大豆は日本食に欠かせない食材の一つと言えるでしょう。奈良県における大豆の単収は、10a(1,000平方メートル)あたり約150kgで、全国平均の160kgとほぼ変わらない数値となっています。国産大豆の主な用途は豆腐、納豆、煮豆、味噌、醤油ですが、10aから収穫される大豆でどれぐらい作れるかを計算してみますと、一丁300gの豆腐が2,000丁弱、1パック50gの納豆が6,000パック、一般的な醤油が830ℓ、米味噌が600kgとなります。この数値は水、塩、その他原料を含む量になります。
大豆の国内需要量は約350万トンですが、そのうち国産大豆は21万トンで、自給率は6%です。穀物全体のカロリーベースの自給率が40%程度であることを考えると低いと言えます。但し、国産大豆は味が良いと評価され、その使用割合は、煮豆についてはほぼ100%で、他に納豆は24%、豆腐は22%となっています。輸入した大豆の7割近い229万トンはサラダ油に加工されていますので、食品用に限ると自給率は20%まで上がります。
搾油後の大豆はこれまで主に家畜の飼料として利用されていましたが、ここからタンパク質を取りだして肉のように加工した「大豆ミート」が、健康志向、環境問題や食糧不足の観点から注目されています。現在は、価格の問題から輸入大豆を使用したものが多く、国産大豆を使用した商品は限定的ですが、国産大豆を使用し、製造工程を改良して風味・食感を高めた商品が次々と開発されています。世界的にも大豆ミートを含む人工肉の市場規模は6年で約2倍に成長しており、低カロリーで高タンパクな大豆ミートは、いずれ食卓の日常的なメニューに仲間入りすることでしょう。また、乾燥タイプの大豆ミートなら長期保存が可能で、災害時の活用も期待できます。
【写真】「サチユタカA1号」は収穫後3年が経過しても莢ははじけていません。
【豆知識】
令和元年は、国産大豆の作付け面積の80%が水田の転作によるものでした。水田転作の場合、雨が多い年には排水不良で土が酸欠状態になってしまい、根の張りが悪くなります。収量に大きく影響する根粒菌の付着量も減ってしまい、収量が低下してしまいます。国産大豆の需要が高まっている現在、収量を安定して高くする取り組みが重要となっています。奈良県では平成31年3月に大豆「サチユタカA1号」を奨励品種に採用しました。本品種はこれまでの「サチユタカ」と生育、収量および品質が同等ですが、成熟しても莢がはじけにくく、収穫が遅れても脱粒によるロスが少ないことが確認されています。これまで「サチユタカ」を作ってこられた方につきましては、「サチユタカA1号」への切り替えをお勧めします。