奈良新聞掲載記事集

令和6年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和5年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和4年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和3年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

アブラムシの天敵たち

   今年は8月7日が立秋です。旧暦ではもう秋になりましたが、畑では夏野菜が元気に実を付けているのではないでしょうか。そんな野菜でいつの間にか増えているのが害虫です。害虫を放っておくと野菜が枯れてしまうことがありますが、逆にいつの間にか害虫が消えていることもあります。誰が害虫を退治しているのでしょうか。実は、害虫を様々な方法で退治する天敵たちが畑にも発生します。今回は代表的な害虫であるアブラムシの天敵を紹介します。
 まずはテントウムシです。テントウムシは幼虫、成虫ともにアブラムシを餌として食べます。成虫になると多いものでは、1日で100匹ほどのアブラムシを食べます。ナナホシテントウ、ナミテントウなど多くの種類がおり、中にはカイガラムシなどのアブラムシ以外の害虫を食べる種類もいます。一方、ニジュウヤホシテントウ(テントウムシダマシ)という、ジャガイモやナスの葉を食べる害虫のテントウムシもいます。
 次は、ヒラタアブです。ヒラタアブの成虫はお腹の部分が黄色と黒の縞模様でハチのように見えますが、花粉や花の蜜を食べて、人も襲いません。幼虫が1日30匹ほどのアブラムシを食べます。半透明のウジ虫のような見た目のため、気持ち悪く思われるかもしれませんが、優しい気持ちで見てあげてください。
 最後に紹介するのが、寄生バチです。寄生バチは今まで紹介した天敵と違い、アブラムシを何匹も食べる天敵ではありません。寄生バチの成虫はアブラムシの体内に卵を産み付けます。卵から生まれた幼虫はアブラムシの内臓を食べて大きくなり、成虫になると皮を破って外に飛び出します。寄生されたアブラムシはお腹が丸く膨らんで変色していくので、簡単に見分けることができます。奈良県農業研究開発センターでは、農薬に代わる害虫対策としてこの寄生バチを利用した技術の開発を行っています。

(写真:アブラムシを捕食するテントウムシの幼虫、ヒラタアブの幼虫)

テントウムシの幼虫ヒラタアブの幼虫

【豆知識】

 今回紹介した天敵たちを畑で上手に利用する方法を紹介します。天敵たちはアブラムシが多い場所に集まります。しかし、畑でアブラムシを大量に発生させるわけにはいきません。そこでオススメするのが“三尺ソルゴー”です。“三尺ソルゴー”は、草丈が100~150cmと、ソルゴーの中でも草丈の低い品種です。これを畑の周囲に植えておくと、ヒエノアブラムシというアブラムシが発生します。このアブラムシはイネ科作物にのみ寄生し、他の作物には影響しません。天敵たちはこのアブラムシを食べて増殖します。増えた天敵が畑のアブラムシを退治してくれます。また、ソルゴーにはいろいろな品種がありますが、作業の邪魔にならない背丈の低い品種を選びましょう。なお、アブラムシ以外の害虫にもそれぞれの天敵がいます。奈良県農業研究開発センターでは、これらの天敵を活用し、殺虫剤の使用を減らす技術の研究もしています。

令和2年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

平成31年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

平成30年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」



奈良新聞で第2日曜日に連載中の「農を楽しむ」に掲載されたものです。
(平成20年まで「みどりのミニ百科」)
※過去に掲載されたトピックスは時間が経過し、現下と異なる点もございますのでご了承下さい。