奈良新聞掲載記事集

令和6年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和5年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和4年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

堆肥について

 日本では化成肥料の原料のほとんどを輸入に頼っており、現在ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに原料であるカリ鉱石やリン鉱石などが入手しにくく化成肥料の価格が高騰しています。そこで今回は、化成肥料の代わりとして注目される堆肥についてお話しします。
 堆肥は、家畜のふんや稲わらなどの作物残さを堆積し、微生物等のはたらきである程度分解させて作る有機質資材です。堆肥には3つの効果があります。1つ目は、土づくり効果です。これは堆肥が有機物を多く含むためです。土壌に有機物が供給されると、土壌の団粒化を助けふんわりとやわらかい土になり、土壌の保水性が向上し、排水性の改善や植物の根の生育を良くすることが知られています。2つ目は、土壌微生物に栄養源を供給する効果です。有機物自体が微生物のエサとなることで、土壌中の生物の多様性が維持されます。これにより病害虫の増殖を抑え、作物を守ることに繋がります。3つ目は作物が生育するのに必要な養分を供給する効果です。肥料の3大要素である窒素・リン酸・カリウムをはじめ、石灰や苦土などの多量要素、鉄やホウ素などの微量要素を堆肥は含んでいます。これらの肥料成分は先述の土壌微生物のはたらきにより徐々に放出されるので、ゆっくりと作物に供給されます。
 堆肥には以上のような効果がありますが、堆肥の原料によって性質が大きく異なります。また、令和2年12月には「肥料取締法」が改正され「肥料の品質の確保等に関する法律」となり、化成肥料と堆肥を配合した肥料が生産できるようになりました。これに伴い、今まで以上に皆さんが堆肥もしくは堆肥が配合された肥料を利用する機会が増えることが予想されます。これを機に、堆肥の今まで以上の利活用を検討されてみてはいかがでしょうか。豆知識を参考にご自身の畑の状況や堆肥の使用目的、栽培する作物の種類を総合的に考えて堆肥の種類を決めてみましょう。

【豆知識】

 家畜ふん堆肥の原料は主に牛ふん、豚ぷん、鶏ふんが使用されています。牛ふん堆肥は緩効性の窒素成分が多いので、比較的ゆっくりと肥料の効果が表れます。また、牛ふん堆肥にはおがくずなどの有機物も多く含まれるので、他の家畜ふん堆肥と比べ土づくりの効果が高く、肥料と土づくり資材の両方の効果を期待して利用されます。豚ぷん堆肥は牛ふん堆肥と比べて窒素やリン酸、カリウムなどの肥料成分をやや多く含みます。鶏ふん堆肥は他の家畜ふん堆肥よりも速効性の肥料成分が多く、専ら肥料として利用されます。
 植物質堆肥には稲わら堆肥、もみがら堆肥、バーク堆肥などがあります。これらには、家畜ふん堆肥よりも有機物が多く含まれているので土づくりの効果が高くなります。
 堆肥を施用した直後は作物に悪影響を及ぼす場合があります。土づくり資材として使用する場合には播種・定植の2週間前以上前に施用し、土に良くなじませるようにしましょう。(表:堆肥のじょうずな使い方)

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令和3年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和2年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

平成31年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

平成30年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」



奈良新聞で第2日曜日に連載中の「農を楽しむ」に掲載されたものです。
(平成20年まで「みどりのミニ百科」)
※過去に掲載されたトピックスは時間が経過し、現下と異なる点もございますのでご了承下さい。