奈良新聞掲載記事集

令和6年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和5年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和4年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

イチゴの親株

 イチゴの栽培は、4月から9月にかけて苗を増殖し育てる「育苗」から始まります。春にイチゴの株を植えるとランナーと呼ばれる蔓が伸びて、やがてランナーの先に新たな株が生じます。もとの株を親株、新たな株を子株と言い、いずれの株からも複数のランナーが出て、その先に新たな子株ができます。奈良県育成の「アスカルビー」ですと、9月までに一つの親株から100株前後の子株が得られます。子株は、親株と全く同じ遺伝子を持つクローンです。ランナーから切り離した子株を9月に定植しハウス栽培すると、12月から翌年6月まで果実を収穫できます。以上が、全国イチゴ産地で主に行われている促成栽培の概要です。
 イチゴの栽培の中で、最も注意を要するのが育苗時の病害対策です。イチゴがかかる幾つかの病気はひとたび感染すると治療が不可能で、次々と子株に感染し、枯死させて、栽培中断を余儀なくさせます。そのため、育苗中に子株が病気にかからないよう対策することに加えて、親株には病気に感染していない優良な株を用いる必要があります。県内の生産者は、自家栽培での育苗とは別に、奈良県農業協同組合と「イチゴ優良親苗増殖協議会」を組織し、病気に感染していない株を共同で増殖し、翌年の自家栽培での親株に用いています。
 これまでに、奈良県は「アスカルビー」、「古都華」、「珠姫」、「奈乃華」、「ならあかり」などの品種を育成してきました。増殖協議会で用いる県育成品種の親株は、宇陀市榛原の大和野菜研究センターで増殖し、提供しています。県内産地を支える極めて重要な親株ですので、日常管理では、(1)土壌由来の病害感染を避けるための空中栽培、(2)資材の蒸気消毒、(3)清浄な被服の着用、(4)施設への害虫侵入防止、を徹底し、増殖株は提供前に病気に感染していないことを検定試験で確認しています。
 奈良県とイチゴ優良親苗増殖協議会の連携は、昭和50年の開始以来途絶えることなく、県内のイチゴ生産を支えています。

【写真】病気に感染しないように空中で育苗します。

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【豆知識】

 家庭菜園でのイチゴの栽培方法を紹介します。イチゴは、園芸ハウスを利用した促成栽培で主に生産されているため、冬から春にかけての果物として定着していますが、家庭菜園で露地栽培を行う場合、収穫は5月になります。水はけが良くなるよう高めの畝を作り、10月中旬に苗を定植します。苗は園芸店やホームセンターで入手可能です。定植後、葉が数枚展開しますが、12月以降、低温の影響で生育が著しく遅くなり、ロゼット状態で越冬します。生育が徐々に再開する2月中旬頃に追肥を施し、黒マルチで畝を覆います。4月に開花し、開花後30~40日で果実が収穫できます。開花時に花を訪れる昆虫が見られないようであれば、筆で雄しべと雌しべを優しく触って受粉を助けます。降雨による果実の腐敗や鳥の食害を防止するためには、トンネルフィルムと防鳥ネットの展張が必要です。

令和3年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

令和2年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

平成31年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」

平成30年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」



奈良新聞で第2日曜日に連載中の「農を楽しむ」に掲載されたものです。
(平成20年まで「みどりのミニ百科」)
※過去に掲載されたトピックスは時間が経過し、現下と異なる点もございますのでご了承下さい。