますので、是非ご家庭でも味わってみてください。田楽や揚げ出しなどは定番で美味しく味わえる調理法です。さらに、近年ではハンバーガーやグリーンカレーなどのレシピがインターネット上で公開されるなど、様々な楽しみ方が提案されています。

【豆知識】

 ナスは世界中で栽培されていますが、生産量は地域によって偏りがあります。2023年の国連食糧農業機関の統計調査では、アジアが生産量の94%を占めており生産の中心となっています。特に中国が多く、世界全体の生産量の65%を占め、第1位となっています。日本は0.5%で第9位です。中国の人口が日本より多いことを考慮して、1人あたりの生産量に換算しても、中国は28kg、日本は2kgと中国の生産量の多さが目立ちます。また、中国からは、漬物の原料となる塩漬け等の形態で日本にナスが輸出されています。財務省の貿易統計によると、2023年の塩漬け等のナスの輸入量は1744トンですが、内95%が中国からの輸入と中国の存在感が際立ちます。なお、総務省の家計調査によると漬物の購入額は年々減少しており、このことと関連してか、塩漬け等のナスの輸入量は、近年減少傾向で、2023年は2013年の半分以下となっています。(写真:大和の伝統野菜「大和丸なす」)

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奈良新聞で第2日曜日に連載中の「農を楽しむ」に掲載されたものです。
(平成20年まで「みどりのミニ百科」)
※過去に掲載されたトピックスは時間が経過し、現下と異なる点もございますのでご了承下さい。